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出版者情報
丹波哲郎 見事な生涯
- 書店発売日
- 2024年4月25日
- 登録日
- 2024年3月15日
- 最終更新日
- 2024年12月27日
書評掲載情報
2024-09-07 |
朝日新聞
朝刊 評者: 椹木野衣(多摩美術大学教授・美術評論家) |
2024-07-06 |
東京新聞/中日新聞
朝刊 評者: 高橋秀実(ノンフィクション作家) |
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紹介
「人間、死ぬとなぁ、魂がぐぅーっと浮き上がっていくんだよ。それで、どんどんどんどん上昇していく。ところが、天井でぶつかって、一度反転するんだ。すると、ベッドの上には自分の骸(むくろ)がある」
「やがて、かなたに小さな光が見えてくる。その光に向かって、どんどんどんどん走っていく。どんどんどんどん走っていく。でも、息切れしないんだ。なぜか? ……死んでるから」
大俳優・丹波哲郎は「霊界の宣伝マン」を自称し、映画撮影の合間には、西田敏行ら共演者をつかまえて「あの世」について語りつづけた。中年期以降、霊界研究に入れ込み、ついに『大霊界』という映画を制作するほど「死後の世界」に没頭した。
「死ぬってのはなぁ、隣町に引っ越していくようなことなんだ。死ぬことをいつも考えていないと、人間、ちゃんとした仕事はできないぞ。おまえも、いつでも死ぬ覚悟、死ぬ準備をしといたほうが、自分も楽だろう」――
丹波は1922年(大正11年)、都内の資産家の家に生まれ、中央大学に進んだ。同世代の多くが戦地に送られ、生死の極限に立たされているとき、奇跡的に前線への出征を逃れ、内地で終戦を迎える。
その理由は、激しい吃音だった。
終戦後、俳優を志した丹波は、舞台俳優を経て映画デビューし、さらに鬼才・深作欣二らと組んでテレビドラマに進出して大成功を収めた。
高度成長期の東京をジェームス・ボンドが縦横に駆け抜ける1967年の映画『007は二度死ぬ』で日本の秘密組織トップ「タイガー・タナカ」を演じ、「日本を代表する国際俳優」と目されるようになる。
テレビドラマ「キイハンター」、「Gメン’75」で土曜午後9時の「顔」となり、抜群の存在感で「太陽にほえろ!」の石原裕次郎のライバルと目された。
『日本沈没』『砂の器』『八甲田山』『人間革命』など大作映画にも主役級として次々出演し、出演者リストの最後に名前が登場する「留めのスター」と言われた。
その丹波が、なぜそれほど霊界と死後の世界に夢中になったのか。
数々の名作ノンフィクションを発表してきた筆者が、5年以上に及ぶ取材をかけてその秘密に挑む。
丹波哲郎が抱えた、誰にも言えない「闇」とはなんだったのか。
若かりし頃に書かれた熱烈な手紙の数々。
そして、終生背負った「原罪」――。
「死は待ち遠しい」と言いつづけ、「霊界」「あの世」の素晴らしさを説きつづけた大俳優の到達した境地を解き明かすことで、生きること、そして人生を閉じることについて洞察する、最上の評伝文学。
目次
プロローグ
魂は生きつづける
二人の名優
「子どもの心」を持った人
第一章 坊や猿
ツツジ御殿の一族
盗み食いの代償
第二章 第三の男
天の配慮
貞と貞子
満たされぬ魂
オレも役者なんだよ
第三章 救いの神
テレビの時代
ルーズベルトの病
動かぬ足
徹マンの理由
第四章 007
捕虜と軍刀
タイガー・タナカ
国辱映画
三船敏郎の忠告
国際スター誕生
第五章 智恵子抄
病身の妻
志麻子にかけた催眠術
「智恵子抄」から「貞子抄」へ
第六章 ボスとファミリー
伝説のテレビドラマ
陽子にはナイショだぞ
声を鍛えろ
“勝ち逃げ”の深作
最高の褒め言葉
「TBSの天皇」と呼ばれた男
天性のリーダー
第七章 人間革命
映画界の三大ホラ吹き
来るものは拒まず
日本で一番いい役者は
人間、死んだらどうなるか
オレは演技に開眼した
降霊会の超常現象
「人間革命」から学んだこと
第八章 留めのスター
運命の出会い
森田健作の確信
「自分のセリフに感動しちゃって」
芝居は顔じゃないんだよ
『八甲田山』のふんどし男
第九章 宿命の少女
尻に刻まれた「怨」の字
密教の秘儀
一億二千万円をつぎ込み
今生のカルマ
たらちねの母
第十章 死は「永遠の生」である
母の死でわかったこと
守護霊様のお導き
芸能界のパパとママ
スターの中のスター
第十一章 大霊界
明るく、素直に、あたたかく
素晴らしき永遠の世界
天国の入り口を見つけた
左の胸にしこりが
二十九歳の新人プロデューサー
谷底から霊界へ
さんまのまんまに登場
第十二章 不倫と純愛
E子さんと隠し子
十六歳の出会い
クルマひとつで家を出るから
情熱の手紙
狂気が全てを解決する
もうひとりの息子
第十三章 死んだら驚いた
童女天使
ポーに捧げる舞台
大槻教授と宜保愛子
オレが来たから、もう大丈夫
見えないものが見える
オーラの泉
第十四章 天国の駅
正月のハワイ旅行
五十年目の別れ
散骨の海
死は待ち遠しい
冥土の土産に
最後の芝居
あの世を見てきた
穏やかな旅立ち
エピローグ
草刈正雄から堺雅人へ
食わず嫌いをしない人
「いずれわかるよ」
ジキルとハイド
上記内容は本書刊行時のものです。