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南島ボートピープル 奄美近現代ー出稼ぎ・移民考 原井 一郎(著/文) - 海風社
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南島ボートピープル 奄美近現代ー出稼ぎ・移民考 (ナントウボートピープル) 巻次:100

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発行:海風社
A5判
320ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-87616-069-3   COPY
ISBN 13
9784876160693   COPY
ISBN 10h
4-87616-069-4   COPY
ISBN 10
4876160694   COPY
出版者記号
87616   COPY
Cコード
C0300  
0:一般 3:全集・双書 00:総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年8月31日
書店発売日
登録日
2024年8月4日
最終更新日
2024年8月13日
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書評掲載情報

2024-12-08 琉球新報  
評者: 笹本正治(長野県立歴史館特別館長)
2024-10-25 週刊読書人    2024年10月25日号
評者: 斉藤日出治
2024-10-19 西日本新聞  
2024-09-02 南海日日新聞  
2024-09-02 南海日日新聞
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紹介

歴史資料から抜け落ちた約1世紀に及んだ南島民の流民史を膨大な資料・参考文献の詳細な読み込みと当時を知る人たちへの丁寧な取材によって解き明かした渾身の記録文学の誕生。
大都市出稼ぎ・海外移民で、島民は資本による搾取と、都市生活における迫害・排斥に晒されながら生き抜き、今日に至っている。
「偏見」「差別」がどのように生まれ、なぜ宿痾のようにつきまとったか、同時にそうした苦悩を負わせた責任を過去のものとせず、現代に問い直し、同様な今日の外国人労働者差別、新たに創生される弱者・貧困問題についても俎上に載せている。

目次

はじめに
長々しいプロローグ ―「孤独死」と我が小史 ―
 ある出稼ぎ者の孤独死 ― はるかな〝シマ〟/交差する「1954」/カツオ漁と出稼ぎ ― 黒潮が運んだもの/見過ごされた出稼ぎ史 
第1章 売られゆく貧者の群れ
 「からゆきさん」と「ヨーロン人」/与論島からの集団移住 
第2章 〝砂糖地獄〟の連鎖
 「ガーシヌ世」/明治維新とヤンチュの行方 
第3章 近代のとば口で
 慢性的な貧窮/〝出稼ぎ世〟の序章/惰眠観と農民の屍 
第4章 近代の犠牲 ― 女工の悲劇
 産業革命と女工/「女工哀史」を追う/塀を越えた向こう/南島からの女工 
第5章 大正・昭和の大流出
 白いご飯と娘売り
第6章 阪神と奄美人
 ストライキの波/南島人たちの移住地/大阪湾一帯の奄美人 
第7章 海外移民と犠牲
 海外への脱出/ 悲惨な結末 ― テニアンから長崎被曝まで
第8章 戦後を生きる
 焦土のなかから/密航者たち ― 朝潮太郎は力道山だった/基地オキナワへ 
第9章 現代の都市と奄美人
 周回遅れの戦後へ/今を生きる出稼ぎ群像 
第10章 「出稼ぎ世」からの問い/連鎖する貧困/「差別」を問う/南洋群島(諸島)/ 新時代への旅立ち 
おわりに 
海風社 南島叢書100『南島ボートピープル』対談 奄美近代「流民化」のインパクトと国際化時代

