版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
自作OSで学ぶマイクロカーネルの設計と実装 怒田晟也(著/文) - 秀和システム
..
【利用不可】

自作OSで学ぶマイクロカーネルの設計と実装 (ジサクオーエスデマナブマイクロカーネルノセッケイトジッソウ) マイクロカーネルの深淵を知り、骨太なスキルを身に付ける

コンピュータ
このエントリーをはてなブックマークに追加
B5変型判
縦235mm 横182mm 厚さ25mm
432ページ
定価 3,600円+税
ISBN
978-4-7980-6871-8   COPY
ISBN 13
9784798068718   COPY
ISBN 10h
4-7980-6871-3   COPY
ISBN 10
4798068713   COPY
出版者記号
7980   COPY
Cコード
C3055  
3:専門 0:単行本 55:電子通信
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2023年6月1日
書店発売日
登録日
2023年3月30日
最終更新日
2023年5月17日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

 マイクロカーネルOSは、「美しい設計ではあるものの、遅い実装」というイメージを持たれることがありますが、それは過去の話です。現在では、目立たないところで実用的なOSとして使われ、世界を支えています。
 本書では、マイクロカーネルOSの概念からその実例まで、機能ごとに分けて説明しています。本書全体としては、基礎知識、マイクロカーネルの解説、その上で動くソフトウェア部分(ユーザーランド)の解説、そして発展的内容の4つのパートから構成されており、それぞれのパート内の章は、概念の解説部分と、その概念をどのように実装しているかを解説した実装部分に分かれています。
 各章の実装例として、本書のために筆者が開発したマイクロカーネルOS「HinaOS」を用いて、わかりやすく解説しています。HinaOSは、エミュレータ上で動かすことを想定した教育目的のOSですが、OSの実装を学ぶのに必要となる最低限の機能を備え、ソースコードもシンプルにです。
 また、HinaOSでの実装例のほかに、MINIX3、seL4、GNU Hurdという3つの実用マイクロカーネルOSによる実例も解説しています。複数のOSについて紹介しているのは、それぞれに特徴があり、それを比較してほしいという理由からです。「マイクロカーネルOSとは、こういうものである」という固定観念を持たず、マイクロカーネルであるからこその柔軟さ、そして設計の自由さを味わってください。OSはコンピュータの使い方をガラッと変えられる、いわば新しいソフトウェアの世界を創れる土台なのです。
 本書を読み終えたら、自分でOSを作ってみてください。OSの仕組みを理解していても、実装することで新たな発見があるものです。ゼロからOSを作るのではなく、HinaOSを拡張するのもよいでしょう。HinaOSには、実装が面倒な基本機能が既に備わっています。このようにOSを拡張しやすいのもマイクロカーネルの特徴の1つです。
 本来、OSはとても自由なソフトウェアです。特定のCPUにしかない変わった機能を活用した移植性ゼロのOSを作るもよし、極限まで小さくしたOSを作るもよし、自由な発想で自分の世界を創り上げることができる最高の題材なのです。
 本書を手に、マイクロカーネルの深淵をのぞき込んでみてください。その舞台裏を楽しんでいるうちに、OSやアーキテクチャにとらわれないコンピュータの深い技術も身に付いているはずです。

