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あしたの風景を探しに
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年8月30日
- 書店発売日
- 2024年8月30日
- 登録日
- 2024年6月20日
- 最終更新日
- 2024年10月16日
書評掲載情報
2024-10-01 | 新建築 10月号 |
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紹介
【NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」出演!(2024.7.5) 】
建築設計を軸にリノベーションやまちづくり、
公共空間の再生を牽引してきた建築家・馬場正尊によるアイデアを生む論考集。
どんな風景のなかに
生きていたいのか
リノベーション・ムーブメントを牽引した
「東京R不動産」の立ち上げをはじめ、
新領域への越境をつづけてきた“風景の建築家”は
今日も世界を右往左往!?
仕事と生き方をめぐる思考と記憶の雑想記。
「次の時代の都市が、風景が、なにを欲しているか。
それを探すために、また旅をし、言葉を紡ぎ、建築をつくる。
それを繰り返してきたし、これからもつづけるのだろう」(本文より)
「先が見えない」を愉しみたいすべての人へ
これからの働き方、生き方を導く1冊。
目次
🔳マイクロメディア
・旅からはじまる建築
・マイ・メディア
・言葉を探しに/僕のインタビュー論
・エディティング
・サブカルチャーと建築
・取材は魔法の絨毯
・『A』
・欠落が新しい能力をひらく
・秋葉原的言語感覚
・壁面の衝撃/大友克洋GENGA展
🔳リノベーション
・R-project
・『R the Transformers 都市をリサイクル』
・リノベーション
・東京R不動産
・フリークス/Freaks
・toolbox
・ポテンシャル・ビル
・Open Architecture
・点から面へ、建築から都市へ
・団地再生
・副大臣に直訴
・団地に住もう!
🔳エリアリノベーション
・CET(Central East Tokyo)
・合法的スクウォッティング
・アバンギャルドは東に向かう?
・エリアリノベーション
・街並みを維持する祭り
・水街東京
・佐賀市柳町歴史地区の再生
・TRAVIS/トラヴィス
・故郷の未来のジレンマ
🔳新しい郊外
・小さな農家
・新しい郊外
・言葉からはじまる設計
・東京郊外の未来を描く
・新しいふるさと
🔳パブリック
・空間を変えると、社会が変わる
・『PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくり方』
・サイレントマジョリティ
・公共R不動産
・時間と制度の隙間に浮かぶ船上バーの夜
・佐賀「勝手にプレゼンFES」
・PUBLICWARE /パブリックウェア
🔳工作的建築
・クライフ世代の建築とデザイン
・泊まれる公園「INN THE PARK」
・仮説的ランドスケープ
・ 「 LIVE +RALLY PARK.」
・テンポラリーアーキテクチャー/Temporally Architecture
・トライアルサウンディング
・平成という経済秩序の建築
・清家清インタビュー回想
・THROWBACK /スローバック
🔳PLAY
・Run into the open space!
・WORKからPLAYへ
・オフィス空間再編
・「建築」と「物件」
・リビングルームのようなオフィス
・REWORK/リワーク
・サッカーをアナロジーに建築を考える
・Under Construction
・Traveling Life
🔳パークナイズ
・ロンドン郊外の田園都市
・ありえたかもしれない、しかし失われた風景
・多様性が共存する新しい風景
・記憶の底にある風景の旅
・鳩の到来は引っ越しの兆し
・パークナイズ/公園化する都市
・屋根のある公園に見立てた「iti SETOUCHI」
🔳クリエイティブローカル
・あしたどんな風景のなかに生きていたいのか
・アルベルゴ・ディフーゾ
・イタリアにおける価値観の逆転
・旧東ドイツ、所有と共有のバランスを模索した空間
・デトロイト、街をつくる主役の交代
・プロセスこそが美しいアラヴェナの建築
・衰退の先の風景
・陶磁器文化の身体化
・故郷の夏、抽象的な時間
・ウォーターハウスホテル
🔳ポスト・ビルディング
