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太平洋を越える〈新しい女〉
田村俊子とジェンダー・人種・階級
- 初版年月日
- 2024年12月31日
- 発売予定日
- 2025年1月24日
- 登録日
- 2024年12月25日
- 最終更新日
- 2024年12月25日
紹介
無国境、無国籍的な田村俊子の思想遍歴をたどる。
なぜ晩年の俊子は、中国の女性問題に尽力することになったか?
日本から北米へ、そして最終的に中国にわたった田村俊子の作品とその思想を、時系列に沿って分析し、そのなかに見えた田村俊子の「ジェンダー」「人種」「階級」言説の形成の軌跡を解明する。
俊子が取り組んだ〈ジェンダー〉問題は、当時、女性たちの社会進出とどのような関係にあったのか。作家・田村俊子は、なぜ日本を離れ、カナダのバンクーバーに赴いたのか。そして、一八年間の北米滞在を終え、日本に帰国した俊子は、なぜ、また日本を離れて中国に発ったのか。俊子は、海外でどのように活動し、どのような成果を達成したのであろうか。
第1部「ドメスティック・イデオロギーへの挑戦―田村俊子にみるジェンダー諸問題」、第2部「カナダのバンクーバーにおける思想的変遷―日系社会を描く作品群をめぐって」、第3部「インターナショナル・フェミニストの連携―上海時代の佐藤(田村)俊子と中国女性問題」と、全体を3部に分け追求していく。
【田村俊子は、日本から北米、そして中国へと移動し、それぞれの土地にさまざまな足跡を残した。このような俊子の半生を一言でいうなら、「コスモポリタン」田村(佐藤)俊子となろう。彼女はいかなる道程を辿って、ここに至ったのであろうか。】……「序章」より
目次
凡例
序章
1 まえがき
2 作家・田村俊子の足跡
3 先行研究
4 問題意識と研究目的
5 本書の構成
I ドメスティック・イデオロギーへの挑戦―田村俊子にみるジェンダーの諸問題
第1章 女学生世界=ノ・マンズ・ランド―田村俊子の『あきらめ』について
1 はじめに
2 女学生世界の形成
3 女学生世界から自立の道へ
4 女学生世界の崩壊
5 おわりに
第2章 一九一〇年代の日本における「女性同性愛」言説―「青鞜」同人を中心に
1 はじめに
2 セックス・ジェンダー・セクシュアリティをめぐる「青鞜」同人周辺の言説
3 少年同性愛のパロディ―平塚らいてうと尾竹紅吉
4 おわりに
第3章 ドメスティック・イデオロギーからの脱出願望―田村俊子の〈書く女〉と〈演じる女〉について
1 はじめに
2 ドメスティック・イデオロギーからの逸脱者たち
3 「女しか書けない女」と「女しか演じられない女」の戦略―女性作家と女優の登場
4 植民地と海外へ脱出する願望の探求―『あきらめ』の三輪から『波』の花井豊子まで
5 おわりに
II カナダのバンクーバーにおける思想的変遷―日系社会を描く作品群をめぐって
第4章 〈渡米熱〉〈堕落女学生〉と〈写婚妻〉―一八九〇年代後半の〈渡米熱〉と『大陸日報』にみる〈写婚妻〉像
1 はじめに
2 一八九〇年代後半の〈渡米熱〉と女子同伴の殖民政策
3 もう一つの〈堕落女学生〉像―「女学生上がり」の写婚妻の表象
4 〈女学生〉、 〈新しい女〉 そして〈写婚妻〉言説の形成とその相関性
5 『大陸日報』 における俊子の婦女欄―〈写婚妻〉言説を中心に
第5章 ナショナル・アイデンティティとジェンダーの揺らぎ―佐藤俊子の日系二世を描く小説群にみる二重差別構造
1 はじめに
2 日系社会内部の「差別構造」の発見―日系二世のまなざしをとおして
3 大和撫子か?New Womanか?―「カリホルニア物語」にみる二世女性のディレンマ
4 おわりに
第6章 佐藤俊子の人種問題への認識と社会主義的立場―「小さき歩み」三部作を軸として
1 はじめに
2 同時代の人種問題への認識―ユージン・オニール、ポーリン・ジョンソンをめぐって
3 無国境で超人種とされる「社会主義」―「小さき歩み」三部作をめぐって
4 内包される反戦メッセージ―「小さき歩み」にみる反戦的立場の社会主義者たち
5 おわりに
Ⅲ インターナショナル・フェミニストの連携―上海時代の佐藤(田村)俊子と中国女性問題
第7章 上海時代(一九四二―四五)佐藤(田村)俊子と中国女性作家・関露―中国語女性雑誌『女聲』をめぐって
1 はじめに
2 コスモポリタンとしての佐藤俊子の形成―カナダにおける国際女性労働運動の体験
3 俊子と関露の「女性解放論」―『女聲』の評論欄をめぐって
4 第二回大東亜文学者大会にみる佐藤俊子と関露の連帯関係
5 おわりに
第8章 日本占領下の上海における女性問題の変容―プロパガンダ誌の女性文学と『女聲』の読者欄をめぐって
1 はじめに
2 『女聲』の「読者投書欄」にみる女性問題
3 日本占領下の上海文壇で活躍した女性作家たち―張愛玲と蘇青が描く女性問題
4 占領下の上海における〈女性問題〉―張愛玲文学と『女聲』「読者投書欄」の共通点
5 おわりに
結章
1 本書のまとめ
2 本書の成果
3 今後の課題
参考文献
図版出典一覧
初出一覧
あとがき
索引
上記内容は本書刊行時のものです。