目次

第1部 基礎知識
 Chapter 1 本書について
  1.1 本書に向いている人
  1.2 本書で学べないこと
  1.3 本書の構成
  1.4 データ量の表記
 Chapter 2 マイクロカーネル入門
  2.1 カーネルとは
  2.2 マイクロカーネルとは
  2.3 マイクロカーネルの機能
  2.4 マイクロカーネルの長所と短所
  2.5 本書で取り上げるマイクロカーネル
  2.6 ソースコードを読むにあたって
 Chapter 3 教育用マイクロカーネルOS「HinaOS」入門
  3.1 なぜHinaOSなのか
  3.2 HinaOSの特徴
  3.3 ソースコードの入手
  3.4 コードリーディングのための予備知識
  3.5 データ構造
 Chapter 4 RISC-V入門
  4.1 CPUの基本動作
  4.2 特権命令
  4.3 インラインアセンブリ
 Chapter 5 プロセスとスレッド
  5.1 プロセスの中身
  5.2 スレッド
  5.3 マルチタスク
  5.4 カーネルレベルスレッドとユーザーレベルスレッド
  5.5 スレッドの中身
  5.6 実装例:HinaOSのプロセス・スレッド
  5.7 スレッドの状態
  5.8 コンテキストスイッチ
  5.9 スケジューリング
  5.10 アイドル状態
  5.11 実例:MINIX3のプロセス・スレッド
  5.12 実例:seL4のプロセス・スレッド
  5.13 実例:Machのプロセス・スレッド
  5.14 まとめ
 Chapter 6 メモリ管理
  6.1 仮想メモリとは
  6.2 仮想メモリのメリット
  6.3 物理アドレス空間の構造
  6.4 仮想アドレス空間の構造
  6.5 ページング
  6.6 ページフォルト
  6.7 実装例:HinaOSのページフォルト処理の実装
  6.8 物理メモリ割り当て
  6.9 実例:MINIX3のメモリ管理
  6.10 実例:seL4のメモリ管理
  6.11 実例:Machのメモリ管理
  6.12 まとめ
 Chapter 7 割り込み・例外
  7.1 割り込みと例外
  7.2 実例:RISC-Vの割り込み処理
  7.3 タイマー処理
  7.4 カーネルパニック
  7.5 実例:MINIX3の割り込み処理
  7.6 実例:seL4の割り込み処理
  7.7 実例:Machの割り込み処理
  7.8 まとめ
 Chapter 8 メッセージパッシング
  8.1 メッセージパッシング
  8.2 非同期 vs. 同期的
  8.3 通知IPC
  8.4 大きなデータの転送
  8.5 デッドロック
  8.6 優先度の逆転問題
  8.7 高速化技術
  8.8 実例:MINIX3のIPC
  8.9 実例:seL4のIPC
  8.10 実例:MachのIPC
  8.11 まとめ
 Chapter 9 システムコール
  9.1 システムコールの種類
  9.2 実装例:HinaOSのシステムコール処理の流れ
  9.3 ユーザー空間からのメモリコピー
  9.4 実例:MINIX3のシステムコール
  9.5 実例:seL4のシステムコール
  9.6 実例:Machのシステムコール
  9.7 まとめ
第3部 ユーザーランド
 Chapter 10 ユーザーランド
  10.1 サーバ
  10.2 機構と方針の分離
  10.3 シングルサーバOSとマルチサーバOS
  10.4 サーバの種類
  10.5 実装例:HinaOSのサーバ構成
  10.6 実例:MINIX3のサーバ構成
  10.7 実例:seL4のサーバ構成
  10.8 実例:Hurdのサーバ構成
 Chapter 11 API(Application Programming Interface)
  11.1 API
  11.2 メインループ
  11.3 IPCスタブ
  11.4 ステートフルなリクエスト
  11.5 非同期メッセージパッシング
  11.6 動的メモリ割り当て(malloc)
 Chapter 12 デバイスドライバ
  12.1 デバイスの例
  12.2 デバイスドライバの仕組み
  12.3 virtioデバイス
  12.4 実装例:HinaOSのvirtio-netドライバ
  12.5 実例:MINIX3のデバイスドライバ
  12.6 実例:seL4のデバイスドライバ
  12.7 実例:Hurdのデバイスドライバ
 Chapter 13 ファイルシステム
  13.1 ファイルシステムの要素
  13.2 ファイルシステムの構造
  13.3 ファイルシステムの機能
  13.4 ログ構造ファイルシステム
  13.5 疑似ファイルシステム
  13.6 Filesystem in Userspace(FUSE)
  13.7 実装例:HinaFSの設計
  13.8 実装例:HinaFSの実装
  13.9 実例:FATファイルシステム
  13.10 ファイルシステムサーバ
 Chapter 14 ネットワーク(TCP/IP)
  14.1 TCP/IP階層モデル
  14.2 IPv4
  14.3 TCP
  14.4 UDP
  14.5 アドレスの解決
  14.6 mbuf
  14.7 実装例:HinaOSのパケット送受信処理
  14.8 実例:MINIX3のTCP/IPサーバ
  14.9 実例:HurdのTCP/IPサーバ
第4部 発展的話題
 Chapter 15 マルチプロセッサ対応
  15.1 マルチプロセッサの形態
  15.2 カーネルのマルチプロセッサ対応
  15.3 スピンロック
  15.4 プロセッサ間割り込み
Chapter 16 仮想化とエミュレーション
  16.1 ハイパーバイザ
  16.2 OS互換レイヤ
  16.3 コンテナ
 Chapter 17 信頼性とセキュリティ
  17.1 「マイクロカーネルはモノリシックカーネルより安全」という主張
  17.2 高い信頼性のために必要なこと
  17.3 サーバの自動再起動
  17.4 ライブアップデート
  17.5 「ステートの漏出(state spill)」問題
  17.6 HinaOSの脆弱性からみるOSのセキュリティ
 Chapter 18 ソフトウェアによるプロセス隔離
  18.1 プロセス隔離の必要性
  18.2 ハードウェアによるプロセス隔離
  18.3 ソフトウェアによるプロセス隔離
  18.4 実装例:HinaVM
  18.5 ソフトウェアによる隔離は安全か?
 Chapter 19 ブート処理
  19.1 ブートローダ
  19.2 HinaOSのブート処理
  19.3 MINIX3のブート処理
  19.4 seL4のブート処理
  19.5 Hurdのブート処理
 Appendix 付録
  Appendix 1 HinaOS開発環境の構築
  Appendix 2 HinaOSのデバッグ
  Appendix 3 参考文献

著者プロフィール

怒田晟也  (ヌタセイヤ)  (著/文

筑波大学 情報学群 情報科学類 卒業、筑波大学大学院 リスク工学専攻 修士課程 修了。現在は、CDNにおけるエッジコンピューティング技術の開発に従事。OSカーネルやハイパーバイザといった低レイヤのソフトウェアが好き。趣味でLinux ABI互換カーネルをRustで書いてみたり、自身のWebサイトを自作OSで提供してみたりして遊んでいる。

上記内容は本書刊行時のものです。