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ANA857便を奪還せよ 相原 秀起(著) - 柏艪舎
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ANA857便を奪還せよ (エーエヌエーハチゴーナナビンヲダッカンセヨ) 函館空港ハイジャック事件15時間の攻防 (ハコダテクウコウハイジャックジケンジュウゴジカンノコウボウ)

社会一般
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発行:柏艪舎
発売:星雲社
四六判
242ページ
並製
定価 1,600円+税
ISBN
978-4-434-25715-5   COPY
ISBN 13
9784434257155   COPY
ISBN 10h
4-434-25715-3   COPY
ISBN 10
4434257153   COPY
出版者記号
434   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2019年1月23日
最終更新日
2020年1月21日
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書評掲載情報

2019-03-30 月刊エアライン    2019年5月号
2019-02-14 北海道新聞    夕刊  函館版
2019-02-10 北海道新聞  
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重版情報

2刷 出来予定日: 2019-03-20
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2019年3月19日(火)NHK「アナザーストーリーズ」で特集放送が決定!全国から注文が殺到しています!

紹介

オウムによる地下鉄サリン事件から3ヶ月後、
全日空857便のハイジャック犯は、「尊師のために」と口にした。
乗客乗員360名の命を救うため、男達は死力を尽くす。
1995年6月21日正午、羽田発函館行のANA857便が離陸直後にハイジャックされた。犯人はオウム真理教の信者と見られ、毒ガスのサリンを持っていると脅した。
警視庁の特殊部隊も投入され、事件解決へ向けて、極限まで緊迫する対策チーム。
ハイジャックされた機内への強行突入という、日本警察史上唯一の事例である本事件は、以後の「危機管理」に重大な示唆を投げかけることとなった。
四半世紀の時を経て、平成の事件史に残る“函館空港ハイジャック事件”の全貌を明らかにする。

目次

プロローグ
1 事件発生
2 衝撃
3 前哨戦
4 バブル
5 膠着
6 携帯電話
7 SAT初陣
8 報道自粛
9 御前会議
10 最終準備
11 カウントダウン
 エピローグ
 おわりに
 参考資料

