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土と脂
微生物が回すフードシステム
- 書店発売日
- 2024年8月27日
- 登録日
- 2024年5月24日
- 最終更新日
- 2024年8月28日
書評掲載情報
2024-10-05 |
毎日新聞
朝刊 評者: 中村桂子(JT生命誌研究館名誉館長) |
2024-10-05 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
今も売れているベストセラー『土と内臓』の著者による最新作!!
内臓にある味覚細胞、健康な土、
身体に良い脂肪・悪い脂肪から、コンビニ食の下に隠された飢餓まで、
土にいのちを、作物に栄養を取り戻し、食べものと身体の見方が変わる本。
前著に続き、目からうろこが落ちる記述が満載!
◎相乗的に作用しあうファイトケミカル、ミネラル、脂肪。
◎植物は、体外に胃袋を持つ。
外部の胃袋としての根圏マイクロバイオームによって、体外で消化を行うのだ。
◎非菌根型菌類は有機物を分解し、植物が吸収できる形で栄養を放出する。
◎育種のベクトルを、収量から菌根菌、細菌との協力関係にシフトさせる。
◎農業政策は、公衆衛生と医療の重要な一分野。
目次
序章 「土壌の健康が食物の質に影響する」は本当か?
土壌生物がもたらす作物の健康
健康な土と良い食べものをつなぐ科学的な根拠
ジャンクフードの下に隠された飢餓
第1章 健康というパズルの重要なピース
食べものの役割に関心が薄い医学
「正しい食べもの」がかつて含んでいた栄養
収量という罠
隠れた飢餓─親より寿命が短くなるアメリカ人
食べものの栄養素密度を予防医学として考える
土壌の健康を通して農法を考える
土 SOIL
第2章 人は岩でできている
店頭のニンジンとホウレンソウの栄養価
岩を食べた植物を食べる人間
植物の生長と健康を支える極小のパートナー
土壌微生物の植物学的重要性に気づく
微生物は日和見主義の政治的同盟者
品種改良によるミネラル低下
単純な実験─ミネラルを土から作物へ運ぶ微生物の育て方
第3章 生きている土
食べものを疑ったイギリス人
農業慣行がつくる作物の健康と食品の栄養価
非現実的な神秘主義と合理的思考
緑の女王バルフォア
自分の農場を一大実験場に
有機農地のウシとニワトリ
微生物生態学の進歩が明かしたバルフォアの洞察の正しさ
第4章 慣行農業の行きづまり
土壌の健康は世代を超えた信託物
耕起による土壌生態系の破壊
耕起がもたらす菌根菌・細菌へのインパクト
土壌のジャンクフード─窒素肥料
植物の防御システムを解除する化学肥料
はびこる問題15年で広がった除草剤耐性雑草
グリホサート─鉱物元素を奪い植物を枯らす
もう一つの道─土づくりから始める
第5章 農民の医師
植物の根と菌根菌
作物の健康は菌類と腐植で成り立つ
ビタミンBを含まない化学肥料施肥の種
全粉粒パンには鉄が3倍、ビタミンBが7倍
白米の普及と脚気、2型糖尿病
手がかりを追って
戦時中に英国人の食事を変えた科学者
野菜や飲料水を汚染する硝酸塩
大量の窒素施肥がもたらすもの
植物 PLANT
第6章 植物の身体
土がなくても作れる有機作物?
