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美学の事典
- 初版年月日
- 2020年12月25日
- 書店発売日
- 2020年12月25日
- 登録日
- 2020年10月31日
- 最終更新日
- 2020年12月16日
紹介
「絵」「音楽」「映画」「写真」「文章」「風景」「所作」「心」――これらのものは全て「美しい」で修飾可能です。では一体、あらゆるものに向けられる人間の感性は、どのように動き、何に動かされてるのでしょうか。洞窟壁画からVRまで、「美しい」から「醜い」まで、人間の感性を概観し、新たな思索の入り口となるような大変ユニークな一冊です。
目次
第1章 美学理論
[編集担当:青木孝夫・小田部胤久・樋笠勝士]
美学――西洋近代の文脈における
美学――西洋古代・中世における
明治・大正期における日本の美学の受容と展開
中国の近代美学の形成
韓国の近代美学の形成
比較美学――唯一の美学から複数の美学,そしてグローバル美学へ
作品美学・受容美学
分析美学――20世紀後半からの新たな流れ
環境美学――自然や環境をそれ自体として観照することは可能か
雰囲気の美学――新現象学の挑戦
日常性の美学――日々の生活に認められ,実践される美とは
ジェンダーと美学
アイステーシス――美的なものの起源
身体美学――感性における身体の役割とは
生の美学
実験美学――下からの美学
神経美学
デザイン論の展開――芸術工学
芸術の誕生――西洋近代における
芸術・芸能――表の芸術と裏の芸能,近代日本の美的文化の二重構造
技と道――日本的な芸術観の創出とその背景
カノン(化)あるいは伝統と刷新――教科書に載る芸術はどうやって選ばれているのか
芸術の社会的機能――社会参加の美学
芸術の定義・芸術作品の存在論
ミューズ的芸術――時間的芸術とは何か
芸術の終焉
模倣と創造
詩学・弁論術(修辞学)――言葉のアートはどのような力をもつのか
芸術愛好家(ディレッタント)――近世、東西に登場した楽しみのために芸術を愛好する人々とは
批評・解釈の役割――作品の意味は作者の意図に還元されるのか
ナラトロジー(物語論)
メタファー・アレゴリー・象徴――意味の力とはどのようなものか
フィクション
アートワールド――芸術の定義との関わりで
隠者・文人――日本人が憧れてきた理想の生き方
美――「美とは何か」に対して美学史はどのように答えてきたのか
日本の文芸理論と美意識の展開
風流・いき――江戸の美意識
おぞましいもの――なぜそれは人を惹きつけるのか
カロカガティア――美と善が結びつくとき何がおこるのか
美の無関心性・美への関心
美的経験
感性(センス)
共通感覚
無感覚性(アネステシア)――感性のうちに潜む否定性
イメージ――「像」にどのような力があるのか
芸術と教養(自由学芸と六芸)
美的カテゴリー――美的特性論への展開と日常の美的カテゴリーへの展開
古代的美意識と芸能の展開――古代から中世へ
感性/趣味の共同体――基盤としての共通感覚・故郷・ノスタルジー
文化産業――それは芸術をいかに変質させたか
文化資本(無関心、卓越化、美的教育)――教養を身につけることの近代的意味と価値
文化ナショナリズムと芸術――欧化主義に対抗する自国・伝統の主張
ライフスタイル――自らを演じることの美学
コラム:美学と批評はどんな関係にあるのだろうか?
