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ラドゥ・ルプーは語らない。
沈黙のピアニストをたどる20の素描(デッサン)
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年11月15日
- 書店発売日
- 2021年11月19日
- 登録日
- 2021年10月1日
- 最終更新日
- 2021年11月23日
書評掲載情報
2022-01-30 | 読売新聞 朝刊 |
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紹介
「音楽について聞かれても、何か語れるとしたら、自分の音楽を通してだけだ」
ルーマニアの生んだ至高のピアニスト、ラドゥ・ルプー。
「1000人に1人のリリシスト」と讃えられながら、1993年以降いっさいの録音や放送収録、インタビューを拒み、2018~19年のシーズンを最後にコンサートからも引退。
伝説のピアニストとなったルプーの素顔を、彼を敬愛する20人の音楽家、関係者などの寄稿やインタビューで描きだす。
こんな「讃歌(Lobgesang)」はもうたくさんだと言わんばかりに、あなたは顔をしかめるにちがいありません。
──サー・アンドラーシュ・シフ
彼が演奏すると、まるでその瞬間に作曲されたような音楽に聞こえます。
音楽におけるあらゆるつながりに命を吹きこむことができる
きわめてユニークな才能を持っています。
──ダニエル・バレンボイム
天にものぼる心地でした。
自分が演奏している背後で、あのサウンドが鳴っている!
この体験を永遠に心のなかで愛でたいと思いました。
──スティーヴン・イッサーリス
サー・アンドラーシュ・シフ、ダニエル・バレンボイム、ミッシャ・マイスキー、フランツ・ウェルザー゠メスト、スティーヴン・イッサーリス、アンヌ・ケフェレック、ユリアンナ・アヴデーエワ、チョ・ソンジン、フィリップ・カサール、ジャン゠エフラム・バヴゼ、ネルソン&ルスダン・ゲルナー、元マネージャー、ディレクター、調律師、元夫人などが登場。
音楽評論家・青澤隆明による珠玉のルプー論も収録。
口絵にはルプー夫妻提供の貴重な写真を掲載!
日本オリジナル企画にして、本人公認の唯一の書籍が誕生!
目次
写真でたどるラドゥ・ルプー
はじめに(板垣千佳子)
part I 20のインタビューと寄稿によるラドゥ・ルプーの物語
寄稿|サー・アンドラーシュ・シフ|ピアニスト
ルプーに捧ぐ
Hommage à Lupu
インタビュー|ミッシャ・マイスキー|チェロ奏者
ラドゥとの出会いはとても重要で、
音楽づくりは私にとって特別な時間でした。
寄稿|ボリス・ペトルシャンスキー|ピアニスト
モスクワでのルプーとの思い出は
私の記憶に深く焼きついています。
寄稿|アンヌ・ケフェレック|ピアニスト
最初の音を聴いた瞬間に心に広がった
感動と賞賛を一生忘れないでしょう。
インタビュー|チョン・キョンファ|ヴァイオリニスト
ラドゥの音楽の魔法の力によって
聴き手の魂は天空へと放たれます。
インタビュー|ディディエ・ド・コッティニー|オーケストラ事務局長
友人として、録音嫌いのラドゥをもう困らせたくないのです。
インタビュー|ジェシカ・ナスミス&ロビン・ラフ|マネージャー、BBCディレクター
インタビューを受けない理由──
「何か語れるとしたら音楽を通してだけだ」
インタビュー|ガスリー・リューク|ピアニスト
数多く聴いたラドゥの“歌”。
衝撃のあまりピアノの前に座れなくなったことも。
寄稿|ジェニー・フォーゲル|マネージャー
あわやキャンセル、
ニューヨークの凍える夜の散歩
インタビュー|ヘレン・ターナー|マネージャー
誇り高き完璧主義者。
でも、マネージャーを困らせる人ではありませんでした。
インタビュー|ダニエル・バレンボイム|指揮者、ピアニスト
ラドゥとは音楽を通してお互いを知り尽くしているので、
特別な親近感を感じます。
インタビュー|フランツ・ウェルザー=メスト|指揮者
ラドゥと共有した「美しさの追求」。
私たちは音楽的に理解しあっていました。
寄稿|フィリップ・カサール|ピアニスト
ラドゥ・ルプーが小声で明かしてくれる
内なる世界の景色。
インタビュー|ジャン゠エフラム・バヴゼ|ピアニスト
人生に迷う私にラドゥが教えてくれた音楽づくりの哲学。
インタビュー|ミシェル・ブランディス|調律師
それはピアノの音ではなく、「ラドゥ・ルプーの音」なのです。
インタビュー|ネルソン&ルスダン・ゲルナー|ピアニスト
魅力と発見にあふれたアドバイス。
彼の言葉はすべて私の心に刻まれています。
インタビュー|ユリアンナ・アヴデーエワ|ピアニスト
ラドゥのロシア語はとても豊かです。
聞き上手で、いつも何かを与えてくれる人です。
インタビュー|チョ・ソンジン|ピアニスト
「教えない、聴くだけだよ」
ラドゥのローザンヌでのレッスンで──
寄稿|スティーヴン・イッサーリス|チェロ奏者
ラドゥ・ルプーとの旅の軌跡
寄稿|エリザベス・ウィルソン|作家
ラドゥ・ルプー
──モスクワでの学生時代の思い出をたどって。
part II ルプーのほうへ(青澤隆明)
ルプーの音楽はどこからやってきたのか
物語の終わりに(板垣千佳子)
ラドゥ・ルプー 年譜
ラドゥ・ルプー 日本公演の記録
ラドゥ・ルプー ディスコグラフィー
前書きなど
はじめに
2019年6月、ピアニスト、ラドゥ・ルプーはルツェルンでの公演を最後に引退した。日本からかけつけた私はその公演の翌日、おそるおそる彼に尋ねた。
「あなたに関する本を日本で出版したいと思っています。お許しいただけますか?」
長年インタビューをかたくなに拒み続け、録音はとっくの昔にやめてしまい、放送収録さえ許さない、極端にプライベートを大切にしているアーティストがルプーである。答えはノーだと思っていた。
「チカコ、僕自身はもちろん語らないけど、君がそうしたいなら、すべてまかせるよ。実り多いことを祈っている」
KAJIMOTOで勤務した三十年の間に、私はラドゥ・ルプーの担当マネージャーとして、1991年から2013年まで計七回の日本ツアーに同行した。ルプーが紡ぎだす音の魔力に魅せられ、日本ツアーの間をぬい、また最後の来日の後も、なんとか時間をみつけては欧米での彼の演奏を聴くために飛行機に乗った。2019年の最後のコンサートでは、引退宣言すらしない、突然の終わりに茫然とした。
記録されることを拒み、あらゆるメディアを拒絶したルプーの芸術を、少しでも後の世代に知ってもらいたい。その思いで、ルプーと親交のあった演奏家や音楽家、マネージャーらに彼の人と音楽について自由に語ってもらい、また寄稿してもらった。
最初から読んでもいいし、好きな演奏家による素描(デッサン)を眺めながら、自由にページをめくっていただき、ルプーの音楽を聴く機会を持つ人が増えたらうれしい。それは確実に聴いた人の人生を豊かにするものだと思うから。
板垣千佳子
上記内容は本書刊行時のものです。