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アイヌ語古語辞典
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年12月
- 書店発売日
- 2013年12月20日
- 登録日
- 2013年12月13日
- 最終更新日
- 2013年12月13日
紹介
蝦夷地が幕府直轄地となる以前に残された史料からアイヌ語古語を復元しようとする試み。古文献から古語を集め比較研究した「アイヌ語古語辞典」、地名から古語を考察する「アイヌ語地名史辞典」、18世紀以前の史料「『藻汐草』アイヌ語単語集」から成る。
目次
はじめに
本書の時代区分
第1部 アイヌ語古語辞典
第2部 アイヌ語地名史辞典
第3部 『藻汐草』アイヌ語単語集
第4部 アイヌ語古語・日本語索引
引用文献
おわりに
前書きなど
はじめに
近現代の日本……。国の定めた言葉を「国語」とし、全国の学校で、均一の規準のもとに教え、国民を作っていった。その結果、各地域の言葉(方言)は衰退し、アイヌ語という一つの民族の言葉が奪われようとしている。
一方、そういうことなど、つゆ考えず、北海道の雄大さに憧れて訪れる観光客が多い。
「今日、札幌に着いたので、小樽と函館に行き、明日は富良野に行こう」
このように、津軽海峡以南の都府県の感覚で、行程を組もうとする人がいる。
しかし、北海道の大地は、その感覚では計れないほど、大きい。九州7県の2倍、四国4県の4倍の大きさがある。チェコやポルトガル、オーストリアと、ほぼ同じ面積を持つ。
その北海道の地名は、北海道の歴史を如実に物語っている。
札幌、小樽、富良野という地名。これらはアイヌ語地名である。釧路、苫小牧、帯広、室蘭……、すべてアイヌ語地名である。
旭川、深川、滝川、砂川は日本語である。しかし、アイヌ語を和訳した地名である。函館は、15世紀に和人が侵出したときの館、北広島、伊達は近代に本州から移住し、「開拓」した人々の出身地や苗字を取ったものである。
北海道は、かつてアイヌの人たちだけの大地だった。
いや、千島列島も、サハリン南部も。遠い昔には、東北地方も。
そこには、当然、歴史があるし、その歴史には、有名な人物がいる。コシャマイン、シャクシャイン、ハウカセ、イコトイ等々。
この人たちは間違いなく、アイヌ語を日常会話に話していた。
あるいは、9世紀の秋田「エミシ」の戦いでは、「夷語」を話せる菅原春風を交渉に当たらせており、この「夷語」もアイヌ語であったかもしれない。
ところが、この人たちがどういう言葉を使っていたか、今まで関心を持たれたことがない。
アイヌの人たちは、今ではほとんどが日本国民にされている。しかし、かつてその居住地は日本でも、ロシアでもなく、はっきり言えば、独立した文化圏だった。
それが18世紀後半以来、日本、ロシア、中国が激しく領土争いをし、アイヌの居住圏を分割したのである。
それでは、アイヌの居住圏がいつから、国家の領域に入ったか。
そこでは、いくつかの段階を踏んでいる。
・1799年に「東蝦夷地」(ほぼ北海道太平洋海岸)を江戸幕府の直轄地にする。
・1854年に、日本とロシアがアイヌモシリを分割、領土を画定する。
・1869年に、日本政府が北海道開拓使を置き、北海道を名実ともに日本の一部とする。
このうち、本書では、1799年の幕府直轄以前に、残された史料から、アイヌ語の復元を試みた。いわば、アイヌがいかなる国にも所属しなかった時代の、アイヌ語を示そうと試みたことになる。
このことは、結果として、アイヌの人たちが、国家が侵入する前から居住していた先住民族であることを示す、何よりの証拠ともなるだろう。
本書は三十数年に及ぶ研究成果だが、もちろん、まだまだ、道半ばである。しかし、今まで誰も手を付けていないということで、まず公表することに意義があると考えた次第である。
この史料集成を読まれれば、気付かれると思うが、アイヌ語には共通語というものがない。すべて方言であり、その中でも共通の単語が多くあって、ゆるやかなまとまりを持っている。中央政府の存在しない民族の言語には、共通語を作る必要はないということは、あらためて実感したしだいである。
本書の構成は、4部に分かれている。
第1部 1799年以前のさまざまな単語帳から、古い時代のアイヌ語単語を示す(「アイヌ語古語辞典」)。
第2部 アイヌ語地名から、古い時代のアイヌ語を考察する(「アイヌ語地名史辞典」)。
第3部 18世紀以前でもっとも単語を多く掲載した史料『藻汐草』から、アイヌ語単語を示す(「『藻汐草』アイヌ語単語集」)。
第4部 第1部~第3部で知ることができた単語の、日本語索引。
上記内容は本書刊行時のものです。