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外国人の子ども白書
権利・貧困・教育・文化・国籍と共生の視点から
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年4月
- 書店発売日
- 2017年4月10日
- 登録日
- 2017年4月4日
- 最終更新日
- 2017年4月4日
書評掲載情報
2017-06-03 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
現代日本における「外国につながる子ども」の現状と支援の課題が一冊でわかる画期的な白書。人権、福祉、教育、文化(言語)、家族、滞在条件などの観点から、外国人の子どもの現状を正確に把握、データおよび支援現場の報告からそのリアルな姿が見えてくる。
目次
外国人の子どもたちの現在――なぜ「外国人の子ども白書」なのか
第1章 外国人と外国につながる子どもたちのいま
01 外国人の子どもとは
02 外国人と外国につながる子どものいま――そのさまざまな姿
03 日本で生まれ育つ外国人の子どもたち
04 在日コリアンの子どもたち
05 中国人の子どもたち
06 ブラジル人の子どもたち
07 フィリピン人の子どもたち
08 インドシナ難民の子どもの過去・現在
09 難民の子どもへの支援
10 アメラジアンの現在
特別寄稿 日本における外国人――戦後史と現在
コラム 多文化社会の小さな種
第2章 子どもにとっての移動の経験
01 未知の地への突然の移動
02 日本語が全く分からない子どもがどう迎えられたか
03 異文化接触と自尊感情――少年期の危機をどう乗り越えるか
04 頻繁な移動が生む学習の不連続、アイデンティティの不安
コラム 生きるということ
第3章 家族生活のなかの子ども
01 出産、育児とその支援――乳児期の課題
02 乳幼児に関わる課題――保育所を中心として
03 移動、親の長時間就労と親子関係の変化
04 子どもの教育に親はどう関わるか
05 家庭における言語の選択
06 2つの言語習得における周囲の役割――「通訳する子ども」から考える(現場からのレポート)
07 発達障害のある子どもと家族
第4章 子どもの貧困と権利侵害
01 外国人の子どもの貧困
02 非正規滞在の子どもと社会保障制度
03 生活保護世帯と子ども
04 自立困難と貧困の継承――カンボジア難民の子どもたちの事例から
05 親による虐待、ネグレクト
06 外国籍ひとり親世帯と子ども
07 外国人の子どもの医療に関連した問題点
08 ヘイトスピーチと民族的マイノリティの子どもたち
第5章 教育と学校
01 教育を受ける権利と就学義務
02 就学前の子どもたちへの支援
03 日本の学校のなかで
04 「適応指導」とは――学校における教員の役割
05 日本語教育――社会参加のための「ことばの力」を育む
06 外国人の子どもに対する学習指導
07 学齢超過者への教育
08 多文化教育――外国につながる子どもの教育の枠組みづくりに向けて
09 民族教育の現在
10 義務教育以降の進路――進学の道をどう開くか
11 社会で「見えない」不就学の外国人の子どもたち
12 「外国学校」の現在
13 地域における多文化共生の試み――「外国人の居場所」を公的施設に創出する
コラム 私が学校をやめなかった理由
コラム アイデンティティに悩んだ昔とそれを乗り越えた今
第6章 人権保障と子ども
01 日本国憲法・国内法と外国人の子ども
02 少年審判における外国人の子どもの権利
03 子どもの権利条約と外国人の子どもの権利
04 国連・子どもの権利委員会の一般的意見と外国人の子ども
05 諸外国での外国人の子どもの権利保障――国連・子どもの権利委員会の報告書審査から
06 地方自治体における外国人の子どもの権利保障
第7章 子どもと国籍
01 国籍への権利とはなにか
02 子どもの国籍はどのように決まるか
03 国籍取得に関する婚外子差別とその是正
04 無国籍の子どもがなぜ生まれるのか
05 アンデレちゃん事件――提起された問題
06 国際結婚と子どもの国籍――重国籍の問題
07 出生地主義の導入でどう変わるか――フランスやドイツの場合と引き比べて
08 さまざまな立場にある子どもたちが平等に生きるために
第8章 子どもの在留資格
01 子どもの在留資格はどう決まるか――「扶養」と「従属」の親子関係
02 「家族滞在」の子どもたち――「依存」という拘束
03 連れ子としての子どもの権利と在留資格
04 中高生の在留資格と受験、アルバイト、就職
05 非正規滞在の子どもと人権
第9章 子ども支援の現場
01 いじめの克服における教育の対応
02 川崎市における外国につながる子どもの権利保障に向けた取組
03 児童福祉施設と外国人の子どもたち
04 必要な多文化ソーシャルワーク
05 DV被害の母と子ども
06 子どもたちの〈格差〉と生活支援――誰もが力いっぱい生きられるために
07 子ども医療互助会制度で子どもに安心の医療を
08 地域での支援・NPOによる居場所づくり
09 地域での支援――フィリピンコミュニティ支援
10 教育からのドロップアウトを日本社会からのドロップアウトにしないために
11 少年院における外国人処遇――外国人非行少年の改善更生と社会復帰支援
コラム 支援にとどまらず権利をあたりまえに
コラム 異質な者として日本を生きる
第10章 幼児の国際移動と子どもの権利
01 国際養子縁組と子どもの権利――「子どもの最善の利益」はどう考慮されているのか
02 国際養子縁組の行われる社会文化的背景
03 日本・アジアからの国際養子はいま
04 国際人身売買と子ども
05 国際的な子の奪取に関するハーグ条約と子どもの人権
資料
あとがき
編集後記
執筆者一覧
編者一覧
前書きなど
外国人の子どもたちの現在――なぜ「外国人の子ども白書」なのか
(…前略…)
『外国人の子ども白書』の困難と意義
「白書」と銘打つ以上、外国人の子どもの現状について資料やデータを的確に示すのは当然である。だが、外国人ならばともかく、その子どもに関してとなると、統計や調査のデータは限られている。可能なかぎり本文及び巻末資料で収集したデータを示すように試みだが、不十分であることは否めない。日本国籍の「外国につながる子ども」についてのデータとなると、その数の推定すら困難で、それ以上のデータの獲得はさらに困難だった。これは今後に残された課題である。
「子ども」とはどの年齢幅の者を指すのかと問う向きもあろう。子どもの権利条約では「18歳未満」という定義を与えているが、本書では、年齢は定めず未成年者という緩やかな共通理解に立ってきている。今日の日本で民法上はともかく、成年-未成年の境界は18~20歳で揺れているのが実際である。なお、国際的には「移民第二世代」という言葉がよく使われ、本書の執筆者でこのイメージに従っている者もいる。
外国人の子どもの現状、彼・彼女らの出会っている問題についての報告、分析、問題提起を目指し、多くの分野の専門家の知識提供、執筆を仰ぎ、73名という多数の、現状では可能な限り最適任の執筆者の協力を得て本書は成った。執筆者が共通に願いつつ筆をとったのは、「子どもたちが平等に、健やかに、学び、生きていけるために」ということだったと思う。あらためて『外国人の子ども白書』をつくることが、大きな仕事であることを痛感している。
上記内容は本書刊行時のものです。