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生きる 闘う 学ぶ
関西夜間中学運動50年
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年3月25日
- 書店発売日
- 2019年3月20日
- 登録日
- 2018年12月18日
- 最終更新日
- 2020年5月27日
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2019-04-15 |
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紹介
夜間中学はこの半世紀、学齢時に義務教育を奪われた人たちの「学習権保障の叫び」に応える「学び」の場として営まれてきた。その「学び」は、人間を序列化する「学校型教育制度」に猛省を求めるものだった。一貫して夜間中学を抑制しようとしてきた国の方針は、新たな法律により「最低一県一校の夜間中学を」と変わった。関西夜間中学運動50年のあゆみをふりかえり、新たな時代を迎えた夜間中学のあり方を問う。
目次
はじめに
第1部 夜間中学生の主張
がっこうにいきたい― 高橋 栄一
障碍者が安心して勉強できるように― 大西 良子
怒り― 須堯 信行
夜間中学 夜間中学って何や?― 八木 秀夫
夫の思いで― 八木 昌子
夜間中学生 八木秀夫さんを偲ぶ― 高木 宣明
ある思いで「夜間中学の八木です」― 森本 啓
私が 夜間中学で 学んだこと― 李慶錫
なぜ、祖国を訴えたか― 宮島 満子
知った以上は何かしなあかん― 下岡 純子
―おいだされ組文集―ひとりだけの卒業文集―
いかり― 髙橋 敏夫
私ひとりの卒業文集― 高橋 尋子
近畿夜間中学校生徒会連合会と共に― 一森 悦子
夜間中学で勉強して本当に良かった― 朴花春
夜間中学での学び 橋下さんに言いたいこと― 文在良
第2部 あゆみ
夜間中学のあゆみ 大阪を中心にして― 編集委員会
第3部 闘う
近畿夜間中学校生徒会連合会の活動― 編集委員会
就学援助・補食給食復活の闘い― 編集委員会
「夜間中学を育てる会」の活動― 豊嶋 登
夜間中学生が主役の夜間中学を創ろう―黎明期の大阪の夜間中学生の活動― 平野 和美
南河内自主夜間中学の取り組み― 人と出会い、世界と出会い、私と出会う― 今木 誠造
奈良の夜間中学運動― 米田 哲夫
生徒が学校の見張り番―35日間のストライキ(授業ボイコット)を振り返って― 布川 順子
「義務教育の保障」は私たちの手で―夜間中学の生徒会=近畿夜間中学校生徒会連合会― 編集委員会
兵庫県内の夜間中学の活動― 石打 謹也
第4部 学ぶ
東大阪の夜間中学の取り組み―独立運動・「うりそだん」「さらんばん」のハルモニたち― 髙野雅夫/林 二郎/藤井和子/鄭貴美/和久野哲治/韓一茂/司会・白井善吾
夜間中学生の学びと夜間中学文化― 福島 俊弘
存在意義の確認・検証の場―守口夜間中学「公開と交流」― 『夜間中学で「まなぶ」』編集委員会
在日朝鮮人教育と夜間中学―東大阪市の夜間中学ではじめた在日朝鮮人生徒の学びが昼の学校での在日朝鮮人教育の広がりへ― 林 二郎
日韓識字文解交流に学んだこと― 韓一茂
●新渡日の人たちの夜間中学の学び
アフガニスタン難民の生徒と夜間中学― 林 二郎
新しい夜間中学を求めて― 安野 勝美
夜間中学での中国人生徒の学び― 葉 映蘭
第5部 語る
座談会 夜間中学生の闘いに学び、いまに伝える ― 金夏子/金喜子/箱谷暎子/朴梧桐/司会・韓一茂
夜間中学教員座談会 50年をどう総括し、明日を展望するか ― 米田哲夫/白井善吾/由利元次郎/石打謹也/山﨑靖彦/黒川優子/韓一茂
第6部 夜間中学の明日に
明日の夜間中学に― 編集委員会
