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旅する名前
私のハンメは海を渡ってやってきた
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2007年8月
- 書店発売日
- 2007年8月2日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2024年3月5日
紹介
雨宮処凛さん(作家)評
名前が変わるとは、いったいどういうことだろう。人から様々な名前で呼ばれるというのは、どんな気持ちだろう。逆にそのことは、自分自身の「核」を強く意識させることになるのではないだろうか。
彼女の名前は何度も変わる。本名、本名だけど読みが「日本式」、通名。しかしだからこそ、彼女は揺るぎない「自分」と対峙しているように見えるのだ。けっして肩ひじを張らない軽やかさで。
「在日」として生きる一人の女性の幼い頃の記憶、家族、仕事、恋、結婚、子育て、そして自分との、歴史との真摯な対話。日常から綴られる、私たちのすぐ傍にある物語。
目次
■小石川の家
ハンメ 食事の作法 ファンタジア アボジのウリマル ねみちゃん 帰還船
二人のハラボジ 風邪 チュサ ドブロク ハンメの買い物
■坂の上の学校
理科室と図書室 私の夢 セツラー 教会 アッポ 私の叔母 隣の姉さん
満さん 高校のバスケット部 国籍条項
■セブンティーズ
私の就職事情 旅券 再入国許可書 母語 成人式 処女 結婚狂想曲
カワジエンピツ君 真面目君 披露宴
■あらたな家族
年賀状 誕生日 過去帳 生協活動 子育て百科 再就職 読書
■蘇生した名
指紋押捺拒否 私の朝鮮語 梶村秀樹 国籍 投票所入場券 叔父の葬式 韓国旅行
■ハンメちゃん
夫の地域デビュー 生涯学習 息子の卒業式 パラム(風)の会
色・いろいろ水彩画 スジとニンニク キムチ ハンメちゃん ミックス
高校野球の正しい応援の仕方 ハンメちゃん家とユーくん家 イルム(名前)を旅して
前書きなど
家族じゅうから祝福されて誕生した無邪気な女の子は、学童期になると、悩みを抱えるようになる。その悩みは、まわりの大人に聞くことがはばかられた。どう切りだして話をすればいいのか解らず成長する。
社会に出て、およそ両親には経験できなかったであろう世界のなかで彷徨する。ひとなみに恋愛もしたが、別離が前提の恋物語だった。
私のなりたかった職業は選べなかった。運よく正社員にはなったが、キャリアを積み上げられる仕事は、高卒の女性には容易になかった。先が見えない苛立ちを抱え、衝動的に結婚をした。結婚したらなんとかなると、自身が蓋をした苦悩から安易に逃げようとした。
しかし、逃げられなかった。
苦悩の正体を手探りでさぐりあててからは、結婚相手との格闘が始まった。
まず、いちばん身近な他人である夫に説明できないようでは、苦悩からの解放は望めないと思ったからだ。
それと同時期に、同じように苦悶している仲間たちを知るようになる。解決はしないが、心は軽くなった。ひとり悶々と悩みに対峙していても、堂々巡りのくり返し。共有する「問題」への共通理解は、思考を柔軟にしてくれる。
二十四歳で結婚し、二十五歳で第一子、二十七歳で第二子、三十歳で第三子を得て、現在五十三歳。数値的には標準的な女の半生である。けれども、どこかが違っていた。
そんな想いを文章にしてみた。
ごく個人的な日々の生活からうかがえる、世間との違和感を表現してみたいとの思いは、日本人の夫との暮らしのなかで深まっていった。
在日一世がつぎつぎと他界し、通名のまま墓におさまっていくなかで、その衝動をこらえることはできなかった。
上記内容は本書刊行時のものです。
