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本の仕事をしている人で集まる会

というものを札幌でも始めてみました。
寿郎社は社長、同僚、私の3人で、版元ドットコム内で3人っていったらへえけっこう多いじゃんみたいな感じになっちゃうと思いますが、それでも3人は3人なので、ときどき、あー、なんか、なんかいいのかなこのままで……もっといろんな人と話さなきゃいけないんじゃ……という気持ちになります。小さい会社にありがちな話でしょうか。

といっても、人とつながりさえすれば何かがスパークして斜陽ロードを駆け上がることができる、とはまさか思っていません。でもやっぱりいろんなつながりがあった方が、この坂も楽しくのろのろ下れそうな気がします。

もちろん社外のつながりがまったくないわけではありません。出版関係者と飲む機会はありますし、そこではさまざまな情報が得られます。勉強になります。でもだいたいはおじさんです。いや別におじさんでもいいっちゃいいんですが、おじさんの話は対話ではなく独演会であることが多いのが難点です。平たくいうと面倒です。そういえばこんなこともありました。

東京の大手の編集者と飲んだときのこと。その日も独演会でした。同じ話を何度も聞かなくてはなりません。でもそんなのはよくあることです。驚いたのは、その編集者が私と同僚を名前で呼ばないことでした。代わりに使う呼称は「きみ」や「きみたち」でさえありません。「美女軍団」です。いや、これはたまげた。「軍団」なのに二人編成?という素朴な疑問もさることながら、あ、名前覚える気ないんだなと。私たちどうでもいい存在なんだなと。美女っていわれてよかったね俺優しいね愉快だねって、思っているんだろうなと。ああ私いつになったら一人の人間として、名前呼ばれるのかな。待ってるね、待ってるよ。ってずっと待っていたんですよ3時間。いや4時間だったかもしれません。そして閉店。私は名もなき歩兵のままでした。その上「美女軍団は偉いよねえ、こんな大変な仕事してさ。キャバクラならもっと簡単に儲かるでしょう」なんて言われたりして、あまりにみじめな歩兵でした(それにこの場がすでに苦しいのにキャバクラが楽であるはずもないでしょう)。

せめて重装歩兵として、若い・地方の・零細企業の・低収入の・女を肴に気持ちよく飲んでいる年嵩の・東京の・大手の・高収入の・男の脇腹を「大変なのはあんたみたいなやつがいるから…」と槍で突き刺した方がいいような気もしますが、思わず突き刺してしまった場合を除いて、私は仕事ではそうした怒りについて心をすり減らしてまで表明しなくてもよいことにしています。お金をもらって働いているんだもの、細かいことは諦めたのよ、ということではありません。部下が仕事で酷い目に遭っていたらなんとかするのは上司の仕事だと思うからです。よろしくお願いします。

と、まあ凡そそのような事情で、私は出版関係者なら誰でもいいというわけではなく、「◯◯さん」と名前で呼び合える人と知り合いたいと思いました。一方が話して、その話を受けてもう一方が話し、そしてその話を受けてもう一方が、という基本的な対話を成立させたい。そのためには自ら場を用意する必要がありましたが、なんだかんだずるずると先延ばしにしていました。でも今年の6月頃、同僚から「現場レベルの人ともっと交流を持ちたい」という話が上がったことで、二人で始めるならできるかもしれないとようやく重い腰をあげることができました。

そこでまずはチラシの作成です。私は色を塗っただけで恐縮ですが。

上司の「子供会…?」という感想はひとまず置いておき、このチラシを知り合いに手渡したり、twitterやfacebookに投稿したりして宣伝しました。同世代ではないけど参加したいという男性からのコンタクトには「年下や女性にマウンティング(!)しない方であればどの世代の方も歓迎いたします」と返信。
当日は同僚と「誰も来なかったら二人でお菓子を食べて帰りましょう」などと言っていましたが、私たちを含めて9人集まったので少しほっとしました。
このとき参加してくれた「かの書房」さんが、3月オープン予定の店舗を第2回の会場として提供してくれることになりました。
第2回は定員を設けて2日の開催でしたが、札幌で新規の新刊書店って何十年ぶり!?と界隈で注目されているかの書房さんの呼びかけにより、両日とも盛況でした。
(かの書房さんに関する記事はこちらです。北海道書店ナビ[応援企画]札幌にちいさな新刊書店ができるまで「かの書房」のチャレンジを追う《スタートアップ前編》(http://www.syoten-navi.com/entry/2018/09/10/090846)→】《スタートアップ後編》

なお、こちらが第2回参加者のみなさんです。手にしているのは、ビンゴ大会の景品として持ち寄ったオススメの本です。

書店員、ライター、新聞記者、文学フリマ関係者、小説家、図書館司書、NPO職員、取次営業、ビブリオバトル主催者など、集まった方の肩書きはさまざまでした。
また、推し本屋のすばらしさや本を使った新しいゲームの面白さ、本屋を始めるにあたって困ったこと、締切前のつらさ、本のイベントが盛況であること、地方でやっていく難しさなど、話題も多様で広がりがありました。「同世代ではない」と言って事前にコンタクトをくれた方とも楽しくお話(対話)できました。

第3回の開催日をここに書ければよかったのですが未定なので、参加ご希望の方は@honnoshigotoをフォローの上、詳細をお待ちください。私以外の参加者の意向はわかりませんが、道外からの参加もマウンティング(!)しない方であれば大抵の場合は大歓迎されるのではないでしょうか。
「本の仕事をしている人たちで集まる会」がいつまで続くかわかりませんが、この少し安心な場所に避難している間に業界(主におじさん)が変わって、槍なしの丸腰でも人と出会ったりつながったりできるようになればいいなと思います。

寿郎社の本の一覧

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