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アイドルについて葛藤しながら考えてみた
ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年7月25日
- 書店発売日
- 2022年7月25日
- 登録日
- 2022年6月22日
- 最終更新日
- 2022年8月24日
書評掲載情報
2022-09-03 | 日本経済新聞 朝刊 |
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重版情報
4刷 | 出来予定日: 2024-10-04 |
3刷 | 出来予定日: 2022-11-07 |
2刷 | 出来予定日: 2022-08-15 |
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「恋愛禁止」と異性愛規範、エイジズムなど、演者に抑圧を強いる構造的な問題を抱えるアイドルの可能性と問題性について「葛藤しながら考える」ための試論集。「推し」をもつことの倫理を考える最初の一冊として長くご好評いただき、おかげさまで4刷です。 |
紹介
「恋愛禁止」と異性愛規範、「卒業」制度に表れるエイジズムなど、アイドルというジャンルは演者に抑圧を強いる構造的な問題を抱え続けている。アイドルの可能性と問題性について、手放しの肯定でも粗雑な否定でもなく、「葛藤しながら考える」ための試論集。
目次
はじめに 香月孝史
序 章 きっかけとしてのフェミニズム 中村香住
第1章 絶えざるまなざしのなかで――アイドルをめぐるメディア環境と日常的営為の意味 香月孝史
1 日常化するドキュメンタリー
2 〈見る/見られる〉の先にあるもの
3 承認と消費の間で葛藤すること
第2章 「推す」ことの倫理を考えるために 筒井晴香
1 問題設定とこれまで論じた事柄について
2 「推し活」の問題とアイドル
3 「推す」ことの倫理を考えるために
第3章 「ハロプロが女の人生を救う」なんてことがある? いなだ易
1 ハロプロの特色とその受容
2 ハロプロの音楽は「女の人生を救う」か
3 アイドルたちの「女の人生」
第4章 コンセプト化した「ガールクラッシュ」はガールクラッシュたりえるか?――「ガールクラッシュ」というコンセプトの再検討 DJ泡沫
1 「ガールクラッシュ」とはそもそも何か
2 韓国での「ガールクラッシュ」コンセプトの誕生と内包されるイメージ
3 K―POPにおける女性アイドルの女性ファンに対するレッテルの歴史
4 女性ファンたちが自ら選んで愛した女性アイドルと楽曲たち
第5章 キミを見つめる私の性的視線が性的消費だとして 金巻ともこ
1 世界はひどくて悲しい暴力に満ちている
2 キミを見つめる目ははたして暴力なのか
第6章 クィアとアイドル試論――二丁目の魁カミングアウトから紡ぎ出される両義性 上岡磨奈
1 「当たり前」に対するわだかまり
2 「異性」としてのアイドル
3 フォロワー/カウンターとしてのゲイアイドル
4 異性愛主義とゲイアイドル
5 ジェンダーに対する無関心
6 アイドルとジェンダー、セクシュアリティ
第7章 「アイドル」を解釈するフレームの「ゆらぎ」をめぐって 田島悠来
1 疑似恋愛の対象としての「アイドル」
2 メディア空間・言説からみる「アイドル/ファン」の姿
第8章 観客は演者の「キラめき」を生み出す存在たりうるのか――『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を通して「推す」ことの葛藤を考える 中村香住
1 観客が演者のパーソナリティや関係性を「消費」することの功罪
2 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』における「二・五次元」コンテンツの枠組みの更新
3 舞台少女の「キラめき」を生み出す「燃料」とは何か
4 観客(オーディエンス)が演者(パフォーマー)を舞台に立たせるとはどういうことか
5 キリンはサプライズがお好き?
6 キリンが「舞台少女」と「普通」の「女の子」を執拗に区別することの意味
7 なぜ、それでも「舞台少女」を続けるのか
8 「舞台少女」と「舞台創造科」との共犯関係
第9章 もしもアイドルを観ることが賭博のようなものだとしたら――「よさ」と「よくなさ」の表裏一体 松本友也
1 「アイドルを観る」とはどのような行為なのか
2 賭博の美学性、観ることの賭博性
3 アイドルの「アマチュア性」がもたらす賭博的緊張
4 「わたしたちと同じ身体」による期待の裏切り
5 「賭ける」ことと「推す」こと
6 賭博的な快の裏に隠されるもの
7 「生身」への欲望を制限すること、またその困難
おわりに 上岡磨奈
版元から一言
今日、アイドルは広く普遍的な人気を獲得し、多様なスタイルや可能性をもつジャンルとしても注目されている。しかし、同時に多くの難点を抱え込んでいることも見過ごせない。
暗黙の「恋愛禁止」ルールとその背景にある異性愛主義、「年齢いじり」や一定の年齢での「卒業」という慣習に表れるエイジズム、あからさまに可視化されるルッキズム、SNSを通じて四六時中切り売りされるパーソナリティ……。アイドルというジャンルは、現実にアイドルとして生きる人に抑圧を強いる構造的な問題を抱え続けている。スキャンダルやトラブルが発生して、旧態依然ともいえるアイドル界の「常識」のあり方が浮き彫りになるたび、ファンの間では答えが出ない議論が繰り返されている。
その一方で、自らの表現を模索しながら主体的にステージに立ち、ときに演者同士で連帯して目標を達成しようとするアイドルたちの実践は、人々をエンパワーメントするものでもある。そして、ファンのなかでも、アイドル本人に身勝手な欲望や規範を押し付けることと裏表でもある「推す」(≒消費する)ことに対して、後ろめたさを抱く人が増えている。
本書では、「推している」がゆえにジャンルが抱える問題から目をそらすのではなく、かといって、現に日々活動を続ける一人ひとりのアイドルの存在を無視して「アイドル」そのものを「悪しき文化」として非難するのでもなく、「アイドルを好きでいること」と問題点の批判的な検討との両立を目指す。
乃木坂46やAKB48、ハロー!プロジェクト、二丁目の魁カミングアウトなどの具体的なアイドルの実践を取り上げる批評から、「推す」という行為のもつ功罪を問い直す論考、近年K-POPアイドルシーンで盛んな「女性が憧れる女性像」である「ガールクラッシュ」コンセプトの内実を検討するレビューまで、様々な視点から「葛藤しながらアイドルを語る」ことの可能性を浮き彫りにする。
上記内容は本書刊行時のものです。