第2章 美術史
[編集担当:岡田温司・加須屋誠・加藤哲弘]
「名前のない美術史」――様式史とは何か
イコノロジー――絵の中に隠された象徴の解読
ニューアートヒストリーと、その後
イメージ人類学――開かれた美術史へ
エクフラシス――絵を言葉に置き換える
ジェンダーと美術史
絵の中の観者――絵画の受容美学
具象と抽象
物質性(メディウム/マチエール)
視覚性と触覚性──眼と手の絡み合い
異時同図法――時間の経過を絵で表すには
空間表現の多様性――三次元を二次元に置き換えるには
象徴としての色彩――色にも意味があるのか
素描(ディセーニョ)VS. 彩色(コロリート)
工房の親方としての芸術家
芸術家と「狂気」
パトロン――美術の支援者とその役割
パラゴーネ――諸芸術の比較論
マニエリスム――目くるめく技巧と幻想の世界
グロテスク――「美」術における「醜」の表現
感情表現――美術は「心」をどのように描いてきたのか
アカデミー――美術を教えることは可能か
古典主義――《ミロのヴィーナス》はなぜ「美しい」のか
風俗画――日常性を描くことの意味とは
「風景」の発見
オリエンタリズムと美術――西洋は東洋をどう見たのか
聖遺物と美術
偶像崇拝と偶像破壊――なぜ対立するのか
近代のデザインと建築
彫刻は本当に退屈なのか
庭園術――開かれと閉ざされの二重性
活人画(タブロー・ヴィヴァン)
版画と素描――写真以前のイメージ生産と流通
印象派と写真
自然科学と美術――サイエンスが見せるイメージの世界
美術市場――商品としての絵画
贋作と模写
保存と修復――時の流れに逆らって
目利きと鑑定
ミュージアム――その歴史と現在
装飾――周縁化された美
先史美術――初めにあるのはロゴスかイメージか
グローバル・アート・ヒストリー
中国絵画論――絵はいかにあるべきか
日本美術誕生――制度としての日本美術史
アジアの中の日本美術――日本文化は独創的か
王権と絵画――「美術」をめぐる権力構造
仏教美術――仏像は「美しい」か
六道絵――人はなぜ地獄の光景に心惹かれるのか
絵巻物――動く絵画の魅力
水墨画――破墨・潑墨・逸品画風・没骨
浮世絵――作者・版元・流通
戦争と絵画――ナショナリズムと美術
フランス近代美術を中心とする,西洋近代美術の日本での受容
コラム:美術史を知らないと美術は理解できないのか?
第3章 現代芸術
[編集担当:加須屋明子・室井尚]
芸術(アート)はどこに向かっていくのか
抽象表現主義とモダニズム批評――なぜ美術の中心が米国に移ったのか
戦後美術の展開――海外との関係
冷戦時代の芸術(アート)――旧東欧諸国の芸術状況はどうだったのか
具体――海外に発見された「具体」とは何だったのか
対抗文化
還元主義――美術はどこまで純粋になれるのか
ポップアート――これがどうして芸術(アート)なのか
フルクサス――なぜニューヨークに芸術家たちは集まったのか
発注芸術――芸術家が何もつくらなくても芸術(アート)なのか
環境芸術の展開――この場所(サイト)でしかできないことは何か
身体表現の革新
「芸術の死」以降の芸術(アート)――「現代美術」は終わったのか
野外美術の展開――美術館を出た美術はどこへ行くのか
技術革新と芸術(アート)
アートを支える人々――その役割の変化
展覧会から国際芸術祭へ――芸術祭の氾濫はなぜ起こったのか
ドキュメンテーションとアーカイブ――どうやって記録し,保存し,修復するのか
被災地支援と芸術(アート)――東日本大震災・福島原発事故は芸術をどのように変えたのか
芸術(アート)と検閲――芸術は何をやってもいいのか
アートプロジェクトの諸相
医療と芸術(アート)――生命観の変化に芸術はどう向き合ってきたのか
引用・盗用と芸術(アート)
批評は死んだのか――美学と芸術(アート)の乖離
アートフェアとマーケットの拡大
サウンドアート
アートパワー――芸術(アート)は社会の中でどのような力をもっているのか
ポストメディウム/ポストメディア――現代芸術の条件としての
地域の芸術祭――巡回する観客が体験しているものは何か
アジアの現代芸術の行方
オルタナティブスペース――美術館以外の展示空間はどうして広まったのか
戦後演劇の展開――新劇からアングラ・小劇場へ
政治と芸術(アート)の関わり
美術ジャーナリズムの役割
行政と美術――文化行政はどのように変わってきたのか
ジェンダー論と芸術(アート)
地域格差――地方と中央の文化格差は解消されたのか
アール・ブリュットとアウトサイダー・アート――どのように理解すべきなのか
建築と美術――展示空間の変容
建築美学――日本の建築家たちの戦後の戦い
芸術(アート)とポストモダニズム――範例としての『浜辺のアインシュタイン』
芸術(アート)とファッションの融合――これは衣服なのか,芸術なのか
芸術人類学から見た現代芸術
美術教育――何を教えるべきなのか
パフォーマンス――生身の体のある表現
映像の氾濫――静止画, 動画, デジタルデータ
脳の中の劇場
もの,こと,わけ――そこに「ある」作品と「おこる」作品
芸術(アート)とアマチュアリズム
現代芸術――グローバル化する世界の中で
コラム:現代アートに「イラだつ」人がいるのはなぜ?
