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わたしたちの中絶
38の異なる経験
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年12月25日
- 書店発売日
- 2024年12月12日
- 登録日
- 2024年11月14日
- 最終更新日
- 2025年1月31日
書評掲載情報
2025-02-22 |
毎日新聞
朝刊 評者: 星野智幸(作家) |
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紹介
産む・産まない・産めないを、国家や医療、他者が管理しようとするこの世界で、「わたしたち」は自身の経験を語る。日本における中絶の歴史を振り返り、当事者の声と、支援者や研究者、取材者などの立場で様々な中絶を見聞きした人たちの声を収録。
目次
はじめに[石原燃]
第Ⅰ部 中絶をめぐる長いお話[大橋由香子]
第1章 妊娠したら産むしかない?――堕胎罪と優生保護法
第2章 中絶を禁止する動きと女たちの抵抗――表現と記録
第3章 わたしの身体、わたしが決める――リプロとSRHR
第Ⅱ部 わたしの経験
第1章 自由に産めないのなら、とコンドームを買った[光江]
第2章 目が覚めて、「この世に戻れた」と思った[麻鳥澄江]
第3章 手話通訳はなく、説明がわからない[柴田邦子]
第4章 中絶は自分で自分を生きていくための“点”だった[遠藤知子]
第5章 中期中絶に到った経緯とその後[白銀]
第6章 痛みはまったく感じないという不思議な経験[安藤能子]
第7章 紅茶があったかくて、甘くてほっとした[井上れいこ]
第8章 とにかくお金がまったくなかった[川上真由美]
第9章 性暴力を愛情だと偽らなければ生き延びられなかった[水野恵子]
第10章 自分の体のために中絶と不妊手術をするしかない[S・S]
第11章 もう子どもが産めないのではないかと、ずっと不安だった[ハナコ]
第12章 生理が止まって、本当にビビった[K・R]
第13章 二度の中絶、そのときはその選択しかなかった[チャップ]
第14章 後悔も罪悪感もない[田中青]
第15章 「中絶」という言葉でひとくくりにされるのが辛かった[匿名]
第16章 全身麻酔をしないで中絶手術を受けたい[横山恵]
第17章 産婦人科医のわたしが、中絶なんて[河合亜矢子]
第18章 「水子供養などしてなるものか!」と強く思った[長田真紀子]
第19章 障害がなくても、一人で育てるなど無理だった[K]
第20章 ようやくその日になっても泣かなくなった[遠藤リト]
第21章 罪悪感に押しつぶされそうだった[浦井英子]
第22章 頑張っていたから、学校生活をまっとうしたかった[須藤あゆ]
第23章 南アフリカのクリニックで中絶薬を飲んだ[伴優香子]
第24章 自分の選択が正しかったのか、思い詰めた[太田恵]
第25章 何を言っても誰かが傷つきそうで表現が難しい[春日そら]
第26章 中絶を選ぶ人が悲しむことのない社会に[匿名]
第27章 わたしは何も悪いことはしていない[M・O]
第28章 早すぎて今できることはないと言われた[井川玖美]
対談 経験を語るということ[イ・ラン×石原燃]
第Ⅲ部 様々な経験に接して
第1章 孤立出産[加地紗弥香]
第2章 若年女性と沖縄での中絶[篠原芙由]
第3章 一〇代の妊娠葛藤[中島かおり]
第4章 中絶をめぐる裁判[岩崎眞美子]
第5章 日本における移民女性の中絶[田中雅子]
第6章 優生的な理由での中絶[大橋由香子]
第7章 トランス男性、ノンバイナリー当事者の中絶[吉野靫]
第8章 国際団体による中絶支援――なぜわざわざ海外に[加藤雅枝]
おわりに[大橋由香子]
中絶に関する書籍・作品リスト
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書では、第Ⅰ部にて、戦前からこれまでの中絶をめぐる状況を概観したあと、その中で中絶を経験した当事者の声を第Ⅱ部に、支援者や研究者、取材者などの立場で、中絶の現場を見聞きしてきた人たちの声を第Ⅲ部にまとめた。直接的な当事者だけでなく、周囲にいる人たちの声もまとめることで、その複雑な実相に近づければと考えた。
経験を語るということは、奪われた声を取り戻すということだ。
医療制度や法律を考えるとき、いつも現実離れした紋切り型なイメージがそこにあり、当事者の声がかき消されている。それは声を奪われているということで、それを取り戻さなくては、わたしたちが自分の身体に主体的に関わることはできない。
マジョリティに対してだけ言っているのではない。わたし自身、自分が主体なのだということを忘れて、医療者の方だけでなんとかしてくれないかと、他力本願になってしまうこともある。だからこそ、何度も何度も、この問題はわたし自身が主体なのだと、自分自身に言い聞かせてきた。
よりよい中絶を必要としているのはわたしたちだし、わたしたちはみな、自分の身体のことを決める権利を持っている。
「わたしたちの中絶」というタイトルには、そんな想いも込めたつもりだ。
当事者が語るということは、本人にとっていいことばかりではない。忘れようとしていたことを思い出してしまうこともあるし、周囲に知られたり、思わぬところから批判を浴びることもある。語りたくても語れないこともあるし、当然、「語らない」という自由も、当事者にはある。それでもなぜ語るのかは、人それぞれ違うだろう。
本書にご自身の経験を寄せてくださった方たちがそれぞれどういう気持ちでご協力くださったのか、わたしが代弁するわけにはいかない。でも、どんな気持ちであるにしろ、もしかしたら痛みを伴うかもしれない個人的な、唯一無二の体験を、託してくださったことに、心から感謝申しあげたい。
読者には、こうして声を上げることがいかに困難なものかをご理解いただき、複雑さをそのまま受け止めていただけたらと思っている。
上記内容は本書刊行時のものです。