インタビュー 東アジアの識字運動と日本の夜間中学― 萬稀/聞き手・編集委員会 通訳・金香都子
文解教育と夜間中学 カンボジアの小さな村からの発信― 萬稀
第7部 証言
●夜間中学教員の証言
自分を読む― 稲富 進
夜間中学生が教えてくれたこと、学んだこと― 金城 実
夜間中学と私― 岩井 好子
「夜間中学いろは」のコトバ― 平井 由貴子
夜間中学開設から50年― 足立 龍枝
夜間中学生と向き合ってきて― 吉村 和晃
●ジャーナリストの証言
母が“奪い返した”もの― 今西 富幸
夜間中学増設運動がいま直面していること 「最低一県に一校の夜間中学開設を」に挑む― 川瀬 俊治
人生が変わる。人生を変える。― 西村 秀樹
文字をおぼえて夕焼けが美しい― 福田 雅子
夜間中学で学んだこと― 山成 孝治
資料
発信……夜間中学(「日教組教育新聞」1996年)
原点から問う 夜間中学の今 ―髙野雅夫さんにきく(「日教組教育新聞」1996年)
夜間中学校関連年表
自主夜間中学・運動体一覧
公立夜間中学校一覧
あとがき
敗者復活戦の法則― 髙野雅夫
コラム(編集委員会執筆)
1.戦後夜間中学の嚆矢 大阪市立生野第二中学夕間学級
2.大阪府知事、天王寺を訪ねる
3.天王寺「夜間中学生の像」
4.彫刻「夜間中学生の像」「オモニの像」
5.夜間中学が高校教科書に登場
6.「タネの思想」と「コヤシの思想」
7.夜間中学憲章(私たちのめざす夜間中学)― 奈良県夜間中学連絡協議会
8.「わらじ通信」に込められた想いを共有して
版元から一言
いま「教育機会確保法」を公布し、「最低一県一校の夜間中学」と掛け声をかけるこの国は、1966年に「夜間中学廃止勧告」を出し、夜間中学を潰してきた歴史がある。この勧告を〝夜間中学への死刑宣告だ〟と受け止めた夜間中学卒業生・髙野雅夫は「何歳になろうが、義務教育を受ける権利は義務教育未修了者にもある。憲法に定められた教育を受ける権利の保障を求める」と訴え、母校の在校生、卒業生、教師の力を結集し、証言映画『夜間中学生』を制作した。
夜間中学の開設を求め、1967年9月、フィルムを携え、全国行脚をはじめた。1968年10月、大阪で〝214日の闘い〟を実行した。広範な市民の闘いに拡がり、1969年6月5日、天王寺夜間中学を開設させた。それから2019年で50年を迎える。
学齢時、義務教育を保障されなかった人たちの提起する「学習権保障の叫び」と「夜間中学生の学び」は、学校教育の欠落部分をあぶり出し、顕在化させる衝撃力をもっていた。夜間中学生は学びを通して社会や教師に変革を求め、「学校型教育制度」を乗り越え、共に立ち上がることを求めてきた。その50年のあゆみである。
「教科書から出発し、成績で序列化し、人と人を引き裂く」文科省がいう「学校型教育様式」に対し、夜間中学生は「生活の現実から出発し、孤立してきた人と人を結び、仲間をつくる」夜間中学の学びを主張してきた。
夜間中学は、学歴社会の公教育制度が内包する点数学力による競争、管理がもっている諸矛盾から学習者を解放し、「学び」が本来もっている意義を明らかにし、その検証ができる場である。そこにおいて夜間中学生と教員が夜間中学の学びを追求してきた。
「教育機会確保法」が成立した今、「学校型教育制度」のもつ問題点を問わない「官制の夜間中学」が動き出している。このことは、夜間中学の最大の危機であると考えている。いまこそ、学びを必要とする当事者の名乗り出と開設要求の市民の運動が必要だと50年のあゆみは主張している。
50年を前に、夜間中学の実践を行ってきた関西の夜間中学から、夜間中学生・卒業生19人、教員・元教員30人、そして5人のジャーナリストの執筆により、「このような夜間中学をつくりましょう」というメッセージを全国に届けたい。
上記内容は本書刊行時のものです。