前書きなど

はじめに
 「サトウキビのあるところ、奴隷あり」は黒人の歴史家にして、トリニダード・トバゴの初代首相エリック・ウィリアムズ(1911~81年)の知られた言葉だ。ウィリアムズは被支配者の視点からカリブ海域の歴史を見直し、①砂糖産業が奴隷制度なしに成立しえなかったこと、②英国の資本主義の発展にいかに奴隷制度が「貢献」したかを、その著『資本主義と奴隷制』で力説している人類史上のエポックの一つといわれる「産業革命(1760~1830年代)。その嚆矢になった英国は、世界に冠たる大帝国に躍進するが、なぜ産業革命は英国で起きたか、の起源は必ずしも明らかでない。高名な歴史家の多くが、「イギリス人のピューリタン的勤勉性と合理主義精神による」と主張するのに対し、ウィリアムズはこれを否定、「奴隷制度によって得た莫大な収益こそ、英国を産業革命に導いた」と結論づけている。同時にその代償もまた大きく、アフリカ黒人約940万人(奴隷貿易研究者フィリップ・カーティンの分析)が売買され、多くはなお貧困・差別を引きずり、アフリカそのものも内戦や飢餓が続いている。
 この砂糖史に似た状況が、日本では奄美群島(鹿児島県)に存在した。17世紀末に薩摩藩によって黒糖生産を強制され、七公三民ともいわれる凄まじい収奪で島々は貧窮化。飢饉で大量の餓死者を生み、豪農に身売りする債務奴隷ヤンチュが人口の約3割にも達し、逃散や一揆が続いた。薩摩藩は奄美からの黒糖収奪で赤字藩から脱し、その蓄財による軍事力で幕府に対抗、明治維新の立役者になった。しかし待望の維新が成り、新政府が奄美の〝黒糖地獄〟からの解放を宣しても、守旧勢力によって唯一の換金作物・黒糖の自由売買が阻まれ、ヤンチュ解放も一部に留まった。島民による血みどろの近代化闘争を経て、ようやく遅れた維新が成るが、今度は砂糖商人の前貸しで膨大な借金漬けに。前途を失い、食い詰めた赤貧者の脱出路になったのが、〝東洋のマンチェスター〟に急成長した、阪神工業地帯への出稼ぎだった。かくして大正期には年間5万人を超える、凄まじい人口流出が生じ、さらにブラジルや南洋群島、戦時中は満蒙開拓へ多くが旅立ち、戦後も米軍統治下で基地オキナワへの脱出が続いた。
 その明治末から生じた流民化、大都市出稼ぎ・海外移民で、島民は資本による搾取と、都市生活における迫害・排斥に晒されながら生き抜き、今日に至っている。約1世紀に及んだ南島民の流民史。その苦悩の体験を取材、「偏見」「差別」がどのように生まれ、なぜ宿痾のようにつきまとったかを考察した。
同時にそうした苦悩を負わせた責任を過去のものとせず、現代に問い直し、同様な今日の外国人労働者差別、新たに創生される弱者・貧困問題についても俎上に載せる。
 さて、かのトリニダード・トバゴである。1962年、ようやく英領から独立を果たすが、首相ウィリアムズは国民への餞はなむけにこう語りかけている。「人民が自身の歴史、自身の過去に関する適切な知識を持たずに正しい自立の途を歩むことはできない。インドやアフリカなど地域を問わず、植民地における民族運動は、まず宗主国の歴史家の供給する歴史を書き改めること。宗主国が無視し、看過したまさにその地点において、歴史を書くこと、それこそが求められている」
 私たちは地域の歴史を手織る労苦を惜しまなかったろうか。この拙い論考は奄美移民考であると同時に、そうした底意を込めたものであることをお汲み取りいただければ幸いである。

版元から一言

人身売買と闘う「ヒーロー」指宿昭一弁護士が絶賛推薦!!
帯に推薦文を寄せ、本書が広く読まれることを願って、SNS等で紹介!!
以下、帯の文章です。

奄美の近現代史はその出稼ぎ・移民史を抜きには語れない。近代日本において沖縄と共に内国植民地として差別され、出稼ぎ・移民を余儀なくされた奄美の人々の歴史は、世界中の経済難民や移民の姿と重なる。日本国から看過されてきた歴史を書き換える本書は、先人たちの受けた差別の元凶を解き明かすことで、日本で今も続く外国人労働者への差別を告発する。弁護士 指宿昭一(在ヤマト奄美二世)

著者プロフィール

原井 一郎  (ハライ イチロウ)  (著/文

1949 年生まれ。奄美の日本復帰後、奄美大島・名瀬へ。地元日刊紙の南海日日、
大島新聞記者・編集長。雑誌Lapiz ライター。ジャーナリスト。奄美市名瀬在住。
主な著書『奄美の四季』( 農文協 1988 年)、『苦い砂糖』( 高城書房 2005 年)、
『欲望の砂糖史』( 森話社 2014 年)、『国境27 度線』( 海風社2019 年) 他。

上記内容は本書刊行時のものです。