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中絶がわかる本 MY BODY MY CHOICE
原書: My Body My Choice: The Fight for Abortion Rights
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年1月14日
- 書店発売日
- 2021年12月24日
- 登録日
- 2021年9月6日
- 最終更新日
- 2022年9月16日
紹介
シーラ・A・エゴフ児童文学賞受賞!
女性の権利の視点から中絶を考えるティーンエイジャー向けの性教育と人権の本。
もっと安全な中絶を! 私のからだは私が決める!
世界中で毎年何万人もの女性たちが危険な中絶のために命を落としています。
中絶の歴史と今がわかる女性たちの戦い。
カラフルな写真やイラスト、引用文、マンガでわかる安全な中絶について知っておくべきことがたくさんつまっています。
あらゆるジェンダーの10代から読むことができる新しい性教育と人権の本。
読み終わった時にはエンパワーされた気分になること間違いなし!
リプロダクティブ・ライツについて学ぶ教科書として、子どもから大人までの必読書。日本の現状もあらたに加筆してお届けします。
目次
中絶がわかる本 My Body My Choice /もくじ
MY BODY MY CHOICE 日本の読者のためのメモ ロビン・スティーブンソン
推薦のことば/北原みのり
はじめに
中絶とは?
中絶は誰のもの?
第1章 振り返ると:中絶の歴史
人種差別と人口調節
中絶の犯罪化
違法堕胎の時代
変革を求める闘い
第2章 中絶を求める闘い
アメリカにおける合法的な中絶を求める闘い
選択を求める闘い~カナダ
第3章 攻撃される中絶
暴力とハラスメント
アメリカにおける中絶の制限
反中絶のプロパガンダ
選択と教会
リプロダクティブ・ライツとトランプ=ペンス政権
第4章 世界の安全な中絶を求める闘い
中絶薬
全世界に影響するアメリカの政策
アイルランドにおける中絶を選択する権利を求める闘い
ポーランドの女性たちのストライキ
Women on Waves ウィミン・オン・ウェーブス 波に乗る女たち
Women on Web ウィミン・オン・ウェブ ウェブに乗る女たち
舞台裏:社会変革への取り組み
第5章 進むべき道:最前線から届いた物語
選択権 チョイス から性と生殖の正義 リプロダクティブジャスティスへ
中絶のスティグマをなくすためにソーシャルメディアを活用する
草の根の活動
ソーシャルメディアを利用した中絶に対する偏見の解消
本物の専門家:中絶を経験した人の話を聞く
著者のコメント
用語解説
資料
REFERRENCES
PHOTO CREDITS
謝辞
索引
各国の最新事情 塚原久美
解説 #なんでないの 世界と同じようなレベルの安全な女性の医療 福田和子
訳者あとがき 塚原久美
前書きなど
MY BODY MY CHOICE
日本の読者のためのメモ
私の著書“MY BODY MY CHOICE : The Fight for Abortion Right”が日本で翻訳出版されることを知って、たいへんうれしく、光栄に思っております。作家というものは、自分の本が他の国で新たな読者に読んでいただけることに常に胸が高鳴るものですが、日本のみ
なさまにお届けできることには格別の喜びがあります。それと言いますのも、私は幼い頃に家族で名古屋に住んでいたことがあり、それが私にとって幼い頃の最初の記憶だからです。今でも日本には大勢の友人がいますし、いつか再び訪ねていきたいと思っていたので
すが、どうやら私の本のほうが先に日本を訪れることになりそうです。
本書は、2019年にカナダとアメリカで出版されました。この本への反応は