第4章 音楽
[編集担当:渡辺裕]
音楽理論(古代から中世へ)――「耳に聞こえない音楽」とはどのようなものか
音楽理論(ルネサンスから近代へ)――科学と芸術はいかに袂を分かったのか
音楽理論(近代)――「音楽そのもの」の美学はどのように誕生したか
音楽理論(20世紀前半)――自律的美学の極致としてのエネルゲティカー
音楽理論(20世紀後半)――音楽研究の戦後体制は何をもたらしたのか
音楽理論(現代)――分析哲学の視点で音楽を解剖してみれば
音楽環境(貴族社会)――吟遊詩人・宮廷楽師・パトロン
音楽環境(市民社会)――コンサート・サロン・家庭
楽譜と音楽――音楽作品の商品化/物神化
レコードと音楽――音響再生産メディアと出会った作曲家たち
インターネットと音楽――デジタル配信は音楽を変えるのか
カノン形成――「音楽の国ドイツ」の国民的遺産はいかにつくり上げられたか
原典資料研究――「作曲家の最終的な意図」は存在するか
音楽修辞学からトポス論へ――無からでない創造の系譜
演奏研究――「演奏」はなぜ研究対象になってこなかったのか
ジェンダー論と音楽――差別と差異への眼差し
行為としての音楽――ミュージッキングと音楽の意味
複数形の音楽
イラン音楽――即興における書かれるものと書かれないもの
トルコ音楽――「国民音楽」をめぐる力学
東欧民俗音楽――世界音楽のもう一つの地下水脈
ポピュラー音楽――ポピュラー音楽はどのように研究されてきたか
「真正」なロック音楽は存在するのか
日本音楽の概念と歴史――「日本音楽」はいつから存在するのか
雅楽――「伝統音楽」は「保存」されるものか
演歌――演歌は「日本の心」なのか
サウンドスケープ
聴覚の考古学――レコードやラジオがもたらした感性の変容とは何だったのか
音の記録・保存・消費――「生録文化」とは何だったのか
聴覚文化と歴史研究――都市問題の歴史をサウンドスタディーズからみてみると
聴覚文化と視覚文化――映画の音をサウンドスタディーズからみてみると
コラム:ボーカロイドは「歌って」いるのだろうか?
第5章 映画
[編集担当:木村建哉]
古典的ハリウッド映画――20世紀の映像の基準か
スタジオシステム――黄金時代の映画はどのようにつくられたか
作家主義――映画は芸術か
ヌーヴェルヴァーグ――個人映画の先駆けか
3D映画――その過去・現在
商業映画と自主映画――映画製作・興行の現状と今後は
フィルムアーカイブ――なぜ残すことが重要なのか
ドキュメンタリー映画――映画の原点か, ネット映画の先駆か
実験映画――映画における前衛とは何か
映画と検閲・自主規制――映画はいかにして抑圧と闘ってきたのか
デジタル時代の映画鑑賞──映画館は存続するか
ニューヒストリシズム――映画史研究の新たな動向
VFX(視覚効果)――CGは映画をどう変えたか
モンタージュとフォトジェニー――映画の魅力の源泉はどこにあるのか
フェミニスト映画理論――映画をめぐる女性の抑圧
CGアニメーション――実写映画とアニメーションの境界とは
初期映画――映画の起源から映像の現在へ
映画と性的マイノリティ――多様なる映画を目指して
ブラックムービー――「人種的」マイノリティのエンパワーメント
認知主義映画理論――形而上学的映画理論は終わったか
映画祭――芸術としての映画と商品としての映画
映画とグローバリゼーション――映画における新たな勢力
コラム:映画はいまや誰にでも撮れるのだろうか?
