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日蓮主義とはなんだったのか 近代日本の思想水脈 大谷 栄一(著/文) - 講談社
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日蓮主義とはなんだったのか 近代日本の思想水脈 (ニチレンシュギトハナンダッタノカ キンダイニッポンノシソウスイミャク)

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発行:講談社
四六変型判
674ページ
定価 3,700円+税
ISBN
978-4-06-516768-7   COPY
ISBN 13
9784065167687   COPY
ISBN 10h
4-06-516768-X   COPY
ISBN 10
406516768X   COPY
出版者記号
06   COPY
Cコード
C0014  
0:一般 0:単行本 14:宗教
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2019年7月10日
最終更新日
2020年3月3日
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書評掲載情報

2019-11-17 毎日新聞  朝刊
評者: 白井聡(京都精華大学専任講師・政治学)
2019-10-12 日本経済新聞  朝刊
評者: 中島岳志(政治学者)
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紹介

【担当編集ノート】
本書の著者の大谷栄一さんは近代日本における仏教と社会の関係、なかでも「日蓮主義」が果たした役割を若き日から30年近く精力的に研究してきた方です。そのお仕事をこのたび大部の著作にまとめるお手伝いをするにあたり、編集者として感じたことを以下に記し、「刊行の主旨」「内容紹介」に代えるしだいです。
明治以降、内村鑑三、高山樗牛、宮澤賢治や北一輝などの思想家や文学者、満洲事変を主導した石原莞爾、血盟団事件の指導者・井上日召、「死なう団」の江川桜堂、創価学会創設者の牧口常三郎、新興仏教青年同盟の妹尾義郎など、さまざまな分野の多彩な人物が日蓮に傾倒しました。作家にして浄土宗僧侶だった寺内大吉はその著書『化城の昭和史』において「極右テロリズムから左翼の守備範囲へまで浸潤できる日蓮思想……」と述べているくらいです。いったい日蓮のどこにそんな魅力があるのか? また多くのインテリの心をとらえた親鸞に比してなにが違うのか……? 帝国日本の勃興期にあって日蓮の「思想」をイズムとして編成することに成功した二大イデオローグが、国柱会創始者の田中智学と顕本法華宗管長で統一団を結成した本多日生でした。二人とその支持者はいったいどのような国家像と社会のありようを求めていたのでしょうか。必ずしも日蓮主義はファナティックなものではありません。もともとそれは法華経を文献学的に吟味することを認め、同時に教義に基づいた個々人の純粋な信仰(belief)を重視する点できわめて近代的、ある意味でルター的プロテスタンティズムに近いものであるとさえ言えるでしょう。内村鑑三の信仰がJesusとJapanという「二つのJ」に支えられたものであったように、やがて日蓮主義の信仰はNichirenとNipponという「二つのN」の一致にこそ全世界を救う道があるという確信にいたります。智学・日生以降の世代においてその回路がテロリズムや東亜連盟、仏教社会主義などのさまざまなかたちで「国家社会のあるべき姿」として「模索」されるのです。
いずれにせよ日蓮主義に顕著なのは強烈な「此岸性」「在家性」「能動性」です。仏国土はこの地上にあり(娑婆即寂光)、人はそのために生きねばならない。あの林先生ではありませんが、「仏の国は、いつ、どこに?」と自問して「今でしょ! ここに造るんでしょ!」と奮闘していくのが日蓮主義者であると言っていい。その延長線上に敗戦後の創価学会の大躍進、公明党の結党が見えてくるでしょう(じつは田中智学も立憲養正会という政党をつくり、挫折しています)。つまり「日蓮主義」はいまでも生きているのです。本書は現代日本にまで伏流する思想水脈を問う渾身の一冊です。

目次

序 章 近代日本と日蓮主義
第一章 田中智学と日蓮主義の誕生
   1 明治政府の宗教政策と日蓮教団の動向
   2 在家にして祖師に還る
   3 『宗門之維新』
第二章 本多日生の積極的統一主義
   1 若き改革派
   2 近代的教義の追求と雑乱勧請停止
   3 四箇格言問題から統一団へ
第三章 高山樗牛の日蓮論
   1 個人と宗教
   2 国家を超越する真理
   3 煩悶青年の受け皿
第四章 仏教的政教一致のプログラム
   1 法国冥合
   2 八紘一宇
   3 日露戦争と宗教
第五章「修養」としての日蓮主義
   1 日露戦後の社会危機
   2 大逆事件の衝撃、国体の擁護
   3 明治の終焉と日蓮主義
第六章「日蓮主義の黄金時代」と日本国体学
   1 多様な展開
   2 統一団と国柱会
   3 国体の宣揚、国民の教化
第七章 石原莞爾と宮沢賢治、そして妹尾義郎
   1 国体と予言と
   2 更に国土を明るき世界とし……
   3 仏陀を背負いて街頭へ
第八章 立正大師諡号宣下と関東大震災
   1 大正十一年十月十三日
   2 上行のアドヴェンティズム
   3 震災後の思想状況
第九章 観念性への批判、実践の重視
   1 第一世代の栄光と黄昏
   2 マルクスか、日蓮か
   3 満洲事変
第十章 テロルの宗教的回路
   1 赤色仏教
   2 井上日召という男
   3 血盟団から五・一五事件へ
第十一章 攻撃される日蓮主義者たち
   1 天皇機関説をめぐって
   2 二・二六事件と「南無妙法蓮華経」
   3 曼荼羅国神勧請不敬事件
第十二章 理想はどこに
   1 新興仏教青年同盟への弾圧
   2 日中戦争
   3 東亜連盟論
第十三章 アジアへ、そして世界へ
   1 五五百歳二重説
   2 軍服を脱いだ石原莞爾
   3 国体を説く者が国体に反してゆく逆説
終 章 焼け跡に仏国土を!

著者プロフィール

大谷 栄一  (オオタニ エイイチ)  (著/文

1968年、東京都生まれ。東洋大学大学院社会学研究科社会学専攻博士後期課程修了。博士(社会学)。(財)国際宗教研究所研究員、南山宗教文化研究所研究員を経て、現在、佛教大学社会学部教授。専攻は宗教社会学・近現代日本宗教史。明治期以降の「近代仏教」の展開や、現代の宗教者や宗教団体がおこなう社会活動、「地域社会と宗教文化」の関係を研究している。著書に『近代日本の日蓮主義運動』(法藏館)、『近代仏教という視座―戦争・アジア・社会主義』(ぺりかん社)、『地域社会をつくる宗教』(共編著、明石書店)、『人口減少社会と寺院―ソーシャル・キャピタルの視座から』(共著、法藏館)、『近代仏教スタディーズ―仏教からみるもうひとつの近代』(共編著、法藏館)、『日本宗教史のキーワード―近代主義を超えて』(共編著、慶應義塾大学出版会)、『ともに生きる仏教―お寺の社会活動最前線』(編著、ちくま新書)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。