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大学生が伝えたい 非正規公務員の真実
現場から見る課題と未来
- 初版年月日
- 2025年2月25日
- 発売予定日
- 2025年2月14日
- 登録日
- 2025年1月9日
- 最終更新日
- 2025年1月31日
紹介
教員・図書館職員・相談員など、日本の市区町村の非正規公務員割合が4割を超え、ワーキングプア化する中、この問題の第一人者である著者が、所属大学のゼミ生とともに現場取材を重ね、問題の解決に向けて考える。第一線のジャーナリストによる寄稿も収載。
目次
プロローグ:「書くという行為」について
はじめに
第1章 児童相談所──児童虐待に挑む現場第一線は非正規公務員[守田優也]
非正規だから受ける不合理
児童相談所のリアル
激増する児童虐待
今後の日本を支える福祉に求めるもの
指導教員から一言
第2章 教員の質が担保されない教育現場[櫻井晴菜]
臨時的任用教員の実態
初任者研修
襲来する教員不足時代
教育現場がブラックな背景
おわりに:『「教員不足」への対応等について』の考察
指導教員から一言
第3章 公共図書館の非正規公務員[佐藤千花]
脅かされる非正規図書館員の雇用
選ばれて非正規化した図書館
見過ごされるやりがい搾取
図書館は民主主義の砦
現場の生の声から学ぶ
指導教員から一言
第4章 女性を支える女性の非正規公務員──女性相談支援員、男女共同参画センターコーディネーター[上林陽治]
困難を抱える人をおいて、逃げない
女性相談支援員の置かれた状況
PSMと処遇のアンバランス
男女共同参画センターコーディネーターの場合
軽んじられる男女共同参画事業
専門性を蔑ろにする男女共同参画行政/寅子の叫びはいまも響く
コラム1 スクールカウンセラー大量雇止めから考える公共サービスの崩落[藤田和恵]
第5章 ハローワーク相談員 声をあげる非正規公務員当事者たち──雇止めされる恐怖に抗して[秋田谷和哉]
ハローワークの中の人の試練
雇止めハラスメント
現状変化を求め市民運動団体を創設
指導教員から一言
第6章 ある相談支援員の自死から考える[山田優月]
非正規公務員であった1人の女性の生涯
裁判では聞き入れられなかった両親の主張
非正規公務員のハラスメントの実態
専門職として働く非正規公務員が有期雇用であることの弊害
人権侵害
指導教員から一言
コラム2 非正規公務員問題とマスコミ[畑間香織]
特別寄稿 地方紙で非正規公務員問題を追いかける[竹次稔]
結びに代えて
エピローグ:「世間」ではなく「社会」にむけて発信する
前書きなど
結びに代えて
(…前略…)
本書では、さまざまな業種で非正規公務員として公務職場に携わっている方々から現場で起こっている生の声をお聞きし、それをもとに実態を調査してきた。調査を通して思い知らされたことは、「非正規」というレッテルのもとに不条理・不合理な待遇を受け、ハラスメントの被害に遭うことすら少なくない中で、現場の第一線として私たちの生活になくてはならない公共サービスを必死に提供している方々が、あまりにも多すぎるという実態である。実際にあった出来事をさまざま聞いていくうちに、この問題が今日の日本社会全体の労働問題につながるのではないかという見方も上がってきた。
私たちはこの調査を終え、何度も議論を重ねながら文章を構成し、執筆した。そして、最終のフィールドスタディのゼミにて、この非正規公務員問題をどのようにしたら解決できるのかということについて議論が繰り広げられた。
上林先生はこのゼミナールを通して、私たちに非正規公務員のリアルな問題に触れ、問題意識を持った上で、組織の内部から発信することが難しいこの惨状を外部から社会に広く知らせてほしい、可視化することで放置しないでほしい、そんな想いでこのゼミナールを募集したと話す。実際に当事者の方々とお会いし、対話する。この問題によって命を落とした非正規公務員の遺族とも直接お話しする機会も頂いた。私たちは、それぞれ分野の違う仕事をしている方々からお話を伺ったわけだが、直接現場のリアルなお話を伺ったことで、非正規公務員問題はかなり深刻な問題であり、普通に考えればあり得ないことが罷り通ってしまっているということを共通認識として持つことができた。その上で、問題が発生してしまう背景についても考察したわけだが、ハラスメントや待遇格差など非正規公務員という枠組を持って始めたこの取材と調査も、蓋を開けてみれば、日本社会の労働環境全体に対する疑問を感じさせるようになったのだ。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。