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子ども若者の権利と学び・学校
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年9月15日
- 書店発売日
- 2024年9月9日
- 登録日
- 2024年8月16日
- 最終更新日
- 2024年9月13日
紹介
子どもの権利と幸せを尊重する教育環境を探求する第3巻。不登校支援、インクルーシブ教育など学校における子どもの権利保障の問題、専門職による支援と連携の取り組み、さらにシティズンシップ教育や性教育の課題と展望を通して、未来の教育と学びの環境を考察する。
目次
巻頭言
第Ⅰ部 子どもの権利とその保障
第1章 子どもの権利を守り・最善の利益をもたらす「『生きる』教育」――子どもの権利を守る学校運営・カリキュラムとは[木村幹彦]
1 はじめに――「『生きる』教育」はなぜ生まれたのか
2 子どもの実態とカリキュラムの変遷
3 子どもの権利を守り切る緻密な生活指導
4 心を育てる国語科教育
5 負の連鎖を断ち切る「『生きる』教育」
6 アタッチメント理論とトラウマ理解に基づいた教育
7 保護者や卒業生の声
8 子どもの権利を子ども自らが守るために
Column 子どもの権利を学校で学ぶ[佐藤修司]
第2章 学校内外の経験から考える不登校支援――子どもの権利を守るために大切なこと[池田隆史]
1 不登校と現状と捉え方
2 「子どもを人として観ているか?」
3 「子どもを人として観るとは?」
第3章 多様な子どもの権利を保障するためのインクルーシブ教育[野口晃菜]
1 インクルーシブ教育とは
2 日本のインクルーシブ教育の現状と課題
第4章 「外国籍児童生徒」から「外国ルーツの子ども」の支援へ――「こども基本法」を実質的なものとするために[清水睦美]
1 はじめに――こども基本法の意義
2 外国籍児童生徒の排除の歴史
3 複数言語環境・複数文化環境のもとで育つ外国ルーツの子どもたちの固有性
4 外国ルーツの子ども支援の行く先
第Ⅱ部 専門職による支援と連携
第5章 スクールロイヤーができること――子どもの権利の視点から[鬼澤秀昌]
1 「スクールロイヤー」と子どもの権利
2 代理人業務をどの立場の弁護士が担うか
3 制度設計及び運用にスクールロイヤーが関与する方法
4 まとめと今後の課題
第6章 子どもを中心とした専門職連携を行うための取り組み――スクールソーシャルワーカーの視点から[田中佑典]
1 SSWとしての専門職連携を行うにあたっての枠組みづくり(戦略を練る)
2 子どもの権利保障を行うための他機関・他事業との専門職連携(役割分担を行うための活動)
3 今後の展望(まとめ)
第7章 困難な状況の若者を支える高校――大阪・西成の取り組みから[肥下彰男]
1 反貧困学習の始まりと憲法
2 反貧困学習と意見表明権
3 困難な状況の生徒を支える校内組織
4 西成区要対協とわが町にしなり子育てネット
5 高校内居場所カフェの役割
第Ⅲ部 教育の未来と学びの環境
第8章 生徒の自由を実現する学校――日本の校則、入試制度は子どもたちを幸せにしているか[室橋祐貴]
1 いまだに続くブラック校則
2 「ブラック校則」を解消する韓国の取り組み
3 過度に競争的な教育システムが子どもの主体性を奪う
Column 高校「全国校則一覧」サイト開発[神谷航平]
第9章 シティズンシップを育む学校教育[林大介]
1 「シティズンシップ教育」「主権者教育」の位置づけ
2 主権者教育の現状
3 18歳成年時代を見据えた就学前からの主権者意識の育成へ
4 まとめ――今こそ民主主義を体現する学校教育へ
Column 教育政策とこどもの権利[矢野和彦]
第10章 多様な学びプロジェクトの挑戦――街を学びの場に[生駒知里]
1 活動を始めた背景
2 当事者運動としての多様な学びプロジェクト
3 不登校当事者実態全国ニーズ調査
第11章 日本の性教育の歴史からみた課題と展望――こども家庭庁スマート相談保健室/まるっと!まなブックの取り組みを通して[高橋幸子]
1 はじめに――スマート保健相談室:若者の性や妊娠などの健康相談支援サイト
2 アフターピル(緊急避妊薬)にたどり着けない若者たち
3 世界の性教育のスタンダードへ まるっと!まなブック
4 日本の性教育のこれまでとこれから
第12章 なにものでもない、ありのままのいのち――教育の未来へ開かれた眼差し[菊田隆一郎]
1 なにものでもない、ありのままの自分と出会う
2 なにものでもない、ありのままのいのちは測れるか
3 なにものでもない、ありのままのいのちに気づく
4 なにものでもない、ありのままのいのちと未来
5 なにものでもない、ありのままの僕と友達
6 なにものでもない、ありのままのいのちの尊厳
おわりに[末冨芳]
前書きなど
巻頭言
ついにわが国でも、子ども若者の権利を基盤としたこども政策、若者政策が展開されていく段階に入った。
2022(令和4)年6月、子どもの権利を位置づけた国内法であるこども基本法が成立し、2023年4月に施行された。
ここに至る道は長く、平坦ではなかった。子どもの権利条約(児童の権利条約)は、1989年国連総会において採択され、1990年に発効した。日本は1994年に批准している。
ここから2022年のこども基本法の成立に至るまで、およそ30年、子どもの権利条約批准の年に生まれた子どもたちが、成長し、社会を担う世代になるまでの時間を要した。この30年は、わが国の政治・行政をはじめとする大人たちが、子ども若者がおかれる厳しい実態を知り、改善に取り組む中で、子どもの権利の重要性を理解し、国内法に位置づける必要性を共通認識とするために要した時間でもあった。
こども基本法が存在する日本においては、子ども若者が自身の権利を知り、政策や実践の中で、子ども若者の最善の利益の実現や、子ども若者の意見表明や参画の権利などの諸権利を、着実に丁寧に実現していくことこそが、重要となる。
なによりも、子ども若者自身が、幸せな今を生き、成長していくために、大人たちは、子ども若者の声を聴き、声なき声にも寄り添い、対話を重ねながら、ともに進んでいかなければならない。
本シリーズは、子ども若者自身の権利を尊重した実践、子ども政策、若者政策をどのように進めるべきか、いま(現在)の状況を整理するとともに、これから(今後)の取り組みの充実を展望することを目的とする。
子ども若者の権利、こども基本法に込められた理念や願い、それらを子ども若者とどのように実現していくか、当事者、実践者、研究者や政治・行政のアクターによる論稿をまじえることで、日々の実践の中にあっても、子ども若者や関わる大人たちが「共通のビジョン」を持ちながら進んでいくための、手がかりとなれば幸いである。
保育・教育・福祉や司法、労働、医療等の分野で子ども若者と関わる大人たち、子ども若者自身など、子ども若者の権利をこの国・社会において実現するために、ともに道を進んでくださる方々に届くことが、編著者一同の願いである。
上記内容は本書刊行時のものです。