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鷗外文学の生成と変容 新井 正人(著) - 七月社
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鷗外文学の生成と変容 (オウガイブンガクノセイセイトヘンヨウ) 心理学的近代の脱構築 (シンリガクテキキンダイノダツコウチク)

文芸
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発行:七月社
A5判
320ページ
上製
価格 5,400円+税
ISBN
978-4-909544-09-4   COPY
ISBN 13
9784909544094   COPY
ISBN 10h
4-909544-09-7   COPY
ISBN 10
4909544097   COPY
出版者記号
909544   COPY
Cコード
C1095  
1:教養 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年6月18日
書店発売日
登録日
2020年5月27日
最終更新日
2020年6月18日
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書評掲載情報

2020-10-31 図書新聞
評者: 小澤純
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紹介

森鷗外にとって小説とは、現実の模写にとどまることなく、理想的な人間像や世界観を提示すべきものだった。当時最新の心理学・哲学・精神病理学などの学知を受容していた鷗外は、それをどのように小説表現に昇華させ、リアリズムを乗り越えようとしたのか。
学術書への自筆書き込みを仔細に検証し、鷗外の文学的営為を跡づける。

目次

序章 「小説を作るべき方便」としての「心理的観察」
Ⅰ 心理的リアリズムとしての近代文学
Ⅱ 近代心理学と近代文学の等質性
Ⅲ 初期鷗外の文学観
Ⅳ 鷗外文学の多形性

第一章 小説表現の学的構築 ─鷗外と心理主義─
Ⅰ 心理主義的時代思潮の影響
Ⅱ 帰納的形而上学への夢
Ⅲ 科学的心理学の受容
Ⅳ 人間心理の言語的構築

第二章 Seeleをめぐる論理 ─心身問題と鷗外─
Ⅰ 性質二元論の受容
Ⅱ 「主物」と「主心」の「併行」
Ⅲ 科学的心理学と心身問題
Ⅳ 「魂と肉体」の文学

第三章 構成的外部への理路 ─鷗外と識閾下─
Ⅰ 芸術創作理論と識閾下
Ⅱ 識閾下をめぐる学知
Ⅲ 表現戦略としての識閾下
Ⅳ 主体の構成的外部

第四章 「混沌」のもつ力 ─鷗外と教育思想─
Ⅰ 利他的行為の存立要件
Ⅱ 「選択の自由」としての自由意志
Ⅲ ヘルバルト教育学の受容
Ⅳ 「混沌」としての主体
Ⅴ 「将来ノ教育」の模索

第五章 “Vita sexualis”という言説装置 ─鷗外におけるクラフト=エビング受容─
Ⅰ 『性的精神病質』の日本への移入と鷗外
Ⅱ クラフト=エビング受容の様相
Ⅲ 「ヰタ・セクスアリス」の生成
Ⅳ 「告白」の不可能性

第六章 表象心理学と物語行為 ─鷗外文学の構築方略─
Ⅰ 表象心理学の枠組み
Ⅱ 心理の因果的構成
Ⅲ 「雁と云ふ物語」と心理描写
Ⅳ 「雁」の表現戦略
Ⅴ 「物語のモラル」、そして史伝へ
Ⅵ 近代の脱構築─おわりに─

初出一覧
あとがき

資料① G・A・リントナー『経験的心理学教本』受容の様相
資料② O・キュルペ『哲学入門』・『心理学概論』受容の様相

人名索引
著作名索引
事項索引

前書きなど

本書の刊行が、このような社会情勢の下でなされることになろうとは想像できなかった。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は日本にも及び、感染爆発は回避したとされるものの、いまだ終息は見通せない状況にある。感染症は徐々に私たちの日常を侵蝕した。そして、「緊急事態宣言」下において、公衆衛生的な知と権力の遍在は明らかなものとなった。私たちは、生き延びるため、社会を守るため、日々絶えざる「自粛」を求められた。その後に到来するのは「新しい日常(ニューノーマル)」であるという。
知られるように、鷗外は日本で最初期の公衆衛生学者の一人だった。日本人による衛生学教科書の嚆矢『衛生新篇』(1897.6)の刊行など、様々な媒体を用いた啓蒙的言説の産出に加え、陸軍軍医総監・陸軍省医務局長就任後には、軍内にける腸チフスの予防接種を主導した。
こうして見ると、鷗外は公衆衛生的な知による個々人の統括を目論んでいたように見える。実際のところ、そうであったに違いない。だが同時に、事態はそう単純なのかとも思われる。鷗外はその文学的営為を通じて、近代的な主体、現下の私たちがそうであることを求められ、また自らそうあろうとした自律的主体が、否応なしに有してしまうしなやかさを仄めかしていたのではないか。生きさせる権力の網の中にあっても自らを変容させ、社会をも変容させ得る生の可能性。
私は鷗外の遺した言葉から、私たち自身のそうしたありかたへの勇気を汲み出したい、と思う。
(出版社HPでの自著紹介「ほんのうらがわ」より)

著者プロフィール

新井 正人  (アライ マサト)  (

1986年、埼玉県生まれ。
2005年、埼玉県立川越高等学校卒業。
2009年、慶應義塾大学文学部卒業。
2017年、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。
博士(文学)。
現在、早稲田中学校・高等学校国語科教諭。
専門は、日本近代文学・国語教育。
主な論文に、「「肖像画家」に託された戦略─三島由紀夫「貴顕」における「芸術対人生」の問題系─」(『昭和文学研究』67集、2013年9月)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。