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こどもの吃音症状を悪化させないためにできることー具体的な支援の実践例と解説
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年4月25日
- 書店発売日
- 2022年3月30日
- 登録日
- 2022年3月14日
- 最終更新日
- 2023年5月24日
書評掲載情報
2022-05-15 | 信濃毎日新聞 朝刊 |
2022-05-07 | 朝日ファミリーデジタル |
2022-05-05 | 朝日ファミリーデジタル |
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重版情報
3刷 | 出来予定日: 2023-06-06 |
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「吃音」は言葉が発達する2~5歳から始まることが多く、約8割の人は自然に消失します。つまり2割は吃音症状を伴いながら成長していきます。 本書では吃音症状をなぜ悪化させてはいけないのかを分かりやすく解説し、保護者、教育現場での対応に役立つ内容になっており、吃音理解授業にすぐに使える資料編も好評です。 |
紹介
発吃からその後2割は吃音をもったまま成長するという現実を前提に「吃音を治す」から「吃音を悪化させない」「吃音をもったまま自由にコミュニケーションをとる」といった転換に向けて奮闘する専門家や教育現場の先生方、保護者の実際の支援の例と詳しい解説の書。
解説編は吃音をどうとらえるか、吃音のある子に保護者ができること、保護者と専門家による支援と協働の在り方について述べる。実践編では就学前、小学生、中学生、成人、それぞれの世代で、本人、保護者、担任の先生、言語聴覚士たちの支援の実際の手記を通して、「吃音症状の悪化とはどういう状態を指すのか」「なぜ悪化させてはいけないのか」に分かり易く答えている。
資料編は実際の吃音理解授業などで使われるスライドなどの資料を紹介していて、自由にアレンジして教育現場でも実際に使うことができる。
目次
はじめに
解説編 堅田利明
Ⅰ吃音をどのようにとらえて、これから何をしていくとよいのでしょうか
Ⅱ吃音のある子どもに保護者ができること
Ⅲ吃音のある子どもと保護者への専門家による支援と協働
実践編
Ⅰ専門家ができる支援・実践について
その子にとって自然な話し方を守り、育てる/餅田亜希子
吃音症状の悪化を防ぐためにー親子と紡ぐ吃音の理解・啓発の輪/西尾幸代
言聴覚士の立場から/田宮久史
Ⅱ就学前の子どもとその応援者
吃音発症/齋藤加奈子
吃音になっても、たくさんしゃべれるようになった/齋藤怜奈
知るとは つなぐとは/土屋直美
Ⅲ小学生の子どもとその応援者
伝え続けてきて/堀内美加
マネされちゃうと、気をつけちゃうし、もっと話せなくなる/堀内彩友
正しい理解から始める学校づくり/堀内絹予
子どもの成長と共に深まっていった吃音への理解/松下真生・新
新さんと出会って学んだこと/倉澤航
Ⅳ中学生の子どもとその応援者
「盛大につっかえた」と笑って言える環境が得られるまで/前川令
吃音と僕/前川橙士
吃音を正しく理解することで、お互いを思いやることができる/舘林裕二
中学校入学準備として私たちが行ったこと/小澤栄子
今のままの僕でいい、と思えるまで/小山田万紀
僕の吃音ライフ/小山田凛太郎
吃音、人との出会いで私が変わったこと/矢崎貴臣
Ⅴ成人の人の経験を通して
吃音で悩んだ経験からお伝えしたいこと/髙山祐二郎
Ⅵ吃音の理解・啓発授業の実践
自我が確立していく時期の、本児の自己理解、自己開示を支える教育相談/馬田美紀
連発を出さないように工夫した結果、吃音は悪化する/髙山祐二郎
Ⅶ理解・啓発の重要性と様々な試み
寛解後も続ける啓発活動の意義/平林実香
じっくりとお話を傾聴し、吃音の支援ができる専門家を育てる/金子多恵子
ラジオを通して、ふと誰かの耳に届いた吃音の言葉が……/餅田亜希子
資料編
おわりに
前書きなど
はじめに
