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プリンセス・マサコ
【完訳】
菊の玉座の囚われ人
原書: Princess Masako Prisoner of the Chrysanthemum Throne――The tragic true story of Japan's Crown Princess
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2007年9月
- 書店発売日
- 2007年8月23日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2010年10月21日
紹介
これは極めて有能なひとりの女性を巡る「人権喪失の記録」である。加害者は、私たちすべての日本人なのである。オーストラリアのジャーナリストによって書かれ、宮内庁・外務省の猛反発を買った「日本の皇太子妃雅子の悲劇的な真実」の書、遂に邦訳出版なる!
目次
目次
序文
1章 黒衣の男たち
2章 父親の娘
3章 母親の息子
最後の皇帝
4章 優等卒業
5章 夢見る尖塔
宮内庁御用達
6章 誓い
7章 皇位継承の行方
8章 神の手
9章 黒い犬
10章 めでたしめでたしでは終わらない
訳者あとがき
参考文献
前書きなど
訳者あとがき
本書は、Princess Masako Prisoner of the Chrysanthemum Throne――The tragic true story of Japan's Crown Princess のオーストラリア版第二版をもとに、著者からの最新訂正を反映して全訳したものである。お手持ちの英語版との相違はすべて著者による訂正であることをお断りしておく。わざわざこんなことを書くのは、本書に興味を持って英語版を購入した人が多いという話を聞いたからだ。著者は事実と推測と意見を書いている。噂は噂として記述している。混同せずに読み取っていただければ幸いである。
なお、本書に出てくる金額は、一豪ドル八十円で豪ドル換算された記述を、翻訳の際にさらに同じレートで日本円に換算しているので、最初の金額とはズレが生じている可能性がある。
著者のベン・ヒルズはオーストラリアのジャーナリストである。日本駐在の経験と綿密な取材を基にこの本を書いた。あくまでも外部の目から見た記述なので、事実の解釈という点で必ずしも同意できない部分もある。読む人によってさまざまな受け取り方ができる本だと思う。キャリヤと結婚を前にした女性のジレンマに注目する人もいるだろうし、つらい不妊治療に共感を持って読む人もいるだろう。皇太子夫妻のロマンスに涙を流す人もいるかもしれない。
わたしはこの本を「ある人権侵害の記録」として読んだ。人権を侵害されているのは雅子妃ひとりではなく、天皇をはじめとする皇室の人々であり、侵害しているのはわたしたち「日本国民」だ。だいたい、いわゆる「公務」なるものがこんなに忙しいものだということに驚いた。天皇には年に千回も約束があるのだそうだ。しかも、天皇家の土地というものはない。使用権があるだけで、皇居もいわゆる御用邸といわれる場所も、すべて国家の財産なのだという。日々の暮らしに追われ、皇室のことなど縁のないものとして取り立てて考えてみることもない普通の日本人にとっては、初めて知ることだったのである。
まず、皇室の人の権利を考えてみよう。職業選択の自由がない。両性の合意に基づく婚姻の自由がない(決めるのはほかの人だ)。移動の自由がない(好きなところにいったりできない)。意見表明の自由がない。選挙権がない。あるのは生存権くらいのものである。人権が否定された状態の人はほかにもいると言うかも知れない。それくらいの忙しさは会社のトップなら普通のことだと言う人もいるだろう。でも、そうした人たちの存在が憲法に規定されているわけではない。この存在は、国民に基本的な権利を保障している憲法に規定されているのだ。それを決めたのは「国民の総意」なのだそうだから(わたしは訊かれた覚えがないけど)、人権侵害しているのはわたしたち国民すべてということになる。というわけで、わたしは翻訳しながら罪悪感に駆られたのだった。
最初に申し上げたとおり、この本はさまざまな読み方ができる。ただ、こんな風に感じた人もいるということを心に留めていただければ幸いである。
藤田真利子
上記内容は本書刊行時のものです。