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すべてが武器になる
文化としての〈戦争〉と〈軍事〉
- 初版年月日
- 2021年7月20日
- 書店発売日
- 2021年7月16日
- 登録日
- 2021年5月7日
- 最終更新日
- 2021年7月15日
書評掲載情報
2021-09-11 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 原克(早稲田大学教授) |
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紹介
「日本刀は武器なのか芸術品なのか?」といった問いに向き合わず、武器=破壊=悪/文化=創造=善という二項対立を声高に唱えてきた敗戦国日本。しかし、その単純な二項対立は、特殊な現代日本イデオロギーにしか過ぎないことが鮮明になりつつある。本書は、武器と文化の不可分な関係をあらゆる時代や事象から、面白くかつ説得的に述べることで、新時代に必要とされる戦争論や軍事論の基礎的な知識を提供する、戦争文化論である。
目次
◆序章 芸術的、宗教的、象徴的――武器へのまなざし
武器は人を惹きつける/三島由紀夫とF104戦闘機/芸術としての武器/宗教における「武器」/慰霊と武器/武器はステータスでもある/海軍士官の短剣/武器とは何か、何が武器なのか?/イギリス軍のカーペットレイヤー/はしごと鉄条網/ヘルメット、腕時計/音楽、映画、ボールペン/どんなものでも武器と認識できる/「武器」「兵器」という日本語/武器の定義について
◆第1章 動物、健康、保存食――生きている武器たち
武器・兵器としての動物/毒ヘビ、ウイルス、ハト/戦場の犬たち/さまざまな軍用犬/地雷犬、パラシュート犬/戦争を支えてきた馬/第二次大戦時、800万頭の軍馬/ロバ、牛、象/戦争に一番必要なのは「健康」/兵士のための栄養と消毒/「痛み」を消すという夢/ヴォランタリズムとミリタリズム/ナイチンゲールの活動/戦争のための看護と医学/食べ物と補給/軍隊の行動範囲を広げた保存食/食品を密封する技術/缶詰の登場と普及/アメリカ陸軍の保存食研究/急速冷凍技術の普及/戦争を支えた食事
◆第2章 鉄道、飛行機、カメラ――組み合わせて武器にする
軍事に貢献した鉄道/鉄道が大量の兵士を運ぶ/装甲列車と列車砲/戦争大規模化の一因としての鉄道/鉄道と関連する技術/飛行機の登場/戦争による飛行機の発展/空中での戦いの始まり/空から宇宙へ/すぐに軍事利用された気球/飛行機の時代へ/飛行機を構成するさまざまな部品/ゴム、アルミ合金/透明な樹脂とナイロン/飛行機を前提とした焼夷弾/機銃を飛行機に搭載するための工夫/新たに求められた照準器/飛行機からの通信/カメラと飛行機/「組み合わせ」で武器になる
◆第3章 ネジ、工具、標準化――武器とものづくりの発想
武器の歴史、道具の歴史/原始的な武器/アルトラルの意義/武器のアイディアを残したダ・ヴィンチ/ダ・ヴィンチの武器に「独創性」はなかった/アルキメデスの武器/武器を構成する基本的な部品/ものを作るための道具/軍事がものの作り方を変えた?/「互換性」という発想/アメリカで発展した部品の「互換性」/労働慣習と工作機械/「互換性」から「標準化」へ/戦争が後押しした「標準化」/武器づくりにおける革命
◆第4章 語学、民族学、宗教――武器になりうる人文知
最も重要な武器は「語学」/アメリカ軍の日本語専門家養成/連合軍翻訳通訳部/日本軍の語学教育/不十分だった英語教育/ベネディクトの「菊と刀」/第二次大戦時の日本における「民族学」/総力戦研究所/戦時中の民族研究/「深く戦争に関わった学問」/さまざまな国策調査/イスラーム研究の狙い/日本人キリスト教徒による「宗教宣撫工作部」/後の枢機卿、田口芳五郎も加わる/神父と軍刀/マニラに送られた女子宗教部隊/宗教は戦争の「原因」ではない/宗教は「軍事技術年間に加えられるべきもの」/軍隊のなかの聖職者
◆終章 文化、戦争、平和――結局すべてが武器となる
「兵器の新概念」/武と文を分けない/戦争と軍事は「文化」ではない?/「文化的平和国家」/「文化」の語源/曖昧な「文化」と「文明」/三木清による「文化」/文化としての戦争/文化は「良いもの」なのか/戦争は専ら「破壊的」なのか/戦争・軍事も、所詮は文化/「デュアルユース」と「両義性」/武器は平和を知りうるか
参考図書案内
上記内容は本書刊行時のものです。