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部落差別の原因 川元 祥一(著/文) - 三一書房
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部落差別の原因 (ブラクサベツノゲンイン) 国家による天候支配の思想=仏教の「殺生禁断」 (コッカニヨルテンコウシハイノシソウ ブッキョウノセッショウキンダン)

社会一般
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発行:三一書房
四六判
縦188mm 横127mm 厚さ17mm
重さ 275g
240ページ
定価 2,200円+税
ISBN
978-4-380-24001-0   COPY
ISBN 13
9784380240010   COPY
ISBN 10h
4-380-24001-0   COPY
ISBN 10
4380240010   COPY
出版者記号
380   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2024年2月9日
書店発売日
登録日
2023年12月18日
最終更新日
2024年2月1日
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紹介

今も続く部落差別の被害者救済を!
千年続いた国家による「天候支配=殺生禁断」の思想は非合理で誤りだった。
その犠牲者・直接的被害者は今も差別に苦しんでいる。
国家は直ちに誤りを正し差別の犠牲者を救済すべきである。
六世紀末に始まった「神仏習合政治」のなか、仏教の戒律が政治権力として活用され、多くの矛盾を持ち、しかもその矛盾は政治的に解決されるのではなく、さまざまな「犠牲」を強権的に残しながら進み、「神仏習合政治」が終わった後も、いわば大衆的には「意味も分からない」ままにその「犠牲」だけは残る。そうした社会構造を作ってしまった。部落差別の「不可解」さ「不明さ」「複雑さ」はそうした社会構造の中にすっぽりとはまり込んでしまっているのが大きな要因。

目次

第1章 その原点・端緒
1節 部落差別が始まる原点にある思想
1 神仏習合政治=国家仏教の戒律の裏側「破戒=悪=排除」
2 仏教が政治的、制度的影響力を持った
3「護国三部経」に見られる「不殺生戒」

2節 仏教の戒律「不殺生戒」
1 「不殺生戒」はほぼすべての教団の第一義的戒律
2 「金光明経最終巻」の偏見=一方的・独善的価値観=部落差別の原点

第2章 仏教による「天候支配」「自然支配」の妄想
1節 神仏習合政治と仏教の戒律
1 天皇に尽くす仏教、その教説――「護国三部経」より
2 高圧的で差別的な仏説

第3章 日本では「殺生禁断」が「天候支配」のイデオロギー化する
1節 この国で初めて「殺生禁断」「肉食禁止」を発令した天武天皇
1 家畜に絞られ「金光明経最終巻」に通底する禁令
2 奈良時代、諸天皇の詔は「天候異変」防止=仏教の「殺生禁断」

第4章 「天候支配」=「殺生禁断」が新しい「型」となる
1節 検非違使の誕生とキヨメ=穢の排除
1 天候支配の新しい「型」
2 新しい「型」が社会的構造=部落差別の原因となる
3 検非違使の「罪業・罪穢」と「触穢意識」

第5章 社会的絶対矛盾
1節 「差別構造」を定着させた「落し穴」
2節 検非違使の本来の役務「行刑」が「代行」に変わっていく
1 「被差別部落」形成の祖型
2 百姓は牛・馬を殺して食べていた

第6章「不殺生戒」「殺生禁断」に対立した人々と文化
1節 国家と民間の対立・矛盾
1 皇極天皇が参加した「殺牛馬雨乞」・六四二年
2 縄文時代からの狩猟・肉食文化を継承する祭と神事
3 「動物供犠」を「汚穢(とが)」「咎祟(たたり)」と見る「官人」「神職=ハフリ」たち
4 巫覡(ふげき)禁止令について
5 濫僧=俗法師=声聞師=雑芸能=賎民

第7章「殺生禁断」が豊作をもたらしたとする記録
1節 「殺生禁断」=「天候異変制御」の妄想が民間に広がる
1 多発された「殺生禁断」と、その結果
2 鎌倉時代の天候支配――武士による自然支配と仏教

2節 やがて「被差別者」とされる「屠者」「革作」「皮田」
3節 後北条氏の「革作」と、その集団(共同体)の形成過程

第8章 妄想の頂点――「神風」
1節 「神風」と「部落差別の原因」に共通する天候支配のイデオロギー
2節 「神風」という虚像
1 偶然が巻き起こす神話「神風」
2 「神国神話」の背景
3 鎌倉幕府から地域へ発布した「制札」

