書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
ピケティ・正義・エコロジー
資本主義を超えて参加型社会主義へ
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2025年2月10日
- 書店発売日
- 2025年1月31日
- 登録日
- 2024年12月23日
- 最終更新日
- 2025年1月28日
紹介
『21世紀の資本』で社会現象を巻き起こした経済学者ピケティの論考を詳細に分析し、累進税を軸とした税制・再分配、教育・医療や人種・ジェンダーにおける不平等の是正、気候変動対策等を包括的に論じ、資本主義を超えた「参加型社会主義」を模索する。
目次
序章 本書の課題と構成
第一部 不平等体制と租税問題
第一章 不平等体制と累進税――ピケティの議論をめぐって
一 累進税の歴史的成果
(一)富の格差の縮小と累進税
(二)累進税の歴史的変化
二 累進税の社会的役割
(一)累進税と社会的公正
(二)累進税と社会民主主義
三 累進税の国際的次元
(一)欧州統合と租税政策
(二)新欧州建設のマニフェストと累進税
(三)欧州連邦制と共通租税政策
第二章 租税の公正と社会国家――フランスでの議論をめぐって
一 ルソーの租税論と社会的公正
(一)租税と市民の同意
(二)租税の公正と不平等
二 連帯主義と累進税
(一)累進税の正当化
(二)累進税のイデオロギー
三 財政社会学と租税・社会国家
(一)フランスの財政社会学
(二)租税国家=社会国家の機能
四 租税政策と国民負担
(一)栄光の三〇年の租税政策
(二)新自由主義と租税政策の転換
五 租税に対する市民の反抗
(一)租税に対する抵抗運動
(二)マクロン政権の租税政策の不公正
第二部 不平等体制と社会・グローバル問題
第三章 教育と保健医療の不平等体制
一 教育機会の不均等と社会的不平等
(一)教育サービスへのアクセスの不均等
(二)学校教育の不平等
二 能力主義と知識資本主義
(一)能力主義と人的資本
(二)知識資本主義の出現
(三)デジタル分断と社会的不平等
三 教育体制の不平等――フランスをめぐって
(一)教育支出の不公正
(二)教育体制の差別化
四 保健医療体制と社会国家
五 感染症と保健医療の不平等――コロナパンデミックをめぐって
(一)コロナパンデミックと保健医療のグローバル不平等
(二)ポストコロナの保健医療体制―フランスをめぐって
第四章 人種差別とジェンダー差別
一 人種差別の歴史認識
(一)人種差別と奴隷制
(二)ポスト奴隷制の人種差別
二 人種差別と社会的不平等
(一)人種差別と社会的ヒエラルキー
(二)人種差別の「見える」化
三 人種差別と移民問題――フランスをめぐって
(一)人種差別とグレートリプレースメント論
(二)移民と社会的混成
(三)移民と社会秩序
四 ジェンダー差別の歴史・社会認識
(一)ジェンダー差別の歴史認識
(二)ジェンダー差別の社会認識
五 ジェンダー差別と女性の解放
(一)ジェンダー差別の社会的・経済的実態―フランスを中心として
(二)ジェンダー差別の解消
(三)女性解放の進展
第五章 グローバルサウスと不平等体制
一 ポスト植民地主義とグローバルサウス
(一)植民地主義と賠償責任
(二)ポスト植民地主義と植民地性
二 旧植民地の反逆――アフリカの旧フランス領をめぐって
(一)ニジェールの軍事クーデター
(二)ガボンの軍事クーデター
三 アフリカの反植民地主義の展開
(一)軍事クーデターの背景
(二)旧植民地の民主主義革命―セネガルをめぐって
四 グローバル資本主義とグローバルサウス
(一)新自由主義とグローバルサウス
(二)グローバルサウスと不平等体制
五 グローバルサウスと新国際秩序
(一)新ワシントンコンセンサスとグローバルサウス
(二)BRICSの拡大とグローバルサウス
(三)グローバルサウスの要求と国際秩序の改革
(四)地政学的危機とグローバルサウス
第三部 不平等体制とエコロジー問題
第六章 気候変動と社会的公正
一 エコロジー危機と「資本新世」
(一)エコロジー危機の歴史認識
(二)分析概念としての資本新世
二 先進諸国の気候変動対策
(一)米国のインフレーション抑制法
(二)欧州のグリーンディール
(三)フランスのエコ社会への移行対策
三 気候変動対策と国際協力
(一)気候温暖化の加速
(二)COP28の意義と限界
(三)炭素爆弾と先進諸国の偽善
(四)再生可能エネルギーと資源・環境問題
四 気候変動と社会問題
(一)気候変動と不平等体制
(二)気候変動とグローバルサウス
(三)エコロジーと農業問題
五 気候変動対策と資金問題
(一)グローバルサウスへの金融支援
(二)気候変動対策の資金需要
(三)公正なエコ社会と租税政策
終章 資本主義の超克をめざして
一 株主資本主義と参加型社会主義
(一)株主資本主義と不平等体制
(二)ピケティの参加型社会主義論
二 参加型社会主義に対する批判と反批判――フランスをめぐって
(一)右派からのピケティ批判
(二)マルクス主義者によるピケティ批判
(三)修正資本主義論をめぐる諸問題
三 成長主義とエコ社会主義
(一)資本主義の持続可能性
(二)マルクス主義者とエコロジスト
(三)左派とエコロジストの共闘
(四)生活様式の転換と家父長制資本主義
参考文献
あとがき
索引
前書きなど
序章 本書の課題と構成
現代世界はまさに複合危機に見舞われている。経済危機、社会危機、政治危機、地政学的危機、健康危機、並びに気候危機、これらの危機が全世界の人々に襲いかかっているのだ。そしてそれらの危機に、様々な形となって現れる不平等の姿が反映されている。フランスの著名な社会学者デュベは最近の著書で、富や所得の格差として表される不平等を大きな不平等と称し、それに対して教育や保健医療のサービスにおける格差、及び人種差別やジェンダー差別などを小さな不平等とみなす。大事なことは、後者の小さな不平等が積もり積もってやがて大きな不平等になるという点である。今日、そうした経済的かつ社会的な不平等は一国規模でもグローバル規模でも全然消えていない。否、それどころか不平等はむしろ強まる傾向さえ見せている。こうした中でフランスを代表する哲学者の一人であるランシエールは、社会科学者の根本的な使命は不平等を告発することにあると謳った。筆者は彼の意見に深く賛同する。今やそうした不平等を告発する使命は、ますます強く求められていると言わねばならない。さらにそればかりでない。不平等をいかに解消するかが喫緊の課題となっているのだ。資本主義のシステムにそれらの経済的・社会的不平等が付き物であるとするならば、このシステムを転換してより公正な社会を建設するためには、まずもってそうした不平等の解消が必要不可欠になるからである。
筆者はこのような問題意識の下に、本書で次のようないくつかの課題を設けることにした。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。