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シェーンベルクと若きウィーン テレーゼ・ムクセネーダー(著) - アルテスパブリッシング
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シェーンベルクと若きウィーン (シェーンベルクトワカキウィーン)
原書: Arnold Schönberg & Jung Wien

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A5判
312ページ
並製
定価 3,400円+税
ISBN
978-4-86559-300-6   COPY
ISBN 13
9784865593006   COPY
ISBN 10h
4-86559-300-4   COPY
ISBN 10
4865593004   COPY
出版者記号
86559   COPY
Cコード
C1073  
1:教養 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2024年11月25日
書店発売日
登録日
2024年10月18日
最終更新日
2024年10月29日
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紹介

カフェでの集会、殴り合い、差別と迫害、新聞沙汰──
「音楽の革命」の真実を膨大な資料と図像で描く比類なきドキュメント。
荒ぶる芸術家たちの青春群像がいまよみがえる!

世紀末ウィーンにおいて、演劇、音楽、建築、工芸、彫刻などの分野で同時多発的な革新が起こった。
「若きウィーン」を名乗り、「モデルネ(近現代)」の温室たるこの都市を舞台に、血気盛んな活動を繰りひろげる若手芸術家たち。

本書は「新ウィーン楽派」の首領にして、20世紀音楽最大のオリジネイターである作曲家アーノルト・シェーンベルク(1874–1951)を中心に、「若きウィーン」を標榜した芸術家たちの活動を、膨大な同時代資料と証言、そして数多くの図像によってあとづけた画期的なドキュメント。

シェーンベルク生誕150年記念出版。

●巻頭カラー地図(16ページ):シェーンベルクゆかりの地をガイド
●カラー口絵(8ページ):絵画の分野でも異才を発揮したシェーンベルクの美術作品を掲載
●その他、図版多数掲載

目次

[カラー地図]ウィーンのシェーンベルク
本書の登場人物

はじめに

第1章 若きウィーンの音楽家と音詩人たち
若きウィーンの音詩人たち(リヒャルト・シュペヒト)

第2章 若きウィーンの円卓
アーノルト・シェーンベルク(アルトゥール・カハネ)

第3章 「カフェハウスでは文学をめぐって殴り合った」
文芸夜想曲―クラウス゠フリートマン事件についての寸評(ハンス・リープシュテックル)

第4章 若きウィーンの演劇とコンサート
若きウィーン劇場(フェーリクス・ザルテン)

第5章 「反ユダヤ主義の中心地」
ウィーンの若きオーストリア・ユダヤ人芸術家(アーノルト・シェーンベルク)

第6章 アーノルト・シェーンベルクとカール・クラウス
カール・クラウスにかんする覚書(アーノルト・シェーンベルク)

第7章 アーノルト・シェーンベルクとアドルフ・ロース
アドルフ・ロースにかんして(アーノルト・シェーンベルク)
これぞアーノルト・シェーンベルク(アドルフ・ロース)

第8章 アーノルト・シェーンベルクとヘルマン・バール
若きオーストリア(ヘルマン・バール)

第9章 ある若きウィーン人は創作する
新しい地平、あらゆる規則をこえて(パウル・シュテファン)
アーノルト・シェーンベルクのもとで(パウル・ヴィルヘルム)


日本語版監修者あとがき(樋口隆一)
訳者あとがき(阿久津三香子)

