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アディクションと金融資本主義の精神 鈴木直(著/文) - みすず書房
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アディクションと金融資本主義の精神 (アディクショントキンユウシホンシュギノセイシン)

哲学・宗教
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発行:みすず書房
四六判
重さ 525g
392ページ
定価 5,300円+税
ISBN
978-4-622-09604-7   COPY
ISBN 13
9784622096047   COPY
ISBN 10h
4-622-09604-8   COPY
ISBN 10
4622096048   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2023年3月16日
書店発売日
登録日
2023年2月10日
最終更新日
2023年3月9日
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紹介

中毒、依存、嗜癖(しへき)などと訳される「アディクション」。スマホ、ギャンブル、ゲーム、飲酒、買い物……その対象は多岐にわたり、今日のネット社会ほどアクセスが容易になったことは人類史上かつてない。短期報酬を追い求めるアディクション化した金融経済は、実体経済を呑み込みながら、資本主義のカジノ化を推進している。
拡大するアディクションと、不安定化する金融資本主義。著者はそこに、人間の認知機能にそなわった特異な能力と脆弱性が深く関与していることを突き止める。そもそも近代化と資本主義の内に、アディクションを生み出す認知的なメカニズムが潜んでいるのだ。本書では、カント、ヘーゲル、ゲーテ、マルクスらの近代思想をふり返りながら、両者の関連をたどっていく。
しかも認知機能には限界がなく、それゆえ現代資本主義は、土地も人口も資源も尽きることがない無限の仮想空間(メタバース)に新たな収益源を求めつつある。
社会の断片化によって孤立した個人がアディクション的行動に走り、それが資本主義をさらに不安定化させる。拠り所を失った個人は、やがて独裁者やカルト集団にも容易に隷従することになるだろう。
アディクションを抑制しながら、民主主義が資本主義をコントロールする社会をつくり上げていくことは可能なのか。広い視野と多様な領域から、共に解決を求める場を開く。

目次

序章 拡大するアディクション
1 植木等の時代
2 笑えなくなった現代のアディクション
3 深刻化するネット依存
4 アディクションと金融資本主義

第一章 アディクションとは何か
一 定義をめぐる歴史
1 ケル博士の定義
2 薬物依存と行動嗜癖
3 ICD 11の新分類
4 DSM 5の新分類
5 エピジェネティック・ランドスケープ
二 本書の定義
1 重視しない二つの問題
2 自発性・操作性・短期報酬性
3 不本意性

第二章 アディクションと認知機能
一 人はなぜアディクションに陥るのか
1 啓蒙主義理論
2 合理的選択理論
3 報酬過敏化理論
4 デュアル・プロセス理論
二 認知機能の生物学的基礎
1 生物学的視点の拡大
2 リードルの実験
3 擬合理的装置のアルゴリズム
4 「あ、そうか」体験
三 ギャンブルと認知機能
1 ツキと実力
2 ドストエフスキーの『賭博者』
3 秩序への期待
4 ギャンブルの魅力
5 擬合理的装置と合理的装置

第三章 適応か、介入か
一 アディクションの抑制
1 玉あそびはなぜアディクション化しないのか
2 相互行為による複雑性の学習
3 ルールによるアディクションの抑制
二 人類史の二つの革命
1 適応から介入へ
2 第一の革命──農業革命と世界宗教
3 第二の革命 近代化
三 近代化の二つの顔
1 市民革命と産業革命
2 日本の戦後思想
3 「近代化とは何だったのか」という問い

第四章 市民社会の正当化理論
一 主権の正当化──ホッブズ
1 相互行為に紐づけ、さらに再構成する
2 ホッブズの社会契約説
3 ホッブズの二つの難点
二 所有権の正当化──ロック
1 ホッブズとロックの共通点と違い――生存権と所有権
2 所有権の保護
3 リベラリズムの源流
三 道徳規範の正当化──カントとスミス
1 権威をどこに求めるか
2 商工業の発展がもたらす秩序・自由・安全
3 市民革命としての近代の遺産
4 挫折したプロジェクト

第五章 選択の自由とは何か──ヘーゲル
一 危機の診断
1 「選択の自由」のどこが問題なのか
2 危機の先見的な批判の重要性
3 ヘーゲルとゲーテ
二 ヘーゲルの自由論
1 ヘーゲルが現代的事例に対応するとしたら
2 自由と意志
3 普遍性としての意志α
4 特殊性としての意志β
5 個別性としての意志γ
三 自由と恣意はどう違うか
1 中間物としての恣意
2 恣意に潜む不自由
3 真の自由とは何か

第六章 操作的介入とは何か──ゲーテ
一 ゲーテの色彩論
1 自然観察から介入実験へ
2 ニュートン批判
3 相続すべき遺産
二 客観的理性と主観的理性
1 ホルクハイマーの問題提起
2 よみがえるゲーテの批判
三 主観的理性の自己過信
1 因果律の過大評価
2 産業社会のリスク
3 ダスグプタ・レビュー

第七章 金融資本主義とアディクション
一 貨幣とは何か──マルクス
1 近代資本主義の成立
2 フィクションとしての貨幣誕生物語
3 マルクス貨幣論の二つの系統
4 価値形態論
5 棒砂糖と鉄片
6 貨幣問題の核心
二 マルクスのフェティシズム論
1 王と臣下の寓話
2 フェティシズムとは何か
3 貨幣と宗教
三 金融資本主義の誕生
1 民主主義的資本主義の退潮
2 新自由主義の勝利行進──上からの階級闘争
3 ブレトン・ウッズ体制解体がもたらしたもの
4 金融資本主義の成立
5 投機対象となった通貨
6 新自由主義と金融資本主義の二人三脚
四 資本主義の最後の楽園 アディクション
1 均衡か、不均衡か
2 デリバティブの拡大
3 トランプが突きつけた二つの現実
4 認知機能には限界がない──アディクションの解放区へ
5 来るべき社会

結語
1 人類史に何が起こったのか
2 残された課題

あとがき
人名索引

著者プロフィール

鈴木直  (スズキタダシ)  (著/文

鈴木直
(すずき・ただし)
1949年東京生まれ。ドイツ思想史専攻。東京大学教養学部ドイツ分科卒業、同大学院比較文学比較文化修士課程修了、博士課程退学。東京医科歯科大学教養部教授、東京経済大学経済学部教授(社会思想史)を歴任。著書に『輸入学問の功罪』(ちくま新書、2007)、『マルクス思想の核心』(NHK出版、2016)、訳書にマルクス『資本論』第一巻(共訳、筑摩書房)、ベック『〈私〉だけの神』(岩波書店、2011)、シュヴェントカー『マックス・ウェーバーの日本』(共訳、みすず書房、2013)、シャバス『勝者の裁きか、正義の追求か』(岩波書店、2015)、シュトレーク『時間かせぎの資本主義』(みすず書房、2016)、『ヴァルター・ベンヤミン/グレーテル・アドルノ往復書簡 1930-1940』(共訳、みすず書房、2017)、ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ』(みすず書房、2020)などがある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

上記内容は本書刊行時のものです。