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コミック会話 自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法
原書: COMIC STRIP CONVERSATIONS
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2005年5月
- 書店発売日
- 2005年5月18日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
簡単な描画と色をつかい進行中の会話を図示することで,自閉症の子どもとの情報交換,コミュニケーションを支援する道具,コミック会話。本書は,その実践的な使用法を懇切丁寧に解説した初の「コミック会話」入門書。巻末にはコピーして使えるシートを収録。
前書きなど
訳者あとがき<br> この冊子は、キャロル・グレイ(Carol Gray)が著したComic Strip Conversations(1994年Future Horizons刊)を訳したものです。<br> キャロル・グレイは、原書の解説によれば、自閉症の子どもを20年にわたって教育してきた方で、米国ミシガン州ジェニスンのジェニスン公立学校で自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どものコンサルタントして、さまざまな教育場面や就労場面で、子ども、親、専門家に関わっています。現在はさらに、ASDの人およびASDの人のために働いている人にサービスを提供するNPOである The Gray Center for Social Learning and Understandingの所長を務めています。グレイは、毎年世界中で講演やワークショップを開催してきた功績に対して、何度も表彰されています。例えば、ASDの人の教育に関する国際的な貢献に対してバーバラ・リピンスキー賞が授与されました。<br> グレイはASDの人たちを支援するための教材や方法を他にもいろいろと開発しています。主なものに、2000年のThe New Social Story Book, Illustrated Editionや、2002年のThe Sixth Sense II,My Social Stories Book(『マイソーシャルストーリーブック』安達潤監訳、スペクトラム出版社、2005)があります。また、ASDの人や支援者のためのニュースレターThe Morning Newsの編集者となり、これはその後THE JENISON AUTISM JOURNALと名前が変わりました。また、最近The Social Stories Quarterlyという雑誌を発刊しました。詳しくはグレイ・センターのホームページをご覧下さい(ホームページのアドレスは変わることがあるので、インターネットの検索サイトでGray Centerを検索されるとよいでしょう)。<br> この「コミック会話」法は、やはり同じ著者が開発した「ソーシャル・ストーリー」法とともに、自閉症スペクトラム障害の子どもに、その障害特性に合わせて「ソーシャルな情報」を教える方法です。簡単な描画と色を使って進行中の会話を図示することで、会話の中ですばやく行なわれるソーシャルな情報交換を理解しやすくするのです。<br> 「ソーシャル」という英単語は、普通「社会的」と画一的に訳されることが多いのですが、外国語がすべて日本語と1対1対応するはずもなく、画一的に訳されると意味が十分に伝わらないことがあります。「ソーシャル」という語は、「社会的な」というよりも「対人関係の」「対人的な」「社交的な」「世間の」とする方が、その意味が伝わりやすいことがあります。自閉症スペクトラム障害関係の文章に出てくる「ソーシャル」の場合は特にそうです。この冊子でも「ソーシャル」は、主として「対人関係」という語を使って訳しました。<br> したがって、ソーシャルな情報とは、対人関係に関する情報、社交に関する情報といった意味です。自閉症スペクトラム障害の子どもが、他者との関係の中で、つまり対人関係の中で適切な言動をとるには、相手の言葉だけではなく、言葉以外のソーシャルな情報をも理解する必要があります。人が発した言葉を、通常の意味とは違う意味に解釈しなくてはならない場合(慣用表現、冗談など)が往々にしてあります。場合によっては正反対の意味に解釈しなければならない場合(皮肉、慇懃無礼な言葉など)もあります。自閉症スペクトラム障害の子どもには、相手の意図や感情などの他者の心的状態を推測するスキル(心の理論)が乏しいのですが、これは言葉の真の意味を理解することに失敗しやすいことと、言葉以外にも発信されるソーシャルな情報を理解することが苦手なこととによるのです。<br> そのような特徴のある自閉症スペクトラム障害の子どもに、ソーシャルな情報を適切に理解してもらうために開発された方法が、「コミック会話」であり、「ソーシャル・ストーリー」なのです。「コミック会話で得られた洞察は行動療法やソーシャル・ストーリーに組み込むことができる」(p.15)と述べられているように、コミック会話とソーシャル・ストーリーは連動させることもできます。<br> コミック会話もソーシャル・ストーリーも、どちらも自閉症スペクトラム障害の特性をうまく活かした支援方法です。すなわち、一般に自閉症スペクトラム障害の人は、聴覚的情報よりも視覚的情報の方が処理(理解)しやすく、また順次的情報処理よりも同時的情報処理の方が得意です。この特性を活かしたコミュニケーション手段は、実物・絵・写真・文字などの視覚的な手段です。コミック会話は簡単な絵を描きながら自閉症スペクトラム障害の子どもと会話を進めていきます。一般のコミックと同様、台詞を吹き出しに入れたり、状況説明を加えたりして、視覚的に理解しやすくします。しかも吹き出しの描き方により、実際に語られた言葉とその言葉の背後の意味や意図を識別しやすくします。さらには言葉に色をつけて、感情を表現しやすくします。このように自閉症スペクトラム障害の子どもの苦手とするソーシャルな情報の理解、自分の感情の表現などを、彼らの得意な視覚的な手段で支援し、さらに絵を時間の流れに沿って並べていくことにより、苦手な順次情報処理をも支援するものです。<br> この冊子には、コミック会話についての実際的な使用法が懇切丁寧に書かれており、また付録にはコピーして使えるシートが添えられています(日本語版はB5判〔原書はA4判〕ですが、拡大縮小コピーが簡単にできるご時世なので、使用される方が子どもに合わせてサイズを調整されるとよいでしょう)。<br><br>2004年12月19日<br>門 眞一郎
上記内容は本書刊行時のものです。