前書きなど

「はじめに」より

 本書は、ウィーン・アーノルト・シェーンベルク・センターにて同じタイトルでおこなわれた展覧会(2018年3月)のさいに出版されました。これは、音楽の観点から若きウィーンを考察し、文化史上のエポックの代表的人物であるアーノルト・シェーンベルクを参照することで、新時代の始まりの核心にせまるものです。各章は、今日の研究状況を反映するいくつかの論文と、シェーンベルクや同世代の人々による歴史的文献から構成されています。
 1895年、シェーンベルクは、アレクサンダー・ツェムリンスキーが指揮者を務める「音楽協会ポリヒュムニア」に参加しました。この出会いとウィーンでの共同作業から始まって、その後数年で、若きウィーンの音楽芸術という概念が形成されたのです。ツェムリンスキーの指導と多岐にわたる芸術家サークルへの参加によって力づけられ、シェーンベルクの作曲は、わずか数年で急速に発展しました。第1章は、彼の音楽の起源にあてられています。1898年12月に催された、カール劇場での初演の夕べ。さらには、カフェ・グリーンシュタイドルもしくはグラッタウアーでの若きウィーンの芸術家たちによる集会。これらが、アーノルト・シェーンベルクから出発し彼へと戻る糸の痕跡を探るうえで、重要なできごとを生ぜしめているのです。
 若きウィーンたちに特有の相互作用は、提唱者、支援者そして創造的活動の比較的ゆるい結合という点で傑出していました。1900年ごろにシェーンベルクが活動していたサークル内の領域の多様性は、作曲家、音楽家のみならず、詩人、哲学者、ジャーナリスト、秘教徒や占星術師、医者、建築技師、法学者、画家や建築家にまでおよびました。おたがいの位置関係をほのかに照らす短い一筋の光のなかで、個人としての異質さと美的多様性で魅了する新時代のイメージが生まれたのです。その時代は、論争からつねに解放されていたわけでもないというのに。たとえば1899年には、若きウィーンの数人が、多くの中心人物や重要人物からひどく憎まれていたカール・クラウスと、法廷で徹底的にやり合うことが容認されました。挑発的人物クラウスは、サークル・メンバーであった詩人による暴力的攻撃の被害者となったのです。本書籍の舞台がもつ地域的・社会的雰囲気を示す、ひとつのエピソードです。
 1900年ごろのカール劇場は、若きウィーンのいくつかの作品を初演しており、詩人も作曲家も、ここを共同の上演場所とみなしていました。カール劇場では、演劇だけでなくオペレッタも上演され、そのうちのいくつかは、作曲、演出、監督を要する共同制作でした。数人のカフェ・ハウス関係者が、創造的な役割で、この劇場に任用されています。そして、シェーンベルクは、演劇をつうじて、その分野で自身を試す衝動に駆られたのです。1901年、フェーリクス・ザルテンは、当時ベルリンに開設された「ブンテス・テアター」に刺激され、(音楽)カバレットと朗読劇のハイブリッドな形式をもつ、若きウィーンの劇場「ツム・リーベン・アウグスティン」を創設します。劇場「ツム・リーベン・アウグスティン」は、多くの人を雇いましたが、そこには、アーノルト・シェーンベルクとアレクサンダー・ツェムリンスキーも含まれていました。劇場活動の概観については、若きウィーン・コンサートプロジェクトの章を逍遥していただければと思います。
 1898年、ユダヤ人アーノルト・シェーンベルクは、プロテスタントに改宗します。シェーンベルクのユダヤ系の友人たちによる宗旨変えは│たとえ、個々にまったく異なる動機であったとしても│「リベラルな文化的プロテスタンティズムのなかに、ひとつの糸口を見出すことを可能ならしめた、一定の価値観、人生の心がまえ、信仰への考え方といったものの表明だった」。(大半がプロテスタントに)改宗を決意した本質的な要因となったのが、ウィーンにおいて強まり、遍在する反ユダヤ主義でした。これに関しても、ひとつの章が割かれています。「分離・断絶」と「アイデンティティの危機」の集団的経験が、伝記と作品を結びつけます。
 さまざまな分野に支脈をもつ若きウィーンの精神的温床は、変化に富んだやり方で、アーノルト・シェーンベルクの個性を、輪郭のはっきりしたものへと研ぎ澄ましました。シェーンベルクは、アレクサンダー・ツェムリンスキーに支持され、プロとして作曲をおこない、自身を取り巻く環境で活動する詩人たちからインスピレーションをあたえられ、演劇テクストの執筆を始めます。若きウィーンと対蹠的なカール・クラウスの表現法に感激し、シェーンベルクはエッセイや文学的な試みにあえて挑み、また、ヘルマン・バールの文芸欄に影響され、ほかの同時代人にはみられないような批判的思考を養いました。さらには、アドルフ・ロースから純粋な手工業の理想を学びました。クラウスやロース、バールとの関係に、本書では3章を割いています。シェーンベルクの手紙や著述をもとに、この作曲家と彼らとのそのつどの相互作用の本質的な部分を、様式と思考の連関性と同じように照らしだす章です。
 あまりにも深くウィーン的に刻印されたシェーンベルクの雰囲気は、複数の人物や職業の相互作用によって育まれています。それらの職業分野でつながっている人々は、しばしば、複数のサークルに属していたので、それはそれで、いちだんと高まった創造性をもたらしうる多くの交点が存在していたのです。シェーンベルクは、自身の専門領域で名をなすだけでなく、絵画や文筆業でもしばしば論議された作品を創作し、これを超えてさらに発明家としても挑戦しています。これが、締めくくりとなる章のテーマです。
 出版にさいし、オーストリア共和国ツークンフト基金から多大な援助をいただきましたことに感謝いたします。本書は、アーノルト・シェーンベルク・センター創設20周年の機会に出版されました。コロラド州ホイートリッジのアヴェニール基金からの資金により、本テクストすべてを、英語に翻訳することが可能となりました。とりわけ、アーノルト・シェーンベルク・センターでの20年にわたる多面的な活動とプロジェクトをつうじ、精神的な支援をいただいたロサンジェルスとヴェネツィアのシェーンベルク家には、心より感謝いたします。

