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沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]
世論形成過程の社会心理学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年3月
- 書店発売日
- 2013年3月15日
- 登録日
- 2013年2月6日
- 最終更新日
- 2017年6月16日
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2022-07-14 |
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少数派は沈黙,多数派は声高になる螺旋状のプロセスとは。世論研究の名著の復刻版。 |
紹介
自分の意見は少数派である,あるいはそうなりそうだとわかった人は孤立を恐れて沈黙し,逆に自分が多数派だと認知した人は声高に発言する。沈黙は雄弁を生み,雄弁は沈黙を生むというこの螺旋状のプロセスの中で,少数派はますます少数派になっていく……。長らく絶版となっていた世論研究の名著,待望の復刻版。
目次
復刊の現代的意義―訳者前書きに代えて
日本語版第二版への序
アメリカ版への序
1.沈黙の仮説
2.調査を駆使した仮説のテスト
3.孤立への恐怖という動機
4.世論とは何か
5.意見の法―ジョン・ロック
6.政府は世論によって支えられる―デビッド・ヒュームとジェームズ・マディソン
7.「世論」という言葉の創始者―ジャン‐ジャック・ルソー
8.世論の専制
9.「社会統制」概念が形成され,「世論」概念は一掃された
10.オオカミたちが遠ぼえで合唱する
11.アフリカ・大洋州諸部族の世論
12.バスティーユの襲撃―世論と群集心理学
13.流行も世論である
14.さらし台
15.法と世論
16.世論は社会の統合を果たす
17.前衛,異端,アウトサイダー―世論を変える
18.世論伝播の乗り物としてのステレオタイプ―ウォルター・リップマン
19.世論が争点を選択する―ニクラス・ルーマン
20.公衆の注目を左右するジャーナリストの特権
21.世論には二つの源泉がある―その一つがマスメディアである
22.二重の意見風土
23.分節化機能―メディアに乗らない意見の持ち主は事実上沈黙させられる
24.民の声は天の声
25.新たなる知見
26.世論の理論をめざして
27.世論の潜在機能・顕在機能:まとめにかえて
資料 世論に関する文献研究:テクスト分析へのガイド
結びにかえて謝意を
第二版の結びとして
原注
訳注
訳者解題
引用文献
本書との関連文献
参考文献
人名索引
事項索引
前書きなど
◆6/16ラジオ高崎「絲山秋子のゴゼンサマ」の
3分リーディングにおきまして,ご朗読いただきました!
勝ち馬効果は通常,誰もが勝者の側にいたいと思い,勝者に属したいと願うことによるものだと説明される.だが,本当にいつもそうだろうか,いや,たいていの人はそんなみえをはったりはしない.エリートとは違って,大多数の人は勝ったからといって役職に就いたり,勢力を拡大したりすることはない.我々がここで扱っているのはもっと控え目な現象ではなかろうか.つまり,わが身の孤立を回避したいという,我々皆が明白に有している願望を扱っているのである.しばらくの間,CDUのバッジをつけてみた学生の例のように,誰しも孤立したくはないのである.誰しもアパートの階段ですれ違った隣人にそっぽを向かれたり,同僚に隣の席を立たれるほど孤立したくはないのである.
まわりの人が自分と暖かく意見を分かちあっているのではなく,自分を避けようとしていることに気づかせる何百ものシグナルを,我々はようやく観察し始めたらしい.
1972年の選挙前後に調査を繰り返した結果,次のことが判明した.「自分には知人がほとんどいない」人,つまり他者から相対的に孤立した人が投票のなだれ現象にもっとも加わりやすい人であり,相対的に自分に自信がなく政治に関心の低い人も最後に投票意図を変える傾向のあることがわかったのである.自信のない彼らは自分が勝者の側にいると感じたり,勝ち馬に乗って騒いでいるなどと考えることはまずない.むしろ勝ち馬に乗り移るのは,「群れになって遁走する」と表現する方がふさわしい.
それは,何も彼らだけではなく,全ての人間に多かれ少なかれ当てはまるのではないだろうか.他人が自分からそっぽを向くと思えばだれしも大変傷ついて,馬の手綱を引き締めるのと同様の容易さで,多数者の手綱にたやすく左右されてしまうのではないだろうか.
私には,こうした孤立への恐怖こそが沈黙の螺旋を始動させる力であるように思われる.孤立しないで一団になって走るのは気持ちのいいものだろう.が,皆と同意見を公然と表明してこの一団の内に加われないであれば,第二の選択として,皆に許容してもらうために少なくとも沈黙を守るという道もある.
(E.ノエル=ノイマン著、『沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]』7頁10行~8頁8行)
上記内容は本書刊行時のものです。