ChatGPTとひとり出版社
<ライチブックスは、2021年にスタートした東京にある出版社です。そのモットーは「本をひらく。世界をひらく。」です。ライチブックスは、絵本や児童書など、様々なジャンルの本を出版しています。例えば、中国人気絵本作家が送る「おひさまがおちないように」や、再建築不可物件の基礎情報から相続・投資・活用まで網羅した「再建築不可物件完全読本」などがあります>
みなさん、はじめまして。ライチブックス代表の江(こう)と申します。上記はChatGPTに「ライチブックスという出版社について教えて」と聞いて出力された文章です。
今年に入って猫も杓子もChatGPT。バブル状態です。これまで、新しい便利なテクノロジーが出現したら、雨後の筍のように関連本が出版されてきました。しかし近年はアマゾン等のダイレクト出版やnoteなどのプラットフォームが定着したせいか、日本でも話題になり始めた2月頃から膨大な量のChatGPT関連の電子書籍や有料コンテンツが販売されました。4月頃からようやく従来のような単行本も刊行され始めましたが、スピード感の違いをひしひしと感じた次第です。
ウェブ業界はすでにChatGPTが作成した記事で溢れています。出版業界に関しては、独創性・創造性の高い分野ではまだまだ先になるでしょう(と思いたい)。しかし、成熟した分野のマニュアル的な内容や法律解説、歴史的出来事の要約など、一部ではすでにChatGPTを活用している若手編集者も存在します。
では、私のようなひとり出版社がChatGPTを仕事で使うシーンはあるのでしょうか。
まず思いついたのは、書名や帯のキャッチコピー、DMの紹介文作成時のアイデアを出してもらうこと。試しに今度出す予定の本について、概要を入力して「書名候補を50個考えて」と入力しました。出力された候補のあまり参考になりませんでしたが、それでも2-3個は自分の中にはないボキャブラリーを使ったものもありました。課題を与える方法をもっと研究すれば、意外に使えるのではと思いました。
メールの文面の作成はどうでしょう。著者やデザイナー、印刷会社とやりとりが簡素化されたらたしかに効率が上がります。しかし結果はダメでした。出版・編集という特殊な業界ではテンプレ化できる要素が少なく、まったく使えません。命令を与える際、より詳細に入力する必要がありますが、ならばメールを自分で書いたほうが早いのです。
ただし、うまくいった例もありました。海外の出版社に日本語版の版権が空いているかどうか尋ねるメールを作成する際、ものの数十秒でテンプレを作成してくれました。逆翻訳してみましたが、相応のクオリティのビジネスメールを吐き出してくれたのです。
次は複雑な調べ物。例えば「2023年に出版された単行本(サイズは四六判、224ページ前後)」の価格帯について調べたい場合、今までは書店販売サイトなどにアクセスして自分から調べにいかなければいけませんでした。ChatGPTに聞けばすぐにそれがわかるのでしょうか。果たして試した結果、あまり役に立ちませんでした。なぜか某大手版元刊行の本のみの定価が何個か提示されただけ。複数の出版社名を具体的に与えて再度、命令しても出てきませんでした。さらに「今売れている本の傾向」や「類書はどれだけあるか」なども試してみましたが、いずれもまだまだ実用には程遠い状況でした(私の命令文の書き方が悪いのかもしれませんが)。
ただ、編集者の立場で使った場合、情報収集では大いに役立っています。例えば非英語圏の海外のニュース記事のURLを与えて「800字で日本語に要約して」と命令すると、ちゃんと出力してくれます。動画も大丈夫。YouTubeのリンクを与えて、内容を要約してもらうこともできます。ChatGPTを駆使することで、従来思いつかなかったような企画やアイデアが浮かぶこともあります。
以上がちょっとだけChatGPTを使ってみた結果と感想です。無料で使えるChatGPT(バージョン3.5)は精度が低く、平気で嘘情報を出力します。精度の高い有料版(バージョン4)を利用するには月20米ドル課金しなければいけません。約2700円。うーん、正直、課金しようかどうか今、猛烈に悩んでいます。
ChatGPTを使いこなしている出版社の方がいましたら、ぜひ話を聞きたいものです。