植物の錬金術師─ファイトケミカル
作物の生長・収量と健康を混同する研究者
議論が終わらない理由
ファイトケミカルが有意に多い有機作物
農法による収量差と収益性
第7章 偉大なる園芸家
私たちの手作り野菜の栄養組成
タバコ・ロード農場の不耕起集約的野菜栽培
裸地を作らず、常に何かを栽培する
キノコが生える畑─森から土を入れる
歌うカエル(シンギング・フロッグズ)農場─アグロフォレストリーの野外実験
固定資産税を支払うため、不耕起栽培で年3回収穫
不耕起─土壌からの窒素流亡が起こらないわけ
慣行ブドウ園との土壌比較
土づくり─畑の生命の躍動を見守る
成功事例を小規模農場で再現する
第8章 堆肥が育てる地下社会
農業コンサルタントへの疑問
土壌比較調査
堆肥の力
ジョンソン=スー・バイオリアクターの発明
生産性をつかさどる菌類・細菌比
多様な菌類群集の速い推移
高まる関心
第9章 多様な植物由来の見過ごされた宝石
ワシントン大学薬草園
ファイトケミカルの種類は5万種
フラボノイド、カロテノイド、フェノール
ヒト細胞を浄化する抗酸化物質
抗酸化物質含有食品を健康のために食べる
食べる薬
薬理効果とトマト、チョコレート
動物 ANIMAL
第10章 沈黙の畑
農薬への曝露
農家以外の農薬曝露は食事から
害虫への対抗手段としてのファイトケミカル
抵抗の根─多様性で病害虫防除
農務省を辞めて自分で研究農場を始めた昆虫学者
昆虫群衆の相互関係
農学の研究制度の壊滅を思い知る
そろそろ変わるときだ
生き物の賑わいが戻った研究農場
第11章 地の脂
マイクロバイオームの大部分を収めた生態系
脂肪が人体を支配する
地の脂が乳となり人間になる
トウモロコシを食べるウシ
食餌で変わる牛乳の中身
オメガ6と共役リノール酸
バターとチーズとファイトケミカル
乳牛の健康問題
第12章 肉の中身
脂肪悪玉説のはじまり
食事─心臓仮説がもたらした混乱
肉について考える
イヌイット食の謎の脂肪
アザラシ肉に匹敵するDPAの摂取源
草を食わせろ
肥育場病─食餌と生活環境が引き起こすもの
第13章 身体の知恵
多種を少量ずつ食べる草食動物
草と牛─マルチパドック輪換放牧を生んだ着想
土壌中のミネラルバランスに注目する
野生動物が知っている薬効植物
身体の知恵の3本の柱
味のフィードバック、もしくは植物と踊るダイナミックなダンス
平均という問題─費用対効果の真実
正常な満腹信号を歪める食味増強剤
永続する多様性─適応と回復力を生む群れの中の変わり者
人間 PEOPLE
第14章 健康の味
脳のそばの隠された細胞
味は単色タイル、風味は複雑なモザイク
腸内の神経細胞にもある味覚受容体
喉にある苦味受容体の役割
壊れた羅針盤─身体の知恵を狂わせる甘味、塩味、うま味
食の相乗効果
栄養研究の難しさ
健康のための食事指針は、食べものが何を食べてきたのかを考えない
第15章 バランスの問題
『美味礼讃』が伝えたかったこと
低脂肪食品の効能は薄い─ボーイング社員で徹底研究
よい脂肪、共役リノール酸
太古の脂肪
炎症のバランスを取る脂肪
オメガ3とオメガ6のバランスのよい蓄え
オメガ3サプリの効果
脂肪と心の健康
日本食の評価
第16章 作物に栄養を取り戻す
本場フランスのバゲットがおいしくなかった理由
パン研究所で学ぶコムギ製粉の歴史
コムギの育種─貯蔵寿命と収量の最大化
世界から集めた1000種類のコムギ
必要な多様性がすべて揃った畑
化学肥料を与えない畑に合うコムギの育種
穀物に足りないもの─栄養より収量でいいのか
近代の品種と古代の品種
食べものに栄養を取り戻す
主要作物の復活─SRIによるコメ栽培
第17章 畑の薬
超加工食品を食べない人々の歯はなぜ健康か
伝統食と栄養
健康のための農業
栄養素欠乏が引き起こすもの
菌類からの化合物の活躍
新しい栄養学のススメ
食の多様性
第18章 健康を収穫する
土地をどう扱うかで人間の健康が決まる
新たな方向性─土壌に必要な生物も育てる農業
選択肢は慣行農法か有機か、ではない
不耕起、被覆作物、多様な作物の輪作で1セット
未来の農業
未来の選択─農業のやり方が人間のありようを形作る
謝辞
訳者あとがき
参考文献
索引
上記内容は本書刊行時のものです。