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外道の家 上 【復刻版】
巻次:上巻
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年7月15日
- 書店発売日
- 2023年7月15日
- 登録日
- 2023年4月3日
- 最終更新日
- 2023年7月25日
受賞情報
2022年度フランスPrix Sade賞(サド賞)
紹介
月刊バディ2008年1月号増刊として発行された『外道の家』上巻を復刊
入婿の寅蔵は新婚初夜に新妻の眼前で義父に犯され、その日から陵辱を受け続ける日々に。
そして家人も次々に陵辱に加わっていく。
寅蔵が無限地獄に陥った外道の家の物語。
2022年度・フランスのPrix Sade賞(サド賞)受賞作。
昭和24年。大地主・堀川惣右衛門の一人娘、萩乃の婿として迎えられた寅蔵。
しかし、その初夜、惣右衛門によって寅蔵は犯されてしまう…。
堀川の一族によって運命を弄ばれる寅蔵は一体どうなるのか。
月刊『バディ』に連載された田亀源五郎の不朽の名作の上巻。
前書きなど
『外道の家』の頃 ~復刻版あとがきにかえて~
二〇〇七~八年にかけて「月刊バディ増刊号」という形で世に出た『外道の家』単行本全三巻、雑誌コードでの出版という特殊性と部数の少なさから、長らく絶版状態であり復刊リクエストも多かった作品を、このたび無事に再出版することができ、待望していた皆さまはもちろんのこと、何より作者自身がとても嬉しく思っています。
何しろ私がゲイ雑誌で長期連載した最後の長編ですし、二〇一〇年にはスペイン語版が、二〇二一年にはフランス語版も出版され、それぞれ現役の単行本でありつつ、フランス語版は二〇二二年度のPrix Sade(サド賞)BD/Manga(コミック)部門も受賞した作品でありながらも、長いことオリジナルの日本語版が入手不可能だったことは、私としてもとても残念かつ心苦しく思っていましたので。
今回の復刊にあたってご尽力くださった、ポット出版プラスの沢辺均さんには、この場を借りて改めて御礼申し上げます。そして、復刊リクエストの声を上げ続けてくださっていた、読者諸氏の皆様にも。
さて、この『外道の家』は「月刊バディ」に、一九九九年から二〇〇七年にかけて連載した長編マンガです。連載期間が八年にも渡ったのは、私からお願いして一回十六ページの隔月連載にして貰ったからです。同誌での前の長編連載『銀の華』が完結した後、すぐに「次の連載を」という依頼はいただいたのですが、当時の私は別雑誌「ジーメン」を立ち上げ、企画編集に参加しながら毎月表紙絵を描き、マンガも連載して小説も書くといった状況でしたので、それらと並行して『銀の華』のように毎月の連載を手掛けることは、もう体力的に限界だったというのが理由でした。
幸いにして「バディ」誌は私の無理をきいてくださり、無事連載がスタートしました。開始にあたって当時の担当編集氏に「何かリクエストとかある?」と訊いたところ、「前の『銀の華』では玉菊という女性キャラが人気だったので、今回も女性を出して欲しい」と言われたことを覚えています。その昔、私がデビューしばらくして「さぶ」誌に描いたマンガで、女性を一コマだけ出したところ、読者から「女を出すな」という抗議の手紙が来たことがあります。ゲイ雑誌を読むことで、現実世界から逃れて男しかいない夢の世界に浸りたい、そういった感覚の方々がいらしたのでしょう。そんな時代を知っているが故に、編集部からの「女性を出してくれ」というリクエストには隔世の感がありました。
しかし前の版のあとがきにも書いたように、私はこのマンガでは「ジャンルフィクションの枠を壊す」ことを目標の一つにしていたので、編集部からのこのリクエストは渡りに船でした。まず試しに萩乃の扱いを大きくして、それが好反応だったので次はお松、そして大刀自様といった具合に、「バディ」誌の気風に合いそうなキャンプ感覚も意識しながら、物語に絡む女性キャラの度合いを、気兼ねすることなく深めていくことができました。
連載期間が八年にも及ぶと、その間にはいろいろなことがあります。最も大きな出来事は、連載も終盤にかかった頃、私が「ジーメン」誌から身を引くことになったトラブルの発生でしょう。当時の私は、ゲイ雑誌を主軸にした日本のゲイ文化、特にマンガやエロティックアートの文化を育てることに人生を賭けるくらいの思いでいたので、身内だと思っていた人物の裏切りによって、ホームグランドだと思っていた雑誌から離れることになるという事態からは、大きな精神的な傷を受けました。具体的に言うと、それから約半年の間、絵が全く描けなくなったほどでした。物心ついてからこのかた、暇さえあれば絵を描き、暇でなくても絵を描いてきた自分だというのに。
しかしそんな状態でも『外道の家』の連載は続きます。この時期の数回分は、無理やり気力を奮い立たせて描いているような状態でした。いま見ると、作者にしか判らない程度かも知れませんが、いささか筆が荒れているのが見て取れます。しかし振り返ってみると、このことも強制的なリハビリのような良い効果があったように思われます。『外道の家』を何とか無事に完結させようと頑張ったことと、その終了後間もなく、パリのギャラリーから依頼されてオリジナル作品を制作し、それを持参してのパリでの初個展が大成功であったことが、自分が再び絵を描けるようになり、先に進むための切っ掛けになった実感がありますので。
ともあれ、このトラブルとそこから立ち直って以降、私の意識は大きく変わりました。ゲイ雑誌やゲイ文化といった「全体」のために何か頑張ろうという気持ちは、それらのために自分が築き上げ、同志として信頼してきた者からも裏切られた以上、きれいサッパリ消え失せました。これからはもっと自分のことに集中し、自分の作品の可能性だけを追い求めようと思うようになりました。
それからの私はゲイ雑誌にこだわることなく、どんな媒体でもお声掛けがあれば、そして自分がそれを面白いと思えば、積極的に活動の場を拡げるようになりました。性器修正の必要がない海外をメインに、個展や企画展、雑誌や画集などに作品を提供したり、全く描いたことのないジャンルのマンガに挑戦したり。初めて一般のマンガ雑誌で、非エロティックなマンガ『弟の夫』を連載したのも、こういった活動の延長線上にあります。その意味でも『外道の家』は、自分の作家活動の一つの節目になった作品であることは確かです。
『外道の家』終了以降も「バディ」誌とのお付き合いは、同誌が休刊する二〇一八年まで続きました。数年に渡る長期連載というのは、もうやりませんでしたが、読み切りや短期集中での長編連載などを続けながら、最後までレギュラーでマンガを描き続けられたのは、嬉しくも懐かしい想い出です。
二〇二三年二月十八日 田亀源五郎
版元から一言
この、『外道の家』〈上巻〉は2007年11月30日、〈中巻〉は2008年1月30日、〈下巻〉は、2008年3月31日に、テラ出版から発行されたものを、ポット出版プラスで復刊した。
それぞれのポット出版プラスからの復刻版発売日は、〈上巻〉は2023年7月15日、〈中巻〉は2023年8月15日、〈下巻〉は、2023年9月15日。
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。