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少人数学級の経済学 北條 雅一(著/文) - 慶應義塾大学出版会
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少人数学級の経済学 (ショウニンズウガッキュウノケイザイガク)

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四六判
304ページ
上製
価格 2,700円+税
ISBN
978-4-7664-2888-9   COPY
ISBN 13
9784766428889   COPY
ISBN 10h
4-7664-2888-9   COPY
ISBN 10
4766428889   COPY
出版者記号
7664   COPY
Cコード
C3033  
3:専門 0:単行本 33:経済・財政・統計
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年4月20日
書店発売日
登録日
2023年2月21日
最終更新日
2023年4月15日
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書評掲載情報

2023-05-13 毎日新聞  朝刊
評者: 大竹文雄(大阪大学特任教授・経済学)
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紹介

因果推論に基づいた現代的分析

未来を担う子どもたちを育む学校教育。本書は経済学をベースに社会学・心理学・認知科学等からの知見を取り入れ、少人数学級がもたらす学力・非認知能力の向上、学校教員の過重労働の軽減、教員不足解消への採用方策、教員のウェルビーイング、政策のコスト・パフォーマンス分析などの論点を、エビデンスを重視して検証する。教育経済学の新地平。

少人数学級制度は、子どもや教員にどんな影響をもたらすのか。

現在導入が始まっている小学校での35人学級の教育的・経済的効果を実証的に分析。生徒レベルの詳細なデータを用い、因果推論の手法を活用して、35人学級に代表される少人数学級教育は子どもの学力を向上させるのか、そして近年その重要性が認識されている子どもの「非認知能力」を伸ばす効果はあるのかを解き明かすとともに、少人数学級はいじめや格差を縮小・是正するか、といった「効果の異質性」についても言及する。

また、少人数学級の導入がもたらす教員配置数の増加によって教師の就業環境が改善し、労働時間の減少やストレスの低減をもたらすことを、著者自身の研究成果に基づいて明らかにする。さらに、少人数学級政策の導入には、教員の増大に伴う巨額の費用が発生する。第5章ではやや視点をマクロの財政面に置き、少人数学級は巨額の費用負担に見合うほどの効果を持つのかについて、費用対効果の視点から国内外の研究成果をもとに試算する。

EBPM(科学的根拠に基づく政策形成)の波は教育行政にも押し寄せている。教育領域におけるEBPMは、他領域におけるそれと同様に考えてよいのか、それとも教育領域に独自の性質があるのか。これまでの研究に基づきながら、EBPMを教育分野に適用することの必要性を論じる。

2021年のノーベル経済学賞は、実験が難しい経済学において、自然実験などを活用した因果推論の手法を確立・発展させた研究者に贈られた。中でも、受賞者の一人であるアングリスト教授は,1999年に少人数学級の効果を検証した論文を発表し、その後の研究を切り開いたことが評価された。本書はアングリスト教授の分析手法を応用して日本の実情に適用した分析結果を提示するなど、現代的な因果推論に基づく実証分析の結果を提示するという点で学術的な貢献を持つ。

目次

序章 日本の学校教育の現状と少人数学級――教育経済学の視点
教育経済学の視点:日本の児童・生徒の学力と学校環境/教育格差の視点:家庭環境の影響/学級規模と少人数学級政策

第1章 少人数学級は学力を向上させるのか
「すし詰め」解消への道程――戦後日本が歩んだ学級編制の推移/学級規模研究の歴史/少人数学級の学力向上効果――近年の研究成果/効果の異質性:少人数学級は教育格差を縮小するか/少人数学級の学力向上効果

第2章 少人数学級と非認知能力
高まる非認知能力への注目/非認知能力とは何か/少人数学級は非認知能力を伸ばせるのか/筆者自身による分析結果/非認知能力研究の重要性

第3章 少人数学級はいじめの低減につながるか
学校生活面への視点/これまでの研究例/筆者による分析結果/少人数学級は万能ではない

第4章 少人数学級と教員の就業環境
厳しい学校教員の就業環境/学校教員の勤務の実態/少人数学級は教員の勤務実態の改善につながるか/筆者による研究結果――生徒・教師比率と労働時間・ストレスの関係/学級規模の縮小が教員にもたらす効果

第5章 少人数学級政策のコスト・パフォーマンス
少人数学級政策の「コスパ」/少人数学級政策のコスト/少人数学級政策のパフォーマンス/少人数学級政策のコスト・パフォーマンス/少人数学級政策のコスパは決して悪くはない

第6章 教員を確保できるか――教員採用の経済学
少人数学級政策に不可欠な教員採用/教員採用および教員不足の現状/教員採用の経済学/教員は幸せか――ウェルビーイングの観点からの検証/教員志願者確保に向けた方策の検討

終章 少人数学級政策のあり方とEBPM
EBPMの考え方/少人数学級政策におけるEBPM/教員確保の議論を/教育分野におけるEBPMの先頭として

著者プロフィール

北條 雅一  (ホウジョウ マサカズ)  (著/文

駒澤大学経済学部教授。
1977年生まれ。99年神戸大学経済学部卒業。2003年大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程中途退学。05年、博士(国際公共政策)取得。大阪大学助手、新潟大学人文社会・教育科学系助教授、准教授、文部科学省国立教育政策研究所客員研究員などを経て2018年より現職。

主要業績:
”Association between student-teacher ratio and teachers’working hours and workload stress:evidence from a nationwide
survey in Japan,”BMC Public Health 21, 1635 (2021).
”Do the disadvantaged benefit more from small classes? Evidence from a large-scale survey in Japan,”co-authored with Wataru Senoh, Japan and The World Economy 52, 100965 (2019).  
「学歴収益率についての研究の現状と課題」『日本労働研究雑誌』60巻5号所収、2018年
「学級規模の縮小は中学生の学力を向上させるのか」『国立教育政策研究所紀要』第145巻所収、2016年
「少人数学級の効果」『経済セミナー』2015年5月号所収  ほか多数

上記内容は本書刊行時のものです。