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新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かす
もうひとつの安全神話
- 初版年月日
- 2012年9月
- 書店発売日
- 2012年8月28日
- 登録日
- 2012年8月23日
- 最終更新日
- 2013年2月22日
書評掲載情報
2012-11-25 |
朝日新聞
評者: 福岡伸一(青山学院大学教授) |
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紹介
日本全国の2億匹のミツバチが1年で死んだ(2009年)。
その原因と推測されるのが、新農薬ネオニコチノイドだ。
この10年で3倍以上と、急速に日本で普及してきている。
人間への神経毒性があり、子どもたちの未来まで脅かされる恐れがある。
フランスではすでに禁止された、この新農薬の危険性を追及する。
目次
まえがき もうひとつの安全神話
1 ミツバチの被害は人間まで
(1)ミツバチの被害はつづく
北海道上川郡和寒町──くり返されるミツバチ大量死
岩手県奥州市──2005年からつづくミツバチの大量死
長崎県県北3地域──ダントツの使用自粛を申し合わせる
長崎県壱岐島──自分の安全を守るためにも
神奈川県三浦市──260群のミツバチがほぼ全滅
(2)日本のミツバチ被害の現状
2億匹のミツバチが1年で死んだ
各地のミツバチ被害
◇2003年 熊本県
◇2005年 岩手県
◇2008年 北海道
◇2010年 兵庫県
(3)ネオニコチノイドによる被害は人間まで
保育園児の頭上から空中散布──長野県上田市
農薬中毒で入院した娘──茨城県龍ヶ崎市
農薬中毒の患者が急増──群馬県前橋市
2 新農薬ネオニコチノイドが日本を襲う
(1)有機リンからネオニコチノイドへ
急速に広まった新しい農業
拡大するネオニコチノイドの使用
◇家庭菜園・ガーデニング
◇ペット
◇米・果物・野菜
◇ゴキブリ・シロアリ
◇住宅建材
◇松枯れ防除
(2)ニコチン──植物の化学兵器
ニコチンという毒素を用いた農薬
ネオニコチノイド開発の陰には多くの日本人が
(3)ネオニコチノイドの特徴
予想もできなかった影響が出る
神経を狂わすネオニコチノイド
弱毒性といわれた根拠──選択毒性
ネオニコチノイドの代謝産物の毒性は高い
浸透性農薬の恐ろしさ──洗っても落ちない!
イタリア科学者の挑戦 ネオニコチノイド農薬で種子処理された作物
日本の専門家も指摘する浸透性農薬の危険性
フィプロニル製品の販売停止─フランス
フランス食品衛生安全庁(AFSSA)はフィプロニルに係るEU評価意見書を公表
ザリガニ業者がバイエル社を提訴──米国ルイジアナ州で水系汚染
混ぜたら危険──複合毒性
土壌残留性と水系汚染
3 進む海外の対応
(1)世界のミツバチ被害の広がり
ミツバチ大量死の報告は後を絶たない
CCDから6年目を迎えた米国
(2)米国の対応
農薬企業を守るのも、そろそろ限界か
米国の農薬登録の抜け穴
カリフォルニア州がネオニコチノイド禁止の旗振り
農薬企業の暗躍──イミダクロプリドの毒性試験が免除される
シエラ・クラブはEPA(米国環境保護庁)にニコチン系殺虫剤の禁止を要望する
EPAのOPP(農薬プログラム室)への要望書
(3)諸外国の対応
フランス──ミツバチ問題を契機に農業の大転換
フィプロニルは南米でも
ドイツ──即座にネオニコ種処理剤の登録を一時中止
イタリア──種子処理禁止でミツバチが復活!
EUの対応
イギリス─市民団体がEU農薬指令を批判して
中国・台湾
4 封印される農薬説、日本──ミツバチを殺したのは誰?
(1)日本の専門家によるストレス説
“農薬ムラ”は農薬主犯説を認めない
おざなりの農水省の対応
(2)新しいウイルス説で生じた混乱
ミツバチ大量死の原因をめぐって
米国でも新ウイルス説が続々と登場
複合要因という言い訳
(3)農薬とミツバチをめぐる科学の現在
ミツバチ減少とCCDについて
ネオニコチノイドの急性・亜急性毒性
相乗効果、複合毒性
感染源との相互作用 ノゼマと農薬
多様な曝露経路
構造的偏り
脚光をあびたサイエンス論文
5 農薬大国の日本
(1)世界2位の農薬使用量
ネオニコチノイドの普及に邁進する農水省
農薬の登録と失効──知らないうちに消えていく農薬
(2)有機リンの大幅規制─EU、米国、日本
いまだ有機リン剤を使いつづける日本
有機リンの総量規制に向かう米国
群馬県は有機リンの空中散布を自粛
大型扇風機によるネオニコチノイド散布
(3)日本のブドウの残留基準はEUの500倍
日本の農薬の残留基準が高い理由
国民が知らない間に残留基準緩和
農薬の空中散布
(4)ここまでわかった農薬の健康への影響
農薬によってもたらされる病気の数々
「農薬との関連が疑われている病気」
増えつづける発達障害──重金属や農薬、化学物質も疑われている
こんなに増えてよいのか、日本人の神経難病
(5)ミツバチもトンボも消え、そして人間も
新潟から赤とんぼが消えた
植物も人も、生殖の手伝いが必要
生態系すべてに及ぶ、ネオニコチノイドの影響
6 動き始めた市民運動と専門家たち
ネオニコチノイド問題解決のために
ミツバチ助け隊
ミツバチDVDをつくった人たち
反農薬東京グループの地道な活動
いち早く危険性を察知──日本有機農業研究会
NPO法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の提言
「ミツバチを殺す新農薬」
動き出した専門家たち
参考文献
あとがき
前書きなど
原発の安全神話は脆くも崩壊したが、もうひとつ、日本人の未来を危うくしている問題がある。「ネオニコチノイド系農薬」のことだ。放射性物質のように目に見えず、臭いもない。しかし今では、この目に見えない毒物が、米や野菜などの食べ物はおろか、住宅建材や家庭菜園やペットなど、生活のすみずみまで浸透している。こうしている間にも、ミツバチやトンボなどの昆虫や、昔ならどこにでもいたスズメや野鳥たちが、刻一刻、音もなく姿を消しつつあり、その勢いはさらに加速している。(「はじめに」より)
版元から一言
子どもの脳が危ない!
『沈黙の春』から50年、ミツバチの大量死など新しい農薬の被害が生態系、人間にも広がりつつある。毒性の解説、大量使用を許す”農薬ムラ”の実態、禁止への国際的な動きの最新情報。──黒田洋一郎(脳神経科学者)
上記内容は本書刊行時のものです。