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出版者情報
目に見えない戦争 デジタル化に脅かされる世界の安全と安定
- 書店発売日
- 2022年7月14日
- 登録日
- 2022年5月24日
- 最終更新日
- 2024年1月9日
書評掲載情報
2022-09-17 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
本書は、ビッグデータの専門家としてさまざまなメディアで活躍する著者の話題作です。
現代の戦争は、実際の兵器を用いた侵攻も含め、すべて「目に見えない戦争(インヴィジブル・ウォー)」である――これが本書で明らかにされる事実です。その実態が多くの具体的な事例や事件を題材にして語られます。
まずは、デジタル空間における国家の諜報・妨害活動。活動家、テロリスト、ハッカーなど、表面的には国家の委託を受けていない個人によるサイバー攻撃は、国際法上の「戦争」の資格を満たしていません。しかし、今や他国に対する攻撃の要は、相手国の国民の自国政府に対する信頼を切り崩すことにあります。その典型例が2016年のアメリカ大統領選におけるロシアの介入であり、2022年のウクライナ侵攻でも同じ手法が用いられているはずです。こうした情報空間の分断とデマゴギーがもたらす効果は何でしょうか。
続いて取り上げられるのは、自律型致死兵器システム。人の手を交えずに人命を奪う危険な新兵器です。ドローン兵器やキラーロボットなど、現在の戦場における主力兵器のそばに人間の姿はありません。しかし、その使用に規制をかける動きは鈍く、これらの兵器に対抗できる手段を開発するしかないのが実情です。その手段が攻撃してくる相手に対する「逆ハッキング(ハックバック)」ですが、その開発は国家ではなく民間企業によって行われています。
「目に見えない戦争」が一方の西側諸国、他方の中国とロシアという対立の中で進行していることに異論はないでしょう。両陣営は異なる戦略をとり、西側諸国は経済的競争力を高めることを、中国とロシアは経済的な価値のある資源を政治的・軍事的に管理することを目指しています。二つの体制の対立に直面する今、ヨーロッパは、そしてアジア諸国はどうすればよいのか? この喫緊の問いに答えるための材料を本書は惜しみなく与えてくれるでしょう。
【本書の内容】
[1]兵器としてのコード
[2]情報戦
[3]人工知能軍拡競争
[4]ハックバック
[5]主導権をめぐる戦い
[6]「条件つき防衛態勢」
目次
[はじめに]平穏のさなかで
[1]兵器としてのコード
セキュリティホール/権力へと続く二つの道/平和という義務/国家と権力/世界秩序の非対称性/手を下さないために―─代替物を求めて/環境知能という戦場/ハイブリッドな戦争ゲーム/標的になった大統領選挙予備選/証拠不十分につき/データ泥棒/ライフラインの危機/ハイブリッド攻撃の照準
[2]情報戦
変わってしまったいっさいと「新しい普通」/民主主義の顔をした資本主義/不信感の種は社会変動に実る/嘘から出た成功/物語性の政界進出/メディア露出の値段/ネット検閲/煽情と反射のゲーム/ツイッター戦士/やわらかい隔離部屋/意見の塊/不安の波/大衆を信頼する大衆/真実とおとぎ話の狭間で/啓蒙の終焉/挑発と過激主義/それから?――メディア操作以降
[3]人工知能軍拡競争
兵隊のいない戦争/ドローン攻撃/認識する機械/キラーロボットを阻止せよ/自動と自律/国際人道法との調和において/極秘電子戦/電磁スペクトルというアキレス腱/電子対抗手段/人工知能とネットワークセキュリティ
[4]ハックバック
不完全な国際法という抜け道/戦争のための法─暴力の禁止について/サイバー攻撃と物理的効果/犯人捜し
[5]主導権をめぐる戦い
アメリカと利益の論理/中国、もう一つのシステム─―レントの論理/プーチンと偉大なロシアの再建―─Make Russia great again/中国の夢/戦場におけるシンギュラリティ
[6]「条件つき防衛態勢」
前線にて/あてのない旅路/確固たる民主主義政治への勇気/覇権の条件/ヨーロッパの平和と安全を守るテクノロジー/魅力の理由、革新性
[おわりに]求めるものと現実が合致する時
上記内容は本書刊行時のものです。