テレーゼ・ムクセネーダー
ウィーン、2018年

著者プロフィール

テレーゼ・ムクセネーダー  (ムクセネーダー テレーゼ)  (

ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学でヴァイオリン、ザルツブルク大学で音楽学ならびにドイツ文学を学ぶ。ザルツブルク、国際モーツァルテウム財団司書(1993–97)をつとめたのち、1997年よりアーノルト・シェーンベルク・センター、ウィーンにてコレクションを管理するかたわら、著述家、編集者、展覧会キュレーターとして活躍。ウィーン国立音楽大学非常勤講師。

阿久津 三香子  (アクツ ミカコ)  (

東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。国費派遣留学(ドイツ、ハイデルベルク大学)。明治学院大学大学院文学研究科博士前期・後期課程修了(博士、芸術学)。DAAD「独日韓大学間提携事業助成金」によりワイマール、バウハウス大学短期ドイツ語研修(2010、2012)。
「音楽のある展覧会」(サントリーホール ブルーローズ、2012、ホテルオークラ東京 別館、2019)講演通訳。
Tōru Takemitsu: Globalisiertes Komponieren ― Text, Kontext, Deutung(Hrsg. Markus Bandur und Rainer Schmusch, edition text+kritik, München, 2024)の独訳を一部担当。
日本音楽学会会員、日本アルバン・ベルク協会会員。

樋口 隆一  (ヒグチ リュウイチ)  (日本語版監修

1946年、東京生まれ。音楽学者、指揮者。
DAAD奨学生としてドイツ留学。『新バッハ全集』I/34の校訂でテュービンゲン大学哲学博士。明治学院大学名誉教授。明治学院バッハ・アカデミー芸術監督。元国際音楽学会(IMS)副会長、音楽三田会会長、日本アルバン・ベルク協会会長。京都音楽賞研究評論部門賞、辻荘一賞、テオドル・ベルヒェム賞受賞。
『バッハ』(新潮文庫)、『バッハ学者は旅をする』(アルテス・パブリッシング)など著訳書多数。
1998年、ウィーン大学客員研究員。創立時のアーノルト・シェーンベルクセンターでシェーンベルクのバッハ資料を調査。2001年、明治学院大学で「シェーンベルク没後50年」展、国際シンポジウム「シェーンベルクと様々な伝統」を開催、《ピエロ・リュネール》演奏会を指揮、その功績により2002年、オーストリア学術芸術功労十字章を受章した。

上記内容は本書刊行時のものです。