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人権判例報 第8号
- 発売予定日
- 2024年7月28日
- 登録日
- 2024年7月16日
- 最終更新日
- 2024年7月16日
紹介
◆日本の法実務にも有用の法律雑誌―ヨーロッパ等の最新人権状況を把握するために必読◆
ヨーロッパ人権裁判所の判例解説7本に加えて、ヨーロッパでの気候変動訴訟に関する〔速報〕、「ヨーロッパ人権裁判所とロシアの関係」と「ガザ地区におけるジェノサイド条約適用事件」の2本の〔論説〕も掲載し、本号も益々充実の刊行。
前書きなど
(「編集後記」より抜粋)
ロシアのウクライナ侵略とイスラエルのガザ大量破壊戦争が、沈静化の見通しの全くないまま進行するなか、『人権判例報』第8号を世に送り出すこととなった。私たちとしては、これらの武力紛争で命を落とした多くの人々に、まずは、心からの哀悼の意を表したい。この惨劇を終わらせるために、私たちとしても知恵を絞りたいと思う。正直に言って、これほどまで公然と虐殺を連日見せられると、感覚を多少とも麻痺させないと正気を保つのはむずかしい。しかしながら、これらの武力紛争は、世界をその隅々まで「敵」と「味方」に塗り分けしようとするという意味、「世界戦争」の要素を確実にもつがゆえに、私たちの生活と地続きである。何度でも、ガザの子どもたちのことを思い起こしながら、この非道な世界を生きていることを確認しなければならない。
もっとも、こうした殲滅戦争が簡単に発生するという事態は構造化されているので、私たちとしてまずすべきことは、焦らず、人権に関する「法の賢慮」を鍛えていくという地道な作業を積み重ねることのほかにはないのではないか。そのように考えて、本号でも、ヨーロッパ人権裁判所の判例の解説を7本掲載した。あわせて、気候変動対策を求めた環境NGOの訴訟が、同裁判所で受理され、また勝訴判決を得るという極めて注目される事例が4月に現れたので、これをさしあたり「速報」として紹介することとした。さらに、2022年9月をもってヨーロッパ人権条約の締約国でなくなったロシアの、この四半世紀に及ぶ経験について、また、これもまた速報的性格をもつが、イスラエルのガサ大量破壊戦争に対する国際司法裁判所(ICJ)における事件について、それぞれ「論説」を掲載した。いずれも力作であるが、後者の〈論説2〉は、ICJのジェノサイド条約適用事件(南アフリカ対イスラエル)の仮保全措置(本年1月26日命令、3月28日命令で確認・修正、5 月24日命令)を取り上げ、丁寧に紹介しながら、法をめぐる諸言説の意義と限界について考えさせるものとなっている。なお、判例解説2で取り上げたウクライナ対ロシア(クリミア問題)決定は、ウクライナ侵略につながるクリミア併合についての人権裁判所大法廷決定であるが、この編集後記執筆中に、本号刊行直前の6月25日に判決が言い渡される、という一報が届いた。
上記内容は本書刊行時のものです。