第6章 写真・映像
[編集担当:前川修]
写真の起源――そもそもいつからあるのか
写真と記録――写真は現実を写すのだろうか
写真と芸術――写真はいかにアートを目指したのか
写真と現代美術――アートはいかに写真に回帰したのか
写真と所有――イメージは誰のものなのか
写真と複製――コピーにすぎないものがなぜ力をもつのか
写真と静止/運動
写真の流通――イメージはどのように受容されているのか
写真の記号論
ヴァナキュラー写真
デジタル写真――それは写真なのか
映像の起源――映像はいつからあるのか
映像と運動――なぜ動いて見えるのか
映像と現実
映像と身体――なぜひとは映像にはまるのか
実験アニメーション
映像とスクリーン
コラム:写真を使う「美術家」と「写真家」とはどこが違う?
第7章 ポピュラーカルチャー
[編集担当:吉田寛]
ポピュラーカルチャーと美学
遊びとゲーム――新たな物語メディアの出現
アニメーションとアニメ――その違いは何か
マンガ――描かれた身体と読者とのコミュニケーション
ファッション――衣服と身体
ライトノベル(キャラクター小説)――文学から退行する文学
キャラクター――その存在,表象,鑑賞
同人文化――表現する人々の可能性と課題
ポルノグラフィ――猥褻性・検閲・パターナリズム
アイドル――ジャンルとしての位置,鑑賞の範囲
スポーツ――美的カウンターカルチャー
記号消費としての食──ファーストフードからご当地グルメまで
コラム:「ポップ」ってどういう意味なのだろうか?
第8章 社会と美学
[編集担当:津上英輔]
健康と美学――美は健康の表現である
社交性と美学――人と人の交わりをあじわう
子育てと美学
消費と美学――人は感性的満足を求めて事物を消費する
食と美学――味覚の芸術は可能か
掃除と美学――生の技術の美学的検討
「書く」ことの美学――美しい文字とは何か
アーカイブと美学――集める/集まることと感性でとらえること
経営学からみたアートの新展開――プロデュースとマネジメントによる感動創造
感性工学と美学――工業デザインと美の追究
科学と美学――生物と生命の科学から考える美学の社会的役割
政治と美学
共同体と美学――論理と心情のあいだ
交通と美学――移動手段ごとに異なる都市の相貌
観光と美学――人は何を求めて旅をするのか
地域おこしと美学――奥能登国際芸術祭の場合
森と美学――林学における美の問題
平和と美学――美と芸術は戦争に加担するのか
信仰と美学
災害と美学――大災害は人の感性に何をもたらすのか
マイノリティと芸術――芸術と社会的包摂
障害者のための美術――多様性という幻想
芸術行為と犯罪行為――偽千円札事件の場合
「かっこいい」の美学――感性は世につれ、世は感性につれ
「かわいい」の美学――美はヤワコいか
コラム:美学は人を幸福にするのだろうか?
付録
[編集担当:吉岡洋]
(1)研究手法
美学会,その他関連する学会について
美学のための外国語学習
美学の論文を書くには?
美学や芸術研究の本はどう読むべきか
美学はどこで研究できるか?
(2)トピック
ネアンデルタール人は絵を描いたのだろうか?
「芸術」としての先端テクノロジー
「動物倫理」があるなら「動物美学」もある?
人工知能(AI)に芸術は可能だろうか?
「感性」は至るところで働いている
見出し語五十音索引
和文参考・引用文献
欧文参考・引用文献
事項索引
人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。