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別居・離婚後の「共同親権」を考える
子どもと同居親の視点から
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2024年5月31日
- 書店発売日
- 2024年6月27日
- 登録日
- 2024年5月8日
- 最終更新日
- 2024年6月25日
紹介
24万人の反対署名が集まったものの、「共同親権」を可能とする民法などの改正案が5月17日、参院本会議で可決、成立した。
別居・離婚後の「共同親権」が導入された場合、子どもや同居親だけでなく、子どもに関わる学校や保育・福祉、心理、法律関係者にどのような影響を及ぼすのだろうか。各専門家の論考、そして離婚を経験した子どもと同居親の声をあわせて、問題点を提示する。
目次
まえがき[赤石千衣子]
本書刊行への思い 離婚後共同親権は何が問題なのか[熊上崇]
第一章 共同親権が導入されたら、同居親と子どもの生活はどう変わるか?――弁護士の見地から[金澄道子]
第二章 共同親権になると、子ども、同居親の生活はどう変わるか
第一節 離婚後の「非合意・強制型共同親権」導入論の背景と問題――父母の平等は子の利益に優先するか?[木村草太]
第二節 共同親権運動の本質とメディアの問題点[太田啓子]
第三章 子ども、子の同居親は、共同親権をどのように考えているか[田中志保]
一 子どもの声
二 同居親の声
三 シングルペアレント101冊子「私たちの選択と決断」より
第四章 ひとり親世帯の貧困と家族法制の見直し――省庁横断的な対応を[大石亜希子]
第五章 加害者は変わることができるのか[中川瑛]
第六章 DV事件を担当してきた弁護士の立場から伝えたいこと――共同親権制度を施行する前に[岡村晴美]
終章 離婚後共同親権が及ぼす子どもとDV被害者への影響――あるDV被害者の手記「いつまで続く裁判地獄」から[熊上崇]
あとがき[熊上崇]
資料編
資料1 協議離婚したシングルマザーたちの実情――離婚後等の子どもの養育に関するアンケート調査データから
資料2 シングルマザーサポート団体全国協議会(全国31団体)への「離婚後等の子どもの養育に関するアンケート調査」から、家庭裁判所の子の監護に関する手続きを経験した人への調査結果ならびに家庭裁判所への要望
資料3 「離婚後共同親権の導入を含む民法改正案」
前書きなど
本書刊行への思い 離婚後共同親権は何が問題なのか
現在国会で民法改正の審議が行われており、離婚後共同親権が導入されようとしています。離婚後共同親権は、子どもの進学や医療、転居について双方の合意が必要、逆に言えば一方が拒否すれば進学や医療、転居ができなくなります。すなわち、子どもたちが自由で安心に生き、育つ未来をふさぐという問題点があるからです。
共同親権の問題は、全国で100万人以上いる離婚家庭の子どもや、その親に関係します。本法案が改正されれば、婚姻中も「急迫」でなければ子連れ別居もできなくなるかもしれないため、DV当事者や支援者が大きな不安を抱いています。また離婚後共同親権になれば、進学や医療などで双方の合意が必要となり、合意が得られなければ家庭裁判所の調停や審判となる可能性があります。このように共同親権は、離婚後も人生の節目で双方の合意が必要となり、子どもや同居親を支配する道具となります。この2点が、我々が共同親権の導入に反対する大きな問題点です。離婚後もパパもママも養育に関わる、というのが問題なのではありません。本書は子どもに関わる皆さんに、離婚後共同親権の問題点を理解していただきたいと思い、編集しました。
また、共同親権は子どものいる離婚家庭だけの問題ではありません。離婚家庭の子どもに関わる保育や教育、医療や福祉、行政など多くの人に関係してきます。なぜなら離婚家庭の子どもの進学や医療場面で、共同親権者の意見が対立して合意できないときは、子どもが希望する教育や医療、福祉が受けられなくなるかもしれないからです。医療関係者であれば、子どもが手術をする時に、双方の合意書を取らなければ子どもに手術ができなくなったり、合意がないままに手術をすれば訴訟を起こされる可能性も生じます。また、双方に親権があるということは、一方が合意し、一方があとで取り消す権利もあるということであり、例えば進学などで一方が合意し、一方がキャンセルすることも可能です。教育や医療、福祉の関係者はその狭間で調整することになるかもしれないのです。改正法案では監護者が日常の監護について決めることができるとしています。監護者を指定せずに監護の分掌、例えば教育のことは母、医療のことは父、などと決めることもできるようですが、それを決めるのも合意がなければ紛争となります。結局のところ、双方の合意がなければ子どもの進学や医療など生活全般に影響し、子どもの希望がふさがれることになるのです。
このようなことが子どもを第一に考える社会で行われて良いのでしょうか。
共同親権になると、実際に進学や医療面などでどのような問題が生じてくるのか(第一章金澄論文)、合意のないケースで家庭裁判所が共同親権を決定する問題(第二章第一節木村論文)、共同親権が導入されたあとの法的紛争の問題(第六章岡村論文)、共同親権になれば児童手当の支給などひとり親世帯への影響はどうなるのか(第四章大石論文)などの論考をお読みいただき、共同親権が子どもや同居親にどのような影響を及ぼすのか、ぜひ社会全体で考えてほしいと思っています。
また、共同親権運動の本質である父権運動のこと(第二章第二節太田論文)、DV加害者の心理や思考(第五章中川論文)もお読みいただき、共同親権運動の背景についてもぜひ知ってほしいと思います。
そして、第三章の手記を読み、共同親権に不安を持つ当事者の声を聞いてください。皆さんにも、この子どもたちや同居親の不安に寄り添い、支えになっていただきたいです。
民法改正は、高校生や大学生、これから結婚や出産を考える若者にも関係することです。本書を読み、自分たちの将来にも関わる大切な問題を考える議論の輪に加わってほしいと思います。
本書の著者らは、子どもたちが、自由に安心に学び、育ち、生きるように願っています。しかし、共同親権はその逆で子どもたちを縛る鎖となりえます。誰にとっても大切な問題であるにもかかわらず、また、反対意見にも耳を貸さず、異例のスピードで民法改正が押し通されようとしています。ぜひ本書から子どもたちや子どもを養育する同居親の不安の声を聞いていただき、共同親権の問題点を理解してくださると嬉しく思います。
子どもたちの自由で安心に生きる・育つ未来をみんなで創るために。
上記内容は本書刊行時のものです。