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文化権力と日本の近代
伝統と正統性、その創造と統制・隠滅
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年12月25日
- 書店発売日
- 2023年12月25日
- 登録日
- 2023年11月6日
- 最終更新日
- 2024年2月29日
紹介
国民国家体制のバリアに覆われてよく見えなかった文学性・芸術性をどう抽出するか。
文学と歴史が交わる領域へのこれからのアプローチの方法。
近代の国民国家体制の下で、国民国家の偉観を表象する文化装置として「伝統」が作動するなか、権力や時代に翻弄され統制され隠滅されたり、あるいは迎合することでその「道」の保存・選択を迫られる文化権力という磁場に注目し、文学や芸術が「時代」を生き抜いてきたリアルな文学史・芸能史の一面を照射する。
第一部には主に国家・天皇/皇后・植民地といった近代日本の国家体制や社会構造に根ざした問題を扱う論稿を、第二部にはそうした近代日本社会における、文化権力と伝統・正統性をめぐる個別的な事象・動向を中心的に扱った論稿を収める。
執筆は、徐 禎完、榊原千鶴、宋 錫源、松澤俊二、吳 佩珍、李 鍾淑、鈴木 彰、湯本優希、VAN EWIJK Aafke、平田英夫、菊野雅之。
目次
はじめに―本書刊行にあたって 徐 禎完・鈴木 彰
一、 文学と歴史が交わる領域へのアプローチ
二、 本書の構成と各論文の概要
第1部 近代国家「日本」と文化権力
1 近代日本と能楽 文化権力としての芸能と国民国家 ●徐 禎完
一、 はじめに
二、 明治政府の音曲歌舞に対する認識
三、 国家と芸能:「幽玄の花」と「国家を飾る花」
四、 国家と芸能:国民統合と能楽効用論の錯綜
五、 近代の能楽史を語ること―むすびにかえて
2 日本の近代化にみる女性と政 朝鮮の女訓書を手がかりとして ●榊原千鶴
一、 はじめに
二、 朝鮮昭恵王后『内訓』
三、 世宗から成宗へ
四、 戦と女訓書
五、 『明治孝節録』
六、 『明治孝節録』の普及状況
七、 『明治孝節録』にみる逸脱する女性
八、 おわりに
3 国民国家の形成における「天皇崇敬」 ●宋 錫源
一、 はじめに
二、 明治維新までの天皇の位相
三、 明治維新と天皇:天皇親政と天皇超政の狭間で
四、 天皇の神聖性と天皇崇拝
五、 おわりに
4 勅題の応用とそれによるコミュニケーションの問題 歌会始の外縁に注目して ●松澤俊二
一、 はじめに
二、 諸文芸に表現された勅題
三、 可視化された勅題
四、 勅題を食べる・着る
五、 音声化された勅題
六、 おわりに
5 明治「敗者史観」と植民地台湾 「北白川宮」言説を中心に ●吳 佩珍
一、 はじめに
二、 佐幕敗者から台湾の鎮守神まで―北白川宮表象の変化の軌跡
三、 森鴎外『能久親王事蹟』における「北白川宮」像
四、 植民地台湾のマスメディアにおける「北白川宮」―明治「敗者史観」の再現と一九一一年の大逆事件
五、 おわりに
6 日本植民地時代の朝鮮伝統チュムの変化と隠滅 ●李 鍾淑
一、 はじめに
二、 警視庁の妓生制度介入と朝鮮伝統チュムの価値認識の低下
三、 総督府の舞童制度の導入と朝鮮の祭享チュ厶、宴饗チュ厶の変化
四、 おわりに
第2部 読者・文壇・教育の動向と相関性
7 織田完之と近代の平将門観 『国宝将門記伝』刊行の前提、画期としての明治三十四年 ●鈴木 彰
一、 はじめに
二、 雪冤運動を支えた意識の萌芽
三、 「将門記関係往復書雑件」─織田の机辺の『将門記』
四、 真福寺本と植松有信模刻本
五、 「尾張大須本将門記補修」の意義
六、 日高誠実「平将門論」への共感
七、 おわりに
8 明治期の文章活動における文壇とその裾野の相互作用 読者が表現者となるとき ●湯本優希
一、 はじめに
二、 美辞麗句集について
三、 美辞麗句集の与えた影響
四、 文学の特権性
五、 おわりに
9 子どもの心に訴える国家的英雄の創造と変容
少年の秀吉を中心に ●VAN EWIJK Aafke(ファン エーワイク・アーフケ)
一、 はじめに
二、 秀吉の少年時代についての伝説
三、 小学校教科書の秀吉
四、 明治中期の少年雑誌にみる男子像
五、 依田学海の『豊臣太閤』と日吉丸の出世
六、 高橋太華が描いた「太閤の幼時」
七、 巌谷小波の『日吉丸』―腕白者の日吉丸
八、 日吉丸の図像
九、 おわりに
10 『日本歌学全書』とその周辺 ●平田英夫
一、 はじめに
二、 関連年譜から
三、 『日本歌学全書』の編纂
四、 『続日本歌学全書』の編纂
五、 『袖珍名著文庫』の登場
六、 結びにかえて
11 今・ここにある古典学習から考える 「言語文化」を土台にして ●菊野雅之
一、 今・ここにある古典学習から探る
二、 「言語文化」の指導事項、言語活動例、内容の取扱い
三、 「言語文化」の教科書から見る今・ここにある古典学習
四、 教材観の拡大
あとがき
執筆者一覧
索引(人名・書名)
上記内容は本書刊行時のものです。