夢は世界へ、なんか少し扉が開いたような気がする
来年の4月を迎えると、創業17年目に入ります。
西日本出版社のテーマは「西日本のことを西日本の人間の手で、西日本から全国に発信すること」基本これでやってきました。
著者は、概ね飲む中で出会った人たち、僕が人に嵌ったらそこからが本作りのスタート、すごい人たちがほんといらっしゃるんですよね。
ある種順風満帆にきていたのですが、あれっと思ったのは、忘れもしない一昨年の、あれいつやったかな・・・、忘れとるがな!!
街中やロードサイドの本屋さんの無くなり方が、なんか変わってきた。
「売れへんねん」の店主の声が、「お客さんけえへんねん」に変わってきた。
同時に、これは印象なんだけど、自己啓発本ばかりが店頭をしめてきて、書店さんでの本との出会いが無くなってきた。
西日本出版社は、売り上げの100%が本の販売。
自費出版も、他所の下請けも、他の事業もまったくやってないので、「売る場所」が無くなるのは死活問題なのです。
そんなわけで、去年からずっと、どないしたらええんやろと悩み中。
とは言っても、動いてみないとなにもわかりません。そして始めたことは・・・。
一つ目、版元ドットコム西日本で、毎月第一月曜日に、メンバー版元の連続トークライブを始めました。
場所は、森ノ宮キューズモール、ここに行けば毎月一回ではありますが、版元の人がしゃべっている。入場料は原則500円。しゃべる人も払います。
関西に出版社があるということを認識している人が少ないので、このイベントで知ってもらうことで地道な話ではありますが、地元の本に愛着を持ち、本を買う習慣をもってもらえたらいいなと思っています。
二つ目、昔いた出版社の先輩が、岩波書店を定年になって、岩波でやっていたことを続けていきたいという相談がありました。岩波さんは、仕事を外注しない方針なので、外部スタッフとして、本を作るということはできないそうなんですね。
話を聞くと、流石にレベルも高く、面白そうなんで、先輩レーベルを立ち上げようかと思っています。これは西日本に縛られず、なんでもありで行こうと思っています。
三つ目、あとは、一点当たりの平均初版1万部をベースに営業計画を立てていたのを、5000部程度に落とす。ちょうど、この10年間の出会いの中から動き出した企画がたくさんあるので、これもできそう。
四つ目、原則は、やっぱり、本屋さんを一軒でもたくさん回って、一緒に動くことを増やして、ムーブメントを作っていく。テレビ関係の友人が増えてきたので、三社をうちで取り持ってトライアングルを作ることで、面白い動きが立ち上がったらええなあとおもっています。
最後に、思いは海外。
「獺祭 天翔ける日の本の酒」を創ろうと思ったきっかけの一つが、社長の桜井さんから聞いた、地方の地酒蔵が世界に行って、自慢の酒をたくさん売った話の凄み。それ以来、国内だけでは無理かもと、もやもやしたものが腹の中に生まれてきていました。
そんなわけで、8月に台湾に行ってきました。
まあまあ、はじめての台湾・台北、なんかすっごく楽しい旅でした。
すべては、西日本出版社の本を6点ほど出したいという嬉しいお申し出を唐山出版社の陳社長からいただいたことから始まりました。
日本に留学中のりんさんが、前に書いた、版元ドットコム西日本の連続トークライブの僕の回を聞きに来てくれていて、呑みに行って、その時差し上げた目録が陳さんの手に渡り、つまり、うちのことを知っている皆さんならもうお気づき、そう、いつものように飲み会で横の席になった人と本を作ることになるという出会いがまたあったわけです。
事前のお話では、とりあえず2点ずつ様子を見ながらということだったのですが、それではプロモーションしにくいということで一挙5点同時出版からスタートすることになりました。
この唐山出版社さん、すごいんです。
創業は1979年。日本で言うと東大にあたる台湾大学の大学院で文化人類学を研究していた陳さん、時悪く、オイルショックのためお父様の事業がうまくいかなくなったため、自分で食べる手段が必要になって、台湾大学のすぐそばの温羅汀で本屋さん唐山書店を創業。
専門の文化人類学の本をはじめ、専門書を扱うかたわら、発禁になっていたような社会科学書や反体制の本も販売し、学生の知性が溜まる場所になっていったようです。そこに、アメリカからも最新の学説が書かれた本が、大量流入。
ただ、高くて、みんな買えない。
学生が先端の情報を安価に買えるようにという意味を込めて、出版部門を設立。
現在では、書店が4店舗、出版社1社で、正社員だけで20名を抱えているそうです。
その唐山出版社さんと西日本出版社が、お互いに本の優先翻訳権を持つということ。
うちの本の中国本土の出版社との交渉権を唐山出版社を預けるということが、今回の契約の肝ですね。
数年前から書店が集まり、陳さんが理事長となって台湾独立書店文化協会を設立し、その出版部から、B5判オールカラー220Pの本屋さんガイドを出版したり、唐山書店や誠品書店のある、書店・出版社街「温羅汀」のタウンマップを制作しています。
最初に出てきたりんさんは、今はこのマップのライターさん。この原稿も面白かったので、一枚ものでないちゃんとした本を、唐山出版社と日台同時発売やりましょうと話をしています。
でね、りんさんもただ者でなく、この台湾大学の大学院で日本統治時代の台湾文学を研究していた強者。当時、日台で同時に15歳の天才ベストセラー少女作家が出てきた話をしてくれました。今回は、時間がなかったのですが、次に行ったときには、その話も深く聞きたいと思っています。
もちろん翻訳権の実金額は少ないのですが、唐山出版社さんは中国本土にも売り込んでくださるとのこと。
売り上げのことより、その先の未知の世界への扉があきかけたことが楽しいんです。
西日本のことを世界に伝える道筋ができたことが嬉しいんです。
中国語どころか英語もできない僕には、新たな試練という言い方もできると思いますが、以上のもろもろをこなしながら、未来をこじ開けていきたい、そう思う、今日この頃なのです。