版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
空の間 Heart spade dia club(著/文) - ふらんす堂
.
【利用可】

書店員向け情報 HELP

書店注文情報

注文サイト:

在庫ステータス

在庫あり

取引情報

取引取次: ト|ニ|楽天|中|地方小
直接取引:あり

出版社への相談

店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。

空の間 (ソラノアワイ)

文芸
このエントリーをはてなブックマークに追加
発行:ふらんす堂
菊判
並製
価格 3,000円+税
ISBN
978-4-7814-1164-4   COPY
ISBN 13
9784781411644   COPY
ISBN 10h
4-7814-1164-9   COPY
ISBN 10
4781411649   COPY
出版者記号
7814   COPY
Cコード
C0092  
0:一般 0:単行本 92:日本文学詩歌
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2019年4月9日
最終更新日
2019年6月14日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

◆作品紹介
午睡がおわった。
浜へ出る。
日の傾きはおそい。
虹をとかした白線がうちおろす。
白砂が靴底へからみ、こぼれる。
かまってほしい子どもらを蹴飛ばしてゆくように、
無下にあしらう残酷さのきざしに、
淡い快をも感じたりしつつ。

海鳴りは飽きた。
ときおりここへくる人は、みんなこの青い水たまりに感嘆する。
辺境の故郷への幽閉はひどくおそれるくせに、
ときおりなぜか幸福げにおとずれはしゃぐ帰郷者たちのように。
なつかしいのだろう。
時々ということ。つかの間のアバンチュールのごとき余裕が、
そうした酔いと感傷じみた想いにさそうのだろう。

風がうっとうしく、肉や血や記憶の匂いをはこび、
望みもしないこちらの顔にたたきつけてゆく。
焼けた砂をときおりなだめにくる汀では、
小麦色のサルたちが奇声をあげ、宙にビーチボールをうつ。
帝国末期の銀貨幣の髪色した女は、せわしなく水着のずれをなおす。
裸と大差ないんだから、どうせなら脱ぎ捨てればいいのに。
おサルさんみたいで、おサルさんにもなりきれない……
それが悩ましいトコロ。
顔がかくれるほどにガムふくらませ通りすぎた。
しぼむ途中はじけ、鼻のあたまにネーブルの香りはりつき、ちぎれる。
明日は雨がくるだろうか。
ひけらかす陽をあおぐ顔をつまさきへ。
文明の轍のように、くつは砂を蹴散らしてゆく。

上記内容は本書刊行時のものです。