前書きなど

おわりに


事件はその時代を映し出すとされる。
昭和史を代表する事件である三億円事件や連合赤軍事件、グリコ・森永事件などを見ても、それぞれの事件は当時の時代背景や社会のゆがみを反映している。
二〇一九年四月で終わる平成の三十年間を振り返ったとき、代表的な事件としてオウム真理教による坂本堤弁護士一家殺害事件や松本サリン事件、地下鉄サリン事件など一連の事件が挙げられるだろう。
そして、この本の主題となった函館空港全日空機ハイジャック事件も平成という時代を映し出していると筆者は思う。
犯人は、バブルの時代を謳歌し、転落した一人のエリート銀行マン。凶器といえるものは先の尖ったドライバー一本だけで、サリンが入っていると装った保冷袋の中身は実は水であり、プラスチック爆弾は粘土に布テープを巻いたものだった。身勝手なこの男はオウム真理教の教祖麻原彰晃を道連れに自分の最期を飾ろうと全日空機を乗っ取ったのである。
客室乗務員は「すべては尊師のためだ」という言葉にオウム真理教信者による犯行で、保冷袋の中身はサリンであると思い込んでしまう。当時を知らない若い世代は不思議に思うかもしれない。しかし、事件が起きたのは、数多くの市民が犠牲になった地下鉄サリン事件からわずか三カ月後のことだった。この年の一月には阪神淡路大震災が起き、地下鉄サリン事件直後には警察組織のトップである国松孝次警察庁長官が狙撃されるという前代未聞の事件も発生した。犯人が利用したのは、暗澹たる時代に日本人の心に渦巻いていたオウム真理教やテロに対する恐怖心だった。
事件は、発生から十五時間後、道警と警視庁の対テロ特殊部隊SAT共同の突入作戦によってドラマチックな幕切れを迎える。日本の警察史上初となるハイジャック機への突入作戦であり、以降も旅客機への強行突入の事例はない。
事件当時、サハリンに駐在していた筆者は、函館空港にハイジャックされた全日空機が着陸し、犯人が麻原彰晃の釈放を要求していると聞いた時の衝撃を覚えている。同時に現地で取材に加わりたいと思った。一九八五年(昭和六十年)に北海道新聞社に入社した筆者は、紙面の見出しやレイアウトを担当する整理部を経て、社会部の警察担当いわゆるサツ回りとして札幌市内署や道警本部で四年間を過ごした。数々の殺人事件や贈収賄事件、十勝岳噴火などの災害取材も経験した。そうした現場で育ったサツ記者の血が騒いだのである。
事件から四年後、筆者は社会部道警キャップになった。その時点で、道警本部には事件に関わっていた捜査幹部や捜査員が数多くおり、夜回りや居酒屋の片隅で、当時の思い出話をしてくれた。その表情は誇らしげだった。現場にいた人間しか知らない、想像をはるかに超えた話に筆者の心は躍った。
関係者を再度取材して、この事件を書き残したいという願望がふと芽生えた。二〇〇一年からは事件現場である函館報道部勤務となり、取材範囲は函館空港の関係者や函館市役所、函館市消防本部のほか、乗客、民間航空会社の整備士に広がり、東京や新潟県にも出張した。
事件から八年後の二〇〇三年、一連の取材をまとめて、北海道新聞函館地方版で企画「全日空ハイジャック 8年後の真実」(全十五回連載)を高橋睦、戸田一光両記者と執筆した。両記者の取材メモを含め長時間を掛けて得られた数多くの証言に加えて、当時の新聞記事や裁判記録、現場写真なども入手、事件発生から逮捕までの十五時間におよぶ攻防に迫ったのが本書である。
振り返ると、この事件によって「危機管理」という言葉が改めてクローズアップされた。警察の内部的にはSATが極秘のベールを外し、翌年には道警や千葉、神奈川、愛知、福岡の各県警にも配置されて、既存の警視庁、大阪府警の部隊と合わせて、警察庁はその存在を公式に認めた。警察庁はSATを公にすることで、テロ事件の抑止効果を狙ったのである。
一方で旅客機の防犯対策はなかなか進まなかった。事件の教訓として道警が導入を求めた防犯カメラの機内設置が一部で始まったのは、二〇〇一年の米国同時多発テロの後だった。ドライバーなど小型工具類の機内持ち込みが禁止になったのも、一九九九年に機長が刺殺された東京都上空での全日空機ハイジャック事件以降という。
「函館の事件があまりに完璧な終わり方をしたために、教訓とはならなかった」とある道警幹部は嘆いたが、筆者はある意味これも日本社会らしいと思った。原発事故や相次ぐ企業の不祥事などを見ても、日本で教訓に成り得るのは成功例ではなく、失敗例だけがその対象となることが多い。もし、本書を読んで何らかの教訓を読み解いていただけるのならば幸いである。
なお、本文中の無線の会話などで不自然な言い回しと感じられる箇所があるかもしれないが、これは当時の会話メモなどを出来るだけ忠実に引用しているためであり、実際に交わされた言葉そのままである。
取材に当たり、伊達興治・元道警本部長のほか、佐藤直義氏や川尻正和氏ら数多くの道警の元捜査幹部や捜査員、機動隊員や乗客の方々にインタビューさせていただいた。函館空港ビルデングや函館市役所、函館市消防本部、越山明裕氏や玉木健氏ら北海道新聞社の先輩や同僚にも協力してもらった。また、一部の写真は北海道新聞社から提供していただいた。出版に関して多大なご支援と的確な助言をしてくださった柏艪舎の山本光伸代表、編集担当の山本哲平氏にも心からお礼を言いたい。

 平成三十年十二月吉日
               相原秀起

版元から一言

NHK「アナザーストーリーズ」で3月19日(火)特集放送決定!
書籍イメージとともに、番組の大半に著者も出演します!

放送予定:
2019年3月19日(火)夜9時~
「決断 史上初の強行突入―全日空857便ハイジャック事件」

著者プロフィール

相原 秀起  (アイハラ ヒデキ)  (

相原 秀起(あいはら ひでき)
1962年、横浜市に生まれる。北海道大学農学部卒。在学中は探検部に所属。1985年、北海道新聞社入社。87年から社会部で警察担当、道警キャップなどを経て函館支社報道部勤務。2016年からは同支社報道部長。現在は道新ぶんぶんクラブ事務局長。
著作に「ロシア極東 秘境を歩く―北千島・サハリン・オホーツク」(北海道大学出版会)、「一九四五 占守島の真実―少年戦車兵が見た最後の戦場」(PHP研究所)、極東DVDシリーズ「北緯50度線を行く サハリン・北千島のいま」(3部作、風交舎・北海道新聞社)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。