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石牟礼道子と〈古典〉の水脈
他者の声が響く
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年5月10日
- 書店発売日
- 2023年5月26日
- 登録日
- 2023年4月11日
- 最終更新日
- 2023年8月25日
紹介
不知火海とともに生きた詩人・作家、石牟礼道子(1927~2018)。
『苦海浄土』をはじめとする彼女の作品に、浄瑠璃、説経節、近代以前の地誌や紀行文など、広く〈古典〉と呼びうるジャンルやテクストからの影響や引用が認められることはつとに知られている。
しかしながら、その実態はいまだ明らかにされていない。
石牟礼道子は、〈古典〉をいかに受容し、自らの文学をものしたのか。
石牟礼の思想と文学は、〈いま〉を生きる表現者たちにどのような影響を与えたのか。
日本文学・民俗学・歴史学・演劇学・環境文学を専門とする研究者と、詩・音楽・能楽・染織・演劇に携わる表現者が、その答を探る。
論文、エッセイ、インタビューに加え、新作能『不知火』初演時の「演出ノート」も再録!
《執筆者》
山田 悠介/赤坂 憲雄/小峯 和明/野田 研一/後藤 隆基/小池 昌代/寺尾 紗穂/荻久保 和明/安田 登/志村 昌司/笠井 賢一/北條 勝貴/樋口 大祐/粂 汐里(執筆順)
【石牟礼道子の声の向こうに、多種多様な別の〈声〉、他者の〈声〉が重層している。そのように累積している他者の〈声〉が、その作品のなかから聞こえてくる。物語のかたちをして。まさに、石牟礼文学とは他者を包摂・内包する文学であり、他者をめぐる想像力の世界なのである。(本書「おわりに」より)】
目次
口絵
はじめに 石牟礼道子の水脈――受容・変奏・応答
山田 悠介
第一部 文字と声のあいだ
1 石牟礼道子、または浄瑠璃のごときもの
赤坂 憲雄
一 往生できない魂魄が移り住んだ、という/二 心のなかの声がそのように聴こえた/三 それは怪談でも物語でも、私小説でもなかった/四 自分らのことを、口説きもどきに語られて/五 夕闇の花吹雪じゃ、魂ば舞わせ
2 天草と水俣をつなぐ異界の語り部――『流民の都』『椿の海の記』を読み直す
小峯 和明
一 『苦海浄土』との出会い/二 天草から水俣へ/三 「弥陀の利剣」/四 「今昔物語めく月」/五 漂泊遊行と語り芸/六 「大廻りの塘」/七 「自分を焚く」/八 『梁塵秘抄』の世界から創作能「不知火」へ/九 天草・島原一揆と『春の城』
3 「祖型」としての景物――『苦海浄土』における風景の構造
野田 研一
一 故郷の心/二 「祖型」としての景物/三 心眼の原理/四 描写と語り︱〈視点〉論/五 おわりに 声の氾濫
4 記録と虚構のあわいをただよう非人御前――石牟礼道子「詩篇 苦海浄土」とテレビドキュメンタリー『苦海浄土』
後藤 隆基
一 水俣病の映像表象と『苦海浄土』/二 ドキュメンタリーを演じる非人御前/三 非人御前の位置/四 足尾銅山鉱毒事件の残影/五 結節点としての「詩篇 苦海浄土」
第二部 呼応する表現
5 三つの詩型をめぐって
小池 昌代
6 石牟礼道子を歌う
寺尾 紗穂
7 「しゅうりりえんえん」を作曲して
荻久保 和明
8 咲いと敗者の芸能
安田 登
9 魂の秘花――新作能「沖宮」における言葉と色
志村 昌司
10 声にされることを待っている――演出家がみた石牟礼文学のエッセンス
笠井 賢一
付録 『不知火』演出ノート
笠井 賢一
第三部 〈古典〉への遡行
11 「穴のあいた太鼓」考――石牟礼道子を手がかりに未発の歴史を紡ぐ
北條 勝貴
一 はじめに ―太鼓の亀裂、自己/世界の亀裂―/二 太鼓の原義 ―東アジアのなかの水俣において―/三 〈トントン〉という音像の複層性 ―発する者/聴く者と音のイメージ―/四 鼓をもて汀に舞う女 ―暴かれた湖底への怒り―/五 おわりに ―破れ太鼓に満ちる世界―
12 『西南役伝説』における民衆史的歴史語りと非定住民の記憶
樋口 大祐
一 はじめに/二 『西南役伝説』の成立過程について/三 第一のタイプ(西南戦争の記憶と伝承)およびその先行ジャンルについて/四 非定住民の記憶、および先行ジャンルについて
13 石牟礼道子と説経節
粂 汐里
一 はじめに/二 説経節とは何か/三 石牟礼作品と説経節の類似性/四 戦後の説経節研究―一九七〇年代におけるまなざし/五 石牟礼道子と郷土ゆかりの芸能、民話、紀行文―創作の原動力/六 おわりに
14 受容と創出の物語――石牟礼道子『椿の海の記』の〈変身〉譚をめぐって
山田 悠介
一 はじめに/二 『椿の海の記』と「葛の葉」のあいだ/三 「記録」としての『椿の海の記』/四 おわりに
おわりに
野田 研一
索引
執筆者プロフィール
上記内容は本書刊行時のものです。