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新しい和声
理論と聴感覚の統合
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2015年4月
- 書店発売日
- 2015年4月20日
- 登録日
- 2015年3月11日
- 最終更新日
- 2023年3月16日
重版情報
8刷 | 出来予定日: 2020-11-30 |
7刷 | 出来予定日: 2020-02-29 |
2刷 | 出来予定日: 2015-10-09 |
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紹介
和声教育の新時代を拓く国際水準の教本が誕生!
初歩の学習から作曲の専門的な課程までを1冊に!
西欧の伝統的な数字付き低音に立ち戻り、美しい音響を聴き取るための聴覚的訓練と歴史的な理論の統合をめざした、和声教本の決定版。
東京藝術大学音楽学部(全専攻科)および同大学附属音楽高等学校にて教科書として採用。
◎本書の特徴
・従来の和声教本で習得しなければならなかった日本独自の複雑な記号体系を排し、世界標準として広く使用されている伝統的な数字付き低音を採用。
・繰り返し演奏・聴取に耐えるすぐれた課題を多数収載。美しい音響を聴き取るための聴覚的訓練と歴史的な和声理論の統合をめざした。
・初歩の学習から作曲の専門的なレベルまでに必要なすべての課程を1冊に収載。
・巻末に課題の実施範例集を併載。
目次
本書を学ぶにあたって
新しい和声 本編
序──近代の和声理論について
Ⅰ 三和音──自然協和音・自然不協和音
第1章 倍音
第2章 自然協和音と自然不協和音
第3章 和声学習の予備的知識
第1節 音階構成音と移調、移旋、異旋
第2節 和音──三和音、四和音、五和音について
第3節 声部の音域、進行、2声部間の音進行
第4節 音の進行にかんする規則
第4章 数字付き低音
第1節 三和音──長三和音、短三和音
第2節 減三和音
第5章 和音の機能
第1節 和音の機能
第2節 終止形
第6章 三和音(完全和音)の連結
第1節 Ⅰ、Ⅴ、Ⅳ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅵの諸和音
第7章 Ⅶ度和音について
第8章 短調に生じる変化和音
第9章 反復進行について
第10章 低音(バス)課題、ソプラノ課題の実施手順
第1節 低音(バス)課題の実施
第2節 ソプラノ旋律課題の実施
第11章 三和音和声進行にかんする諸規則のまとめ
Ⅱ 転調、三和音の配置転換、Ⅳ度の変化和音
第1章 転調
第1節 転調の形態
第2節 転調を取り入れた反復進行の練習
第3節 ドッペルドミナント和音
第4節 近親転調を含む課題
第5節 異名同音転調
第6節 遠隔調への転調
第2章 和音配置の転換
第1節 同和音において配置の転換および転回形が連続する場合の連結上の禁則について
第2節 Ⅳ度の変化和音
Ⅲ 四和音、五和音 自然不協和音、不協和音
第1章 属7の和音とその転回形
第1節 属7の和音とその転回形
第2節 基本的な規則について
第3節 属7の第1転回形
第4節 属7の第2転回形
第5節 属7の第3転回形
第2章 フォーレ終止
第3章 半音階的和声進行による属7の和音の「際限のない和声的鎖」
第4章 属7以外の7の和音(四和音)
第5章 属9和音と9の和音(五和音)
第6章 長短属9和音の転回形
第7章 属9(長属9・短属9)和音の根音省略形──Ⅶ7の和音
第8章 主音上の属7、属9、およびⅦ7の和音
第9章 増6の諸和音
第1節 原則
第2節 イタリアの6、フランスの6、ドイツの6──3つの形態による増6和音
第3節 その他の変化和音
第10章 同和音内での構成音の装飾、配置変化
第1節 原則
第2節 弱拍に一時的に現れる不完全和音
Ⅳ 和音外音を含む和声
第1章 和音外音
第1節 和音外音
第2節 その他の和音外音
第2章 和音外音を含む和声の諸規則
第1節 倚音、刺繡音、経過音、掛留音
第2節 和音外音を含むソプラノ課題の実施手順
Ⅴ 複数の和音外音によって生じる変化和音、
模倣をともなう反復進行、保続音
第1章 複数の和音外音によって生じる変化和音
第2章 模倣をともなう反復進行
第3章 保続音
Ⅵ さまざまな形態による和声課題
第1章 転回可能対位法を含むバス課題
第2章 フーガ風の導入を扱うバス課題
第3章 アルテルネ
第4章 バッハ様式のコラール
第5章 旋律のピアノ伴奏付け
第6章 弦楽四重奏および4段譜による課題
和声学習の参考作品一覧
和声課題 実施範例集
Ⅰ 三和音──自然協和音
Ⅱ 転調、三和音の配置転換、Ⅳ度の変化和音
Ⅲ 四和音、五和音──自然不協和音、不協和音
Ⅳ 和音外音を含む和声
Ⅴ 複数の和音外音によって生じる変化和音、
模倣をともなう反復進行、保続音
Ⅵ さまざまな形態による和声課題
あとがき
解 説(小鍛冶邦隆)
前書きなど
本書を学ぶにあたって
著者は長年、ソルフェージュとエクリチュール(和声、対位法、フーガ)という音楽の基礎教育の根幹をなす分野の研究および授業に直接携わってきたが、その経験から、作曲家をめざす者はもとより、演奏家、音楽学者、音楽教育者をこころざす人たちにとっても有効な和声教育とは何か、ということをつねに考えつづけてきた。
