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江戸の王朝文化復興
ホノルル美術館所蔵レイン文庫『十番虫合絵巻』を読む
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年3月31日
- 書店発売日
- 2024年4月6日
- 登録日
- 2024年2月28日
- 最終更新日
- 2024年4月6日
紹介
なぜ平安時代を復活させようとしたか。
江戸時代、王朝文化を研究し、憧れ、復興しようとする人々が現れる。
王朝文化に憧れた彼らが、業平に仮託された男が都を思いながら「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」(『伊勢物語』第九段)と詠んだ隅田川のほとりで再興したのが、「十番虫合」であり、本書で紹介するホノルル美術館所蔵『十番虫合絵巻』は、「十番虫合」に出座していた三島景雄が記録し編修した絵巻物である。
果たして「十番虫合」とは何だったのか。どこまでが事前に計画されたもので、どこまでが当座的なものだったのか。彼らは日本の古えを復興しようと努力していたが、それは腐敗した徳川幕府と日本の危機に対処する無能さに対する暗黙の批判であったのだろうか。
古典知の凝縮された『十番虫合絵巻』から、一体何がわかるのか。
本文はカラーで紹介。校訂本文、校異・現代語訳・注釈・英訳・人物解題を完備し、『十番虫合絵巻』を緻密に紹介しつつ、そこから読み解くことが出来たものを論考として付す。日英ハイブリッド出版。
執筆は、盛田帝子/松本 大/飯倉洋一/南 清恵/門脇むつみ/加藤弓枝/有澤知世/瓦井裕子/山本嘉孝/ターニャ・バーネット/フランチェスカ・ピザーロ/ヒルソン・リードパス/ジョナサン・ズウィッカー/アンドレ・ヘーグ。
【十八世紀後半の日本では、天皇を擁する京都でも、将軍を擁する江戸でも、尚古主義・好古主義が流行した。京都では、安永八年(一七七九)に践祚した光格天皇が権威の復興をめざして、多くの朝儀や神事を再興・復古し(藤田覚『光格天皇―自身を後にし天下万民を先とし―』ミネルヴァ書房、二〇一八年)、江戸では、八代将軍徳川吉宗の次男で、服飾や雅楽、古典文学や有職故実に造詣の深かった田安宗武が、明和二年(一七六五)に王朝儀式の復元を意識した物合「梅合」を再興した。宗武没後の安永・天明期の江戸では、堂上歌壇と関わりを持ち、『源氏物語』をはじめとする王朝文学に造詣の深い三島景雄や賀茂季鷹などが安永八年(一七七九)「扇合」、「前栽合」などの物合を次々に再興するが、王朝文化に憧れた彼らが、業平に仮託された男が都を思いながら「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」(『伊勢物語』第九段)と詠んだ隅田川のほとりで再興したのが、本書で紹介する「十番虫合」という物合である。】「まえがき」より
目次
まえがき[盛田帝子]
はじめに(英語版)[ロバート・ヒューイ]
Ⅰ 本文と解説
影 印
各種凡例
校訂本文・現代語訳・注釈
一番 二番 三番 四番 五番
六番 七番 八番 九番 十番 跋
注釈図版出典一覧
解題──古典知の凝縮された『十番虫合絵巻』の魅力[盛田帝子]
ホノルル美術館所蔵リチャード・レイン・コレクション[南 清恵]
Ⅱ 論考・コラム
美術史研究から見た『十番虫合絵巻』の作り物[門脇むつみ]
物合と歌合[加藤弓枝]
知識人たちの遊びと考証──十八世紀末から十九世紀初頭の江戸に注目して[有澤知世]
『十番虫合』と『源氏物語』[瓦井裕子]
『十番虫合絵巻』と漢文脈──草虫詩から花鳥画まで[山本嘉孝]
近世期の『源氏物語』本文と橘千蔭[松本 大]
ノスタルジアの歌学──国学と「十番虫合」[ターニャ・バーネット]
長柄橋[ロバート・ヒューイ]
物たちの歌[フランチェスカ・ピザーロ]
数々の虫(Cricket)の〈声〉[ヒルソン・リードパス]
「死の川」の辺りで── 二十世紀日本における木母寺の面影について[ジョナサン・ズウィッカー]
『十番虫合絵巻』の英訳によって失われたもの・そして発見されたものについて[アンドレ・ヘーグ]
『十番虫合絵巻』がハワイの教育にもたらしたもの[南 清恵]
Ⅲ 付録
人物解題[十番虫合絵巻研究会編]
『十番虫合絵巻』翻刻と校異[翻刻 松本 大・校異 盛田帝子]
類題和歌集との表現の類似[松本 大]
執筆者一覧
英語版 Contents
Contents
Introduction / Robert Huey
Introduction / Morita Teiko
Ⅰ The Main Text, Background, and Commentary
Jūban Mushi-awase
(A Match of Crickets in Ten Rounds of Verse and Image)
Round 1 Round 2 Round 3 Round 4 Round 5
Round 6 Round 7 Round 8 Round 9 Round 10 Postscript:
Jūban Mushi-awase List of Participants by Round
The Appeal of the Jūban Mushi-awase, a Condensed Version of Classical Knowledge / Morita Teiko
The Richard Lane Collection at the Honolulu Museum of Art / Minami Kiyoe
Ⅱ Research Articles, Perspectives
A Study of Tsukurimono in the Jūban Mushi-awase Emaki from the Standpoint of Art History Research / Kadowaki Mutsumi
Mono-awase and Uta-awase / Katō Yumie
Intellectuals' Pleasures and Considerations: Focusing on Edo at the End of the 18th Century and the Beginning of the 19th Century / Arisawa Tomoyo
Jūban Mushi-awase and The Tale of Genji / Kawarai Yuko
Sinitic Elements in the Jūban Mushi-awase: From Insect Poetry to Bird-and-Flower Painting / Yamamoto Yoshitaka
The Relationship between the Text of The Tale of Genji and Chikage Tachibana in the Early Modern Period / Matsumoto Ōki
The Poetics of Nostalgia: Kokugaku and the Jūban Mushi-awase / Tanya Barnett
The Nagara Bridge / Robert Huey
The Poetry of Things / Francesca Pizarro
The Many ‘Voices’ of Crickets / Hilson Reidpath
Along the “River of Death”: On the Afterimage of the Mokubo-ji in Twentieth-Century Japan / Jonathan Zwicker
Lost and Found in Translation of the Jūban Mushi-awase Scrolls / Andre Haag
What Jūban Mushi-awase Emaki has Brought to Education in Hawaiʻi / Minami Kiyoe
List of authors
上記内容は本書刊行時のものです。