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病気の日本近代史
幕末からコロナ禍まで
- 初版年月日
- 2021年2月6日
- 書店発売日
- 2021年2月1日
- 登録日
- 2020年10月1日
- 最終更新日
- 2021年1月29日
書評掲載情報
2021-02-21 | 読売新聞 朝刊 |
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紹介
新型コロナ克服のヒントは「歴史」にあり
近代日本は「流行病」「難病」との闘いの連続だった--。
明治天皇や陸海軍兵士たちが悩まされた脚気から、軍民に蔓延したスペイン風邪などの伝染病、「亡国病」と恐れられた結核やマラリア、患者が増える中で治療法の模索が続いてきた精神疾患、現在死因トップのがんまで、日本人は多くの病気に悩まされてきた。
そして今また、「新型コロナウイルス」という未知の病が襲来している。果たして、この新たな感染症といかに向き合うべきなのか。
〈人類の歴史は、一面では感染症(伝染病)との戦いの歴史でもあった。だが戦うと言っても、一方的な防戦と敗北の連続で、十四世紀のペスト流行では欧州大陸の住人の半分近くが倒れ、人々は全滅の恐怖におののいた。
ようやく勝機が訪れたのは、病原である細菌やウイルスの正体が見え始めた、たかだか二百年前からである。(中略)
だが戦いが終ったわけではない。〉
「第八章 新型コロナ禍の春秋」より
本書は、医師や医療専門家ではなく、政治史や軍事史を中心に研究・執筆を重ねてきた現代史家の手になる医学史である。そのため、医学の研究書とは異なり、歴史家の視点から「難病の制圧をめざす国家的な総力戦」の過程を検証しつつ、「人間の生死をめぐって運と不運、喜びと悲しみが交錯するドラマ」を描きだしている。
新たな疫病が猛威を振るう今こそ知るべき“闘病と克服の日本史”。
【編集担当からのおすすめ情報】
本書は、もともと著者の秦氏自身が盲腸(虫垂炎)の手術を受けた際に読んだ医学史の面白さに引き込まれ、歴史家の手法で近代日本の医学史に取り組んでみようと考えたことがきっかけでまとめられたものです。
今回、7章立てとなっていた同名の単行本(2011年刊)に、新型コロナウイルスに関する新章などを大幅に書き下ろし、さらに統計データなどを最新のものに更新して新書化しました。
結果的に500ページ近い大著となりましたが、著者が集めた闘病にまつわる秘話や難病克服のエピソードがたくさん盛り込まれており、医学の専門的な知識がなくても、近現代の日本人の“苦闘”の足跡を学ぶことができる読み物となっています。
まさに今この時期だからこそ読みたい貴重な史実が満載で、一度読み始めたらページをめくる手が止まらなくなる一冊です。
目次
第一章 黎明期の外科手術
盲腸炎――切るか散らすか/本邦初の虫垂切除は?/華岡青洲の妻と母/乳がん手術の「近代化」/突出した幕末の「名医」たち/主流になったドイツ医学/スクリバと近藤次繁
第二章 脚気論争と森鴎外
明治天皇の脚気/脚気菌から栄養障害説まで/高木兼寛の脚気退治/軍医森鴎外の兵食論/「露国以上の大敵」と/麦飯論争の行く末/ビタミンBの発見
第三章 伝染病との戦い
疫病神にとりつかれ/「あばた」も「えくぼ」?/あいつぐ細菌の発見/ペストから生還した青山と北里/ペストの本邦侵入事情/黄熱病と野口英世/忘れられていたスペイン風邪/抱月・須磨子の純愛劇
第四章 結核との長期戦
先史から明治まで/一葉・陸奥・子規・正子は/「不如帰」と「野麦峠」のヒロイン/富士見高原のユートピア/堀辰雄と「風立ちぬ」の世界/死因第一位から三十位へ/戦後文人たちの闘病記
第五章 戦病の大量死とマラリア
ミンドロ島の大岡昇平/日清・日露戦役の病跡/戦病の主役は?/中国戦線では/新顔の栄養失調症/南方戦場では/明暗を分けた日米マラリア戦/輸血とペニシリン
第六章 狂聖たちの列伝
精神科医・石田昇の再評価/精神医学の先駆者たち/芦原将軍の年代記/ひじりとぞ思ふ/精神病の輪郭と定義/漱石から大川周明まで/平沢貞通と帝銀事件/狂犬病とコルサコフ病
第七章 肺がんとタバコ
肺がん死が稀だった時代/肺がんの促進因子は/非喫煙者のがんが増えている/平山コホートの転変/ウィーン会議では物別れ/疑わしきは罰すWHO路線/「周りの人」の「様々な疾病」/受動喫煙の怪/「健康ファシズム」への道/次の標的は酒、自動車?
第八章 新型コロナ禍の春秋
復活の日は/パンデミック候補の揃い踏み/情報統制下の武漢ウイルス/北イタリアから米大陸へ/「首都感染」の水際で/クラスター潰しと自粛体制/「ファクターX」を追う/洋の東西を見渡せば
上記内容は本書刊行時のものです。