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自閉症とその他の神経発達症のESSENCE(エッセンス)
併存症、評価、および介入について再考する
- 初版年月日
- 2024年7月31日
- 発売予定日
- 2024年7月18日
- 登録日
- 2024年7月2日
- 最終更新日
- 2024年7月12日
紹介
児童精神医学の泰斗、クリストファー・ギルバーグ教授が提唱した、神経発達障害のある子どもの早期の状態、またその見極め方であるESSENCE(神経発達的診察が必要になる早期徴候症候群)。
本書では、ESSENCEの概念をはじめ、各症候群の状態像を概説した上で、具体的な事例を症例説明の形で示し、さらに、それぞれのライフステージにおけるESSENCEの影響までを解説。
従来のカテゴリー診断の限界を踏まえ、症状の共有や診断の併存が「ルール」であるという視点を提供し、包括的なアセスメントとそれに基づく早期の支援/介入/治療の必要性を説いた一冊。
目次
第1章 ESSENCE(エッセンス)って何?
第2章 注意欠如・多動症(ADHD)、不注意、衝動性と落ち着きのなさ
第3章 自閉症
第4章 発達性協調運動症(DCD)
第5章 話し言葉と言語の障害
第6章 知的発達症(ID)および学習上の問題
第7章 限局性学習症(学習困難)
第8章 トゥレット症およびその他のチック症群
第9章 選択性緘黙(場面緘黙)
第10章 回避・制限性食物摂取症(ARFID)
第11章 反応性アタッチメント障害(RAD)および脱抑制型対人交流障害(DSED)
第12章 小児急性発症神経精神症候群(PANS)および溶連菌感染症関連小児自己免疫性神経精神疾患(PANDAS)
第13章 行動表現型症候群(BPS)
第14章 神経疾患および神経障害
第15章 ESSENCE:3件の症例報告
第16章 ESSENCEとともに歩む人生:小児期以降
第17章 ESSENCEセンター
終わりに
参考文献
索引
監修者あとがき
著者・監修者・訳者紹介
前書きなど
監修者 あとがき(1)
ESSENCE(Early Symptomatic Syndromes Eliciting Neurodevelopmental Clinical Examinations〔神経発達的診察が必要になる早期徴候症候群〕)は、ギルバーグ先生が2010年にResearch in Developmental Disabilities誌に発表した論文、The ESSENCE in child psychiatry:Early Symptomatic Syndromes Eliciting Neurodevelopmental Clinical Examinationsで提唱した概念です。ESSENCEは、従来の疾病や障害の診断名ではなく、児童精神医学や発達臨床の対象となる神経発達症に代表される診断や障害においては、症状の共有や診断の併存することが“例外ではなく「ルール」”であり複数の専門家による包括的なアセスメントとそれに基づいた支援/介入/治療が早期からなされることが必要である、という“考え方”です。ギルバーグ先生は、1983年のDAMP(Deficits in Attention, Motor and Perception, ADHDとDCDが併存している状態)についての論文(Gillberg, C. (1983)Perceptual, motor and attentional deficits in Swedish primary school children. Some child psychiatric aspects. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 24, 377-403.)でこの問題に言及しており、その後も新たなアプローチの必要性を指摘して、ESSENCEという包括的なコンセプトを提唱しました。
ESSENCEの論文が発表された当時、早期発見・早期介入の重要性に関するエビデンスが蓄積され始め、特定の神経発達症に特化した早期介入が有効であるということが言われ始めましたが、私自身は、特定の診断名だけではその子の発達の特性や個性を十分に説明できないと感じ、カテゴリカルな診断分類に基づく早期徴候の研究や特化した支援に戸惑いを覚えていました。そんな中で、ギルバーグ先生の論文に出会い、(僭越な言い方かもしれませんが)まさに「我が意を得たり」と感じ、それが私の臨床活動や研究活動のその後の基盤となりました。また、児童の領域に限らず、精神医学的・臨床心理学的な援助や治療の対象となる人々の背景に潜むESSENCEの問題に意識を向けることで、新たな視点が得られるようになりました。
本書のスウェーデン語版は2018年にNatur & Kultur社から、今回の翻訳の底本となった英語版は2021年にJessica Kingsley Publishers社からそれぞれ発刊されています。この本では、ESSENCEについての総論、ESSENCEの傘の下に入るさまざまな状態像、児童期・青年期・成人期のESSENCEの問題の表現形を具体的に示す3つの症例、それぞれのライフステージにおけるESSENCEの影響、そして、包括的な支援のためのESSENCEセンターの重要性について述べられています。監修者のひとりとして、ESSENCEの問題を有する人たちの支援や広く子どもの問題に関わっている専門家や成人の精神医学領域で仕事をされる方たちに読んでいただき、社会の中でESSENCEのある人が、その人らしくいきいきと生きていくことが“例外ではなく「ルール」”となることを心から願っています。
上記内容は本書刊行時のものです。