西洋音楽の理解において、「和声の習得」がきわめて重要なものであることはいうまでもないが、残念なことに、わが国では文化的にも、あるいは音楽社会の現状からみても、いまだにそのことについて正しい認識がなされているとはいいがたい。
今日まで日本でおこなわれてきた和声の基礎教育は、独自の和音記号の開発、そして和音連結のパターンをカテゴライズし認識させるという方法論によって、歴史的にみてもひじょうに興味深い進展を示したといえよう。しかしながら、煩雑な規則や複雑なローマ数字による和音記号、そして和声連結のパターンをひたすら機械的におぼえこませることに終始する傾向があったことは否定できない。それゆえ本書は、従来の和声教育(とくに音大の副科和声)の現場で授業をしてきた私自身が、長いあいだもちつづけてきた疑問にたいするひとつの解決のあり方を示すものともいえる。
また著者自身が留学時代、パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)のさまざまなクラスで長年にわたって学び、とくにエクリチュールの教育というものが、演奏や音楽学といった専門分野の教育の基礎において、いかに重要な役目をはたしているのかを再認識したが、その経験もなにか形に残すことができないかと考えていた。演奏家をこころざし、または音楽研究のために海外に留学する人たちにとっても、実践的で、かつ直接役に立つ指針をもつ和声の本を書かねばならないのではないか──それが本書を執筆した率直な動機である。
演奏家にとって和声教育を直接有効なものとするためには、まず日本国内でしか通用しない和音の特殊で複雑なローマ数字表記(これはまた、移動Doを基本とした分析法に留まっている)を排し、和音というものが低音から上方へ垂直方向に音を堆積させたひとつの音響体であるという原点に立ち戻って、ヨーロッパで古来から伝統的にもちいられているアラビア数字による数字付き低音による和音表記がもっともふさわしいという結論にいたった。
たとえばバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタやパルティータ、もしくはショパンの練習曲集やドビュッシーやメシアンの前奏曲集を演奏するにさいしても、また、合唱や器楽アンサンブルの活動においても、和声を知覚するうえでもっとも基本的かつ重要なのは、低音からの縦方向の音程を認識し、それをひとつの音響体として聴覚的に統合する能力であり、それを習得するにはヨーロッパの伝統的な通奏低音法による和声教育がいちばん有益なのである。またその伝統を突き詰めていくと、和声教育はほんらい、机上での理論的・知的認識にもとづく学習法のみならず(もちろんこれも和声学習ではないがしろにできない重要な基礎部分ではあるが)、実際の楽器(とくに鍵盤楽器)をもちいた身体的および聴覚的認識にもとづく学習が有効であるといえる。和声の習得が、演奏行為に直接かかわってくることにぜひ気づいてほしい。
本書では、基本的には機能和声の連結法を中心としながらも、17世紀から18世紀中期あたりまで重要視されていた「通奏低音法」を、和声学習の核として採用している。それゆえ、数字付き低音による和声学習といえるだろう(フランス式数字を使用)。
これは、規則化された和声理論だけを中心とする従来の和声教科書とは異なり、和声学習を実際の演奏行為と一体化させることが重要であるという認識にもとづく。こうした考えから、本書では、①和声理論と書法を②鍵盤楽器による和声(移調奏、反復進行の練習課題)と結合すること、また③旋律にピアノ伴奏を付ける課題学習(パリ国立高等音楽院の伴奏科では筆者が在籍していた時代もおこなわれていた)なども実際の音楽活動に有益であろうと考え、新たに項をもうけた。
さらに、T(トニック)、D(ドミナント)などの機能表示についても新たな提案がなされ、従来サブドミナント(S)として扱われている機能についても、新たに「プレドミナント(PrD)」「プラガル(Pl)」の2種に分類して、学習者が理解しやすいように説明している。
また、和声の規則を記述するさいに、学習者が複雑で煩雑な規則にとらわれすぎないよう、重要な事項をとりあげ、不必要と思われる事項はなるべく省略することを心がけた。
なお、ソプラノ課題に和音数字が記されているものもあるが、これは学習者の実施を補助するために、巻末の範例集の和音数字を参考までに記したものである。扱われる和音と配置する箇所を示唆しているにすぎないので、かならずしもこのとおりに実施する必要はなく、惑わされることがないよう留意されたい。
学習者には、本書で学んだ内容をさらに身体化させるためにも、学習した課題の和音の響きを、ピアノや鍵盤楽器などを使ってゆっくりと聴きながら復習することをぜひすすめたい。本書ではそのために、移調奏、反復進行の練習課題がもうけられている。それによって、聴覚(とくに内的聴感覚)とエクリチュール(音楽書式)とが一体化し、それこそが西洋の音楽の演奏、創作、研究をつなぐ唯一の道であることにおのずと気づくことができるだろう。
和声学習の本質は、人類が生み出した文化のなかでもっとも輝きをはなつ存在──藝術──の最高の表現であり、関心事でありつづけている〈美〉そのものの探究にあるのである。
林達也
作曲家・ピアニスト
東京藝術大学音楽学部作曲科准教授
上記内容は本書刊行時のものです。