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「素顔の国際結婚」の今
世代をつなぐ国際家族のリアル
- 初版年月日
- 2024年12月20日
- 発売予定日
- 2024年12月19日
- 登録日
- 2024年11月14日
- 最終更新日
- 2024年12月13日
紹介
1980年代に『素顔の国際結婚』を刊行した当事者団体による最新刊。高齢期を迎えた旧世代の生活課題、新世代の結婚観等を綴る。コロナ禍で露呈した、複数国籍を認めない日本の国籍法の矛盾等の政策課題も問い、日本における国際結婚の歴史と現在を語る書。
目次
はじめに
第一章 未来を見つめる若者たち
座談会 国境を越えた結び付き[リード眞澄]
参加者:新井順子(中国)、渡辺美穂子(ブータン)、三好郁也(リトアニア)、岩井悠太(ドイツ)、櫻井綾子(ポーランド)
司会:リード眞澄(アメリカ)
座談会に参加して[三好郁也]
第二章 見えない国籍の壁
家族と引き離される在外日本人――国籍法が生む悲劇[小原あかね(アメリカ)]
一日遅れで外国人になった我が子[マクベイズ響子(アメリカ)]
日本人から自動的に国籍を奪う国籍法一一条一項とは? 自身の体験から[清水裕子(カナダ)]
国際夫婦――スウェーデンで暮らし、働く[カールソン恵梨香(スウェーデン)]
日台国際家族と国籍法[大成権真弓(台湾)]
日本人から外国人、そしてまた日本人[ホフマン理沙(アメリカ)]
国籍の見えない壁[もりきかずみ(ブラジル)]
国籍法改正の請願活動から学んだ視点[トルン紀美子(ドイツ)]
コラム1 私たちの請願活動について
コラム2 国籍法の問題点とは
第三章 家族のありよう
日韓匙加減[奈津子(大韓民国)]
言語学習、どうしていますか?[A・N(アメリカ)]
夫を日本で生かすミッション[シャーリー仲村知子(アメリカ)]
コラム3 国際家族の戸籍、住民票、なまえ
はじまりの一〇年――在日コリアンと家族した頃[蒔田直子(大韓民国)]
ドイツで子育て、そして離婚[小泉美津子(ドイツ)]
夫との二人三脚[国際花子(フランス)]
国際家族と教育について[諏訪さおり(香港)]
第四章 シニアライフの迎え方
日系コミュニティとの繋がりを求めて[中村悦子(オランダ)]
「素顔の国際結婚」 その後の展開[シュトッカーかほる(スイス)]
移住未満――日本と韓国の狭間で[佳田暎子(大韓民国)]
両親の介護と看取り――アメリカ再入国・永住権での問題[グロスマン美子(アメリカ)]
亡きアメリカ人夫の介護保険と相続[中村美佐保(アメリカ)]
外国人夫が亡くなると[高橋君代(インド)]
コラム4 国際結婚家族の「準拠法」 どの国の法律が適用されるのか
Counterpoint/対位法――日本で老いを迎える在日外国人のサポートネットワーク Sae Cardonnel, Amanda Gillis-Furutaka, Rebecca Jennison, Aline Koza(和訳 湯浅佳代)
第五章 第二、第三世代からのメッセージ
二つの国で学ばせる[朴沙羅(大韓民国)]
「自分は何人?」 私は私[ハワード・フィオナ(イギリス)]
国籍問題とアイデンティティ――日本とブラジルの中位から[ガルシア陽(ブラジル)]
おわりに
前書きなど
はじめに
コロナ禍の真っ最中、二〇二〇年の晩秋の頃、遠く琵琶湖を望むとある山荘で今回の出版企画案が生まれました。その日は「国際結婚を考える会」の同窓会でした。四〇年も昔、国際結婚をし、母国を離れ、異国の地に住み、仕事をし子どもを育て、その後、お連れ合いともども京都に永住帰国した二名の元会員と遠方から駆けつけた会の創始者ら総勢一一人での集まりでした。
(…中略…)
そして、自ずと、一九八六年に当会から出版した『素顔の国際結婚』が話題となりました。三五名の当時の会員らのエッセイが綴られていますが、戸惑いながらも異なる言語や習慣などに触れる喜び、新たな価値観に対面する「自己発見」、バイカルチャーの子どもへの想いなどが実に生き生きと描かれています。前書きには創始者の一人であり、当時の編集に携わった、もりきかずみさんが「わたしたちはちょうど国際結婚が普通になるまでの過渡期の始めにいるのかもしれない」と記しています。その日たまさか参加していたもりきさんが、それぞれの、今に至る多彩な話を聞いているうちに「国際結婚」は今、どうなっているのだろうということが頭によぎったのか、突如、『素顔の国際結婚』の続編を出そうよと言われたのです。
(…中略…)
(…)それから二年ほど経ってしまいましたが、数人の有志たちと多くの執筆者の協力によって本書ができあがりました。
第一章は五名の若い世代の国際結婚をした方たちによる座談会ですが、配偶者の国籍も多様化している今の若い世代の結婚観を読み解くとても良い機会となりました。第二章からはオムニバス形式で二五名の方の国際家族としての本音がそれぞれ語られています。国籍喪失された方の怒りと悲しみや、留保届が一日遅れただけでお子さまが日本人になれなかった方の口惜しさ、国際家族における子どもの教育や夫への想いなど感動的な原稿などが満載です。あまりにも率直な熱い言葉のはしばしに、私たち編集委員らも共感し胸を詰まらせながら校正作業を進めたことが幾度もありました。また、四〇年前『素顔の国際結婚』に執筆された古参の方たちからは、四〇年という時間の流れを沸々とさせられる原稿が届いて、読んでいるうちに、万感胸に迫ってくるものがありました。
この本の企画中にも、政府は人口減少と少子高齢化による労働力不足を危惧し、子育て支援や幾つかの移民受け入れの施策を慌てて打ち出してきました。現に日本の人口は二〇五〇年には一億人を切り、GDPは下がり続け、経済は疲弊し亡国になるとも言われています。そんないささか暗い未来予測がされているというのに、在外邦人の日本国籍を剥奪したり、日本ルーツの子どもなのに国籍喪失させられたりという不条理な事実を目のあたりにすると、いつまで国籍唯一の原則に縛られているのかと本当に歯痒くなります。言ってみれば、そんな彼らこそ、有能なグローバル人材であり、日本と他国の架け橋になる「親善大使」であり、日本崩壊の歯止めの一役をを担う存在になるかもしれないのに、という悔しい思いがよぎります。
このように本書は、「国際家族」の実態を知っていただくとともに、いま直面している問題などについて、少しでも皆様に理解していただきたいという切なる思いで企画いたしました。そして、これからの国際化社会、世界平和に向けて少しでも糸口が見出せるような一冊になれば幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。