あなたは、吃音のあるわが子や担任をしている吃音のある子どもの様子を観ていて(今は特に問題はなさそうだ)と感じていらっしゃいませんか。「大丈夫」「問題はなさそう」だと判断される理由を具体的に考えてみましょう。例えば(園や学校に行くことを楽しみにしている)(友達とよく遊んでいる)(クラスで発表をしている)(○○委員に立候補した)といった生活態度に加え、(いっぱいお話してくれている)(言葉のことは特に気にしてなさそうだ)(友達から言葉のことで何も言われていないみたいだ)(先生からは特に問題になるようなことは聞いていない)といった話すことに関する様子から判断されているのではないでしょうか。こうした判断が今、そして将来を見すえて果たして(大丈夫)であると言えるでしょうか。
違った方向から考えてみましょう。現在の子どもの様子が(園や学校への行き渋りがある)(友達とのかかわりに躊躇している様子がある)(口数が減り以前のように話さなくなった)(沈んだ表情で元気がない)といった場合はどうでしょう。何もせずにただ様子を見ていることはしないはずです。理由を明らかにし、原因を取り除くまたは軽減するために行動されるでしょう。では、こうした姿を見せない限り(大丈夫)であると判断しても構わないのでしょうか。
吃音のある子どもにとって自然に出てくる吃音症状は、わずらわしいものでも苦しいものでも嫌なものでもありません。ですから吃音症状を伴ってたくさんお話をしてくれます。当然、周りの人は吃音症状の不思議さが気になって本人に問うでしょう。悪気はなく笑ってしまうことやマネて言ってしまうこともあるでしょう。問われた本人は、どうしてこのような話し方になってしまうのかを説明できないまま、やがては話し方に注目されることを避けようとします。つまり吃音症状を出さないように話そうと努力するのです。その結果、吃音症状は悪化していくことになり、わずらわしく苦しいものへと変化していきます。苦しさのあまり「どうしてこんな話し方になるの」と親や先生に問うてくることがあります。「そんなことないよ」「大丈夫」「ちゃんと話せているから」と返答されてしまうと、以後は話題にできにくくなります。そして、(親に心配をかけたくないから)(親に言いたくない)(自分のことだから自分で何とかする)(我慢すればいいことだから)(大げさなことにしたくない)とひとりで抱え込み、周りには取り繕った態度を装い、心配されないようにします。(しんどいことがあれば何でも言ってほしい)という親や先生の思いは残念ながら願いだけで終わってしまうのです。しんどくても苦しくても(心配をかけたくないから)という子どもの気遣いを理解することができるでしょうか。
本書はタイトルの通り、子どもの吃音症状を悪化させないためにできる取り組みを柱に、実践編では吃音のある子どもたちをはじめ保護者や周りにいる人たちの手記が綴られています。吃音症状の悪化を防ぐために、または悪化してしまった症状を引き戻すことができた具体的な内容が記されています。吃音のある人が自らできること、ご家族ができること、先生や専門家、周りにいる人たちがそれぞれの持ち場でできることがあります。本書に記されている内容は、吃音のある人の子育てや教育活動に限定されるものではありません。発達障がいや他の疾病のある人たちへのかかわり方、安心できる暮らしの場を作っていくためのヒントが満載されています。吃音の理解・啓発を進めていく意義とは何か、周りの人たちと協働していくための方法についてもご理解いただけるでしょう。本文中の大切な言葉や気づきについては欄外にコメントを添えました。実践編に記されている取り組みの数々が、吃音のある子どもたちやご家族に、そして周りにいる人たちへと届いてくれますことを心から願っています。
版元から一言
わが子がある日突然どもり出したら。。。
発吃からその後2割は吃音をもったまま成長するという現実を前提に「吃音を治す」から
「吃音を悪化させない」「吃音をもったまま自由にコミュニケーションをとる」といった転換に向けて奮闘する専門家や教育現場の先生方、保護者の実際の支援の例と詳しい解説の書。
解説編は吃音をどうとらえるか、吃音のある子に保護者ができること、保護者と専門家による支援と協働の在り方について述べる。実践編では就学前、小学生、中学生、成人、それぞれの世代で、本人、保護者、担任の先生、言語聴覚士たちの支援の実際の手記を通して、「吃音症状の悪化とはどういう状態を指すのか」「なぜ悪化させてはいけないのか」に分かり易く答えている。
資料編は実際の吃音理解授業などで使われるスライドなどの資料を紹介していて、自由にアレンジして教育現場でも実際に使うことができる。
上記内容は本書刊行時のものです。