第9章 仏教による「現世利益」と「殺生禁断」
1節 叡尊と忍性による「屠者」などの組織化・労動力化
1 戒律復興運動の西大寺系僧・叡尊
2 叡尊の弟子・忍性の「殺生禁断」
3 鎌倉幕府の現業=民衆支配
2節 東北地方支配のイデオロギー

第10章「部落共同体」の成立――百姓=分業連合の中の部落の仕事
1節 「部落共同体」形成直前
1 百姓村の「屠者・革作・皮田」――百姓とは分業連合体を意味する
2 「細工」として現れる諸職人
3 差異があって成立する「分業」――分業の水平化
2節 百姓村「村落共同体」の「分離・分断」――ヨコ社会がタテ社会に
3節 百姓として分業連合体が共存する様子――「皮田・革作」を中心に
1 牛を買って我が家に戻る皮田・革作
2 草場権(斃牛馬処理範囲)の原型

第11章 「百姓村の分離・分断」――生活に必要な多様な分業が国家に握られる
1節 「兵農分離」「農商分離」を見直す
2節 「兵農商分離」では分類・分析できない社会の全体像
1 「奉公人」としての「皮田・革作」
2 「権利と義務」=「双務関係」の意味するもの

第12章 部落共同体の「双務関係」
1節 各地にある行刑と斃牛馬処理権の関係
1 戦国大名による「禁制」「折紙」
2 「穢多」「非人」の権利と義務
3 長吏頭・弾左衛門と燈心
4 大阪など地域の様子
2節 諸職における[タテ」構造の支配
1 農民と双務関係
2 鍛冶、大工など職人の場合
3節 江戸時代の職業的カテゴリー
1 「士・農・工・商・エタ・非人」を職業として見直す

2 変質する「共同体」――失ったヨコの関係を取り戻すことは出来るか――
3 諸職・分業と国家
4 部落共同体の場合
4節 現代的差別の体質、その構造の始まり
1 「百姓村の分離・分断」と部落共同体
2 一村独立した「エタ村」その共同体に集中する差別
3 職業でなく「空間」を「エタ村」として差別し始めたのは国家だった

第13章 民間の「雨乞」に残る動物供犠「殺牛馬」
1節 天候支配=殺生禁断なのになぜ「殺牛馬雨乞」が残るのか?
1 真逆の形の雨乞「穢の供犠」―その記憶と伝統
2 中世末、百姓・農人の「雨乞=祈雨」「止雨」の願い
3 「不浄の物を入れる」となぜ「雨が必ず降る」か?

第14章 江戸時代の雨乞の特徴
1節 乖離した国家と民衆・百姓(百姓は農民だけではない)
1 仏教を軸にした「雨乞」
2節 仏教の政治「宗旨人別帳」
1 部落差別の「原点、その端緒」
2 「穢」を受け入れる民衆の素地

第15章 民間に残る伝統としての「動物供犠」「殺牛馬雨乞」
1節 農民が部落に「依頼」する「殺牛馬雨乞」の型
1 近・現代、農民主体の「雨乞」―「動物供犠=殺牛馬=穢を入れる雨乞」
2 高谷重夫と寺木伸明が示す近・現代の「動物供犠雨乞」
2節 農村からの「依頼」と部落の「請け」の形
1 江戸時代農民の記録――大阪・箕面の雨乞
2 太平洋戦争前後の殺牛馬雨乞――見聞録
3 「そんなことをしても効果はない」――宍粟郡神戸村
3節「殺生禁断」による天候支配は国家の間違い

終章 まとめ
1節 科学的思考と「妄想」「虚像」の闘い
1 マイナスイメージの脱却
2 「殺生禁断」による「天候支配」を反省、訂正する
3 原因と現状の調査と科学的精神を
2節 「解放令=賤称廃止令」はなぜ失敗したか――現状と新法
1 部落問題の深層から見る
2 肉食文化の伝統と、神仏習合政治の矛盾、対立、その解禁
3節 現代も「部落差別」が未解決、とする国家の認識
1 「解放令」の弱点を克服する
2 新法の「基本的理念」
3 部落差別特有の歴史、そこに生れた文化総体からの解放・解決
4 原因を示すことでそれら総体からの解決が見えてくる

著者プロフィール

川元 祥一  (カワモト ヨシカズ)  (著/文

作家、評論家
1940年兵庫県神戸市に生まれ、岡山県津山市で育つ。1965年明治大学文学部卒。
伝統芸能研究・千町の会 代表。東京学芸大学非常勤講師。立教大学非常勤講師。東日本部落解放研究所 所員。東京都人権啓発センター評議委員(2016―2022年)

上記内容は本書刊行時のものです。