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さぁアイヌ文化を学ぼう!
多文化教育としてのアイヌ文化学習
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2009年8月
- 書店発売日
- 2009年7月22日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
北海道千歳市立末広小学校が十数年にわたり実践しているアイヌ文化学習を、各学年の活動内容や子どもたちの様子を描きながら紹介。実践に携わる教師・講師等のコメントを載せ、後半ではアイヌ文化学習の現状と課題を整理する。
目次
はじめに(野本久栄)
第 I 部 実践集録「末広小のアイヌ文化学習」
イランカラプテ(平満允)
1.本物にふれるアイヌ文化学習(末広小学校研究部)
2.生活科・低学年「うたって、おどろう!」
1年生:ちとせ(千歳)の「ウポポ」「ホリッパ」
2年生:「子どものあそび」
3.総合・中学年「サケ漁と栽培」
3年生:「サケ漁」と「サケ料理」
4年生:「栽培」、「保存食」と「団子作り」
4.総合・高学年「道具を作ろう、歴史を知ろう」
5年生:「道具作り」
6年生:「歴史・民族楽器」
イヤイライケレ(七尾豊)
第 II部 実践集録「末広小のアイヌ文化学習」
イランカラプテ(平満允)
1.本物にふれるアイヌ文化学習(末広小学校研究部)
2.生活科・低学年「うたって、おどろう!」
1年生:ちとせ(千歳)の「ウポポ」「ホリッパ」
2年生:「子どものあそび」
3.総合・中学年「サケ漁と栽培」
3年生:「サケ漁」と「サケ料理」
4年生:「栽培」、「保存食」と「団子作り」
4.総合・高学年「道具を作ろう、歴史を知ろう」
5年生:「道具作り」
6年生:「歴史・民族楽器」
イヤイライケレ(七尾豊)
第III部 北海道内でのアイヌ文化学習(鈴木哲雄)
1.中本ムツ子さんの講演から
2.北海道内での実践の現状
(1)地域的な偏差
(2)清水敏行さんによる調査
3.札幌市教育委員会の取り組み
(1)アンケートと『指導資料』の作成
(2)実践例の提示
4.新たな方向へ
(1)白老町教育委員会による「教職員研修」
(2)財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構の活動
おわりに(末広小のアイヌ文化学習を支援する会)
付録 アイヌ文化学習のために
(1)文献・資料・ウェブサイト
(2)関係団体・資料館・博物館
第IV部 小学校でのおもな実践報告と多文化教育の可能性(鈴木哲雄)
1.実践の方向性をめぐって
(1)井上司編著『教育のなかのアイヌ民族』から
(2)本田優子さんによる批判的な検討
(3)平山裕人さんの研究
2.小学校での実践報告
(1)千葉誠治さんの実践
(2)末広小学校と二風谷小学校の実践
3.多文化教育としてのアイヌ文化学習
(1)J・A・バンクスによる「多文化教育」
(2)多文化教育の方法として
(3)「末広小のアイヌ文化学習」から
おわりに(末広小のアイヌ文化学習を支援する会)
付録 アイヌ文化学習のために
(1)文献・資料・ウェブサイト
(2)関係団体・資料館・博物館
前書きなど
はじめに(野本久栄:末広小のアイヌ文化学習を支援する会会長)
2008年6月に「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が国会で採択され、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」(以下、アイヌ政策懇)によって「これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組むため」の提言が準備されつつあります。そこでは、アイヌ民族教育やアイヌ理解を進めるための教育政策についても議論されているようです。
2008年10月15日には、アイヌ政策懇による北海道視察の一環として、北海道千歳市立末広小学校のアイヌ文化学習についての聞き取りが行われ、私自身も「末広小のアイヌ文化学習」についてお話ししたところでした。「末広小のアイヌ文化学習」が、アイヌ政策懇による提言にどのように活かされるのか、大いに期待しております。
さて私どもが、「末広小のアイヌ文化学習」をお手伝いするようになって、16年ほどになりました。佐々木博司先生や田中美穂先生たちの真摯で熱心な姿に信頼を寄せて、私どもも惜しまず協力することで立ちあげることができたものでした。立ちあがった「末広小のアイヌ文化学習」は早くから注目され、「アイヌ民族の文化を学ぶ――北海道千歳市立末広小学校の実践」(北海道教育社『季刊教育改革』4号、1999年)として紹介されたことをはじめとして、現在までことあるごとに新聞やテレビなどに取りあげられてきました。また、佐々木先生ご自身によっても「からだをとおして学び理解を深める」(『子どもと教育』1998年8月号、あゆみ出版)や「学社共同による学習教材・カリキュラム等の開発と活用」(『第22回北方民族文化シンポジウム報告書』2008年)などとして発表されております。また、これまで実践にあたってこられた先生方による教育関係団体での実践報告も数多く行われてきたと聞いております。
こうした中で、2008年3月に末広小の先生方が研究部を中心に「末広小のアイヌ文化学習」を今後も継続・発展させていくため、カラー版の実践集録『末広のアイヌ文化学習』(千歳市立末広小学校、2008年)を作成しました。しかし、内部資料として作成されたために60部ほどしか印刷されませんでした。この実践集録に注目されたのが、北海道教育大学の鈴木哲雄先生でした。鈴木先生は、2005年9月から「末広小のアイヌ文化学習」の授業観察を続けており、私ども協力者と「末広小のアイヌ文化学習を支援する会」を作り、実践集録にも寄稿されていました。鈴木先生は、この実践集録が内部資料だけで終わってしまうのはもったいないと考えられ、どうにか出版できないかと私どもと相談のうえで奔走されました。しかし、なかなか難しく、2009年度の財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構の出版助成を受けることでやっと出版にたどりついたのでした。
構成としては、末広小作成の実践集録だけでは書籍としての分量が足りませんので、実践集録分を第 I 部とし、第 II部には、立ちあげられた佐々木・田中両先生やゲストティーチャー(講師)の私、野本のほか、野本敏江・餌取弘明・高坂京子の各氏、現校長の藤・利博先生に原稿を寄せていただきました。そして、第III・IV部には、鈴木先生に「アイヌの歴史文化学習の課題と可能性」(『北海道教育大学紀要(教育科学編)』57巻2号、2007年)を大幅に書き直したものを、「末広小のアイヌ文化学習」の解説的なものとして書いていただきました。鈴木先生は、長くなりすぎたと悩んでおられましたが、北海道におけるアイヌ文化学習の現状について書かれた一般書はほとんどないこともあり、長さをいとわずに掲載することにいたしました。
本書が、北海道の、いや全国の教育関係者、アイヌ民族やアイヌの歴史文化に関心をもたれる方々にお読みいただくことができ、子どもたちが笑顔をもってアイヌ文化学習に元気に取り組む姿が北海道に行き渡り、さらに全国へと広がることに少しでも寄与できたなら、望外の幸いです
上記内容は本書刊行時のものです。