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被災地のジャーナリズム
東日本大震災10年 「寄り添う」の意味を求めて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年2月28日
- 書店発売日
- 2021年2月26日
- 登録日
- 2021年1月19日
- 最終更新日
- 2021年3月15日
書評掲載情報
2021-04-17 |
朝日新聞
朝刊 評者: 戸邉秀明(東京経済大学教授・日本近現代史) |
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紹介
被災地でジャーナリズムが果たす役割とは何か―。2011年の東日本大震災・福島第一原発事故から10年。河北新報に勤め被災地から記事を発信し続けてきた著者が、復興がいまだ訪れない被災地の姿を描き出し、被災地取材から見えてきたジャーナリズム論を総括する。
目次
まえがき
第1章 被災地の風景の中で――他者の壁を越えてつながる
第2章 被災地10年の変容を追って 2013.8.-2020.3.
1 アベノミクスの狂乱の影で、置き去りにされる東北の被災地
2 どう乗り越えるか、風化と風評 マスコミ倫理懇談会全国大会で見えてきた課題
3 現実の遠い彼方にある幻夢 東北の被災地からみた“復興五輪”
4 「復興加速」と真逆の風景広がる 被災地に遅発性PTSD多発の懸念も
5 「町おこし」でなく「町残し」 避難解除とは何だったか
6 トリチウム水に懸念深まる福島 解決の責任を国は果たすべきだ
7 ホヤ輸出、希望絶たれた被災地 韓国にWTO敗訴、政府は責任を
8 10月に2度の記録的豪雨水害 東北の被災地報道に見えた「光と影」
9 被災者に寄り添い続けるには 共感保ち「つなぎびと」たれ
第3章 震災取材者の視点から 2012.7.-2020.9.
1 ブログは新聞の発信力を強める――風評、風化の「見えない壁」の向こうにつながりを求め
2 被災地で取材者はどう変わったか? 当事者との間の「壁」を越えるには
3 「自殺」から「自死」へ 当事者取材の現場で知る言葉の違いの意味
4 被災地で聞かれぬ言葉、当事者の言葉
5 沖縄と原発事故に重なる中央の周縁視 現場の声と事実を伝える地元紙の使命
6 大川小の「止まった刻」 8年目の検証、そして判決
7 県民を守り感染者も守る 岩手県知事の訴えの意味
第4章 ルポルタージュ 被災地のいま 2020.1-11.
1 原発事故10年目の「福島県飯舘村」――篤農家が苦闘する「土の復興」はいま
2 丸9年の「3・11」――変貌する古里「飯舘村長泥」のいま
3 「新型コロナ禍」で閉ざされた「交流」――福島被災地の「模索」と「きざし」
4 「コロナ禍」に「貝毒」――三陸「ホヤ漁師」、先の見えない「深い霧」に苦悩
5 幾たびの苦難に屈せぬ南三陸町「震災語り部」ホテル(上)――休まぬ「地域のライフライン」
6 幾たびの苦難に屈せぬ南三陸町「震災語り部」ホテル(下)――津波と命を「伝承する」使命
7 汚染水「海洋放出」――政府方針で置き去りにされる「福島・相馬」漁師たちの怒り
終章に代えて 被災地をめぐる若者との対話――早稲田大政経学部「メディアの世界」受講生への返信
『被災地のジャーナリズム』に寄せて 被災者の息づかいを伝える伴走者[岡田力]
初出一覧
前書きなど
まえがき
2011年3月11日午後2時46分。それまで経験したことのない激しく長い揺れに、原稿を書いていた河北新報社(仙台市)5階の机にしがみついた。周りで悲鳴が上がり、机や椅子が生き物のように動き出し、あらゆるものが床に散乱した。建物が崩れ落ちるかもしれないと感じた。ようやく揺れが収まった時、外界で何が起きているのかなど想像もつかなかった。
やがて東北の太平洋岸の町々を巨大津波が襲い、1万8千を超える人々が犠牲に。東日本大震災と命名された未曽有の大災害と、福島県浜通り地方に二重の犠牲を強いた東京電力福島第一原発事故の被災地を、それから取材者として歩くことになった。
この激しい痛みは何なのだろう―。それが、被災地に立つたびに襲ってきた感情だった。河北新報の若い記者たちとワゴン車に同乗し、休みなく巡った宮城県石巻、岩手県大船渡、陸前高田。そして震災発生から2週間後、取材でようやく来ることができた郷里の福島県相馬。行く先々で出合ったのは、自分の「古里」を成していたものが根こそぎ失われた風景だった。
(…中略…)
『被災地のジャーナリズム』は、そうした10年間の被災地の変容と内側からの視点を伝えてきた論考や、2020年の「いま」を伝えるルポルタージュをまとめ、当事者の声からすべてが始まる――という私自身の学びとさせてもらった被災地取材の経験をつづった。
(…中略…)
未曽有の災害は、東日本大震災の以前にも阪神淡路大震災があり、上越地震があり、以後には熊本地震や西日本豪雨などが続き、新たな被災地が毎年のように現れる。その風化をこの列島は許さないかのようだ。当事者たちと同じ時間を共に生き、その声の発信を助けて外の人につなぎ、歳月を超えて伝え続ける者が、あらゆる被災地にいてほしい。忘却される被災地が一つもないように。その願いを、東北の地の取材者から届けたい。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。