・不確定な時代のなかの建築家たちの試行錯誤
・雲のような建築への希求
・ポスト・ビルディング
・ポスト・シティと宮崎駿
・妄想病棟
・カプセルホテル・ワンダーランド
・ウズベキスタン
前書きなど
いままでなんのために仕事してきたんだろう、と振り返ると僕の場合、建築のためというより、なにか新しい風景を見たいがためにいろいろやってきた、 という気がする。もちろんそれが建築という手段のときもあるけれど、ときには「東京R不動産」だったり、「エリアリノベーション」だったり、「本を書く こと」だったりする。やけにバラバラしている印象があるけど、それらをまと めて俯瞰して見たとき「まだ見ぬ風景を見たいがためにやってきたことなんだな」と思うと妙に納得がいく。
その活動はとりもなおさず僕の事務所の名前である「Open A =オープンアー キテクチャー=建築をひらいていこう」という姿勢であり表現でもある。 この本はその試行錯誤、建築をひらこう、新しいなにかを見つけていこう、というプロセスの塊みたいなもの。僕の活動の 年が詰まっている。ときには思考と妄想の断片であり、ときには仕事の記録の一端であり、一風変わった用語集のようでもあり、たわいのない紀行文や都市観察日記でもある。もちろん建築やリノベーションやまちづくりの参考書としても読めるだろうけど、なにか新しいことをはじめたい人を勇気づけるような仕事論として読んでもらえたら、とも願っている。
僕は建築家だけどまとまりも一貫性もなくて、作家性にもこだわりがない。建築とは全然違うこともやってきたし、いまも日々ますます広がっている。けれどそれは「自分の仕事の領域の境界線は自分で引いていこうよ」というメッセージであると前向きに捉えてもらえたら嬉しい。いろんなトライアンドエラーをやりすぎじゃない? みたいな部分は「道をいろいろ踏み外しながら前に進んでいこうよ」というポジティブな姿勢のあらわれであると見てもらえたらありがたい。
新しい風景を見たいのは、なにも建築家だけじゃない。なにかにチャレンジしたりもがいたりしているすべての人が、きっと望んでいる。そういうみんなに楽しんで読んでもらえたり、少しでも役立ったり、勇気づけるものであったりしてくれたら、長年にわたって書き散らされてきたこれらのテキストたちも、きっと成仏してくれるんじゃないだろうか。どうかそうであってほしい、と心から願っている。
版元から一言
いまでは「建築家」という言葉一つではもはや収まりきらないほど多様な仕事ぶりを僕らに見せている馬場正尊という建築家は、いったいどのように形成されたのだろうか。大学を出たばかりでまだ何者でもなかったはずの1994年ころから現在のような型にハマらない建築家へと変貌を遂げるまでの 年ほどの歳月に、いったいなにを実践し、考えてきたのだろうか。馬場本人による 著作等はもちろん他メディアに掲載されてきたさまざまなテキストやインタ ビュー記事などからその姿を追いかけてみると、「この人、マジか......」というツッコミが口からポロポロと自然にこぼれ落ちてきてしまう。
早稲田大学大学院建築学科修士課程を修了して踏み出したキャリアの一歩目は、なぜか広告代理店博報堂のサラリーマン。数年後にそこを離れると真逆のベクトルへ切り返し、小さなメディアの制作へ向かう。建築&サブカルというまだ誰も足を踏み入れていない分野の雑誌『A』の創刊・編集。アメリカにおける既存建築物のコンバージョン事例を収集・リサーチするという画期的なレポート本『R the Transformers』(R-book 製作委員会)の執筆・編集。ちょっと変わった物件の魅力を掘り起こすWebメディア『東京R不動産』の運営。 どれもが誰も見たことのないエッジの効いた仕事であり、馬場によってはじめ て切り拓かれた領域と言ってよいだろう。しかも編集経験もなく編集長となり、 大御所建築家や巨匠映画監督の懐に飛び込んでインタビューを実現させ、確かなアテもないのにアメリカに取材に飛び立ち、個人的趣味のような都市観察日記を人気不動産サイトへと昇華させてしまう。その、わからなくてもとりあえずやっちゃえ、泳ぎを覚えるよりまず先に海に飛び込んじゃえという方法論に、ハタで見ていたならこちらがハラハラしそうだが、結果として、飛び込んだことによって切り拓かれた新たなフィールドで次なる課題やテーマを見つけつつ、馬場はさらに先へとぐんぐん泳いでゆく。
那須ミノル
付記:試行錯誤が止まらない。
―メディアのなかの馬場正尊を読み解く―より一部抜粋
上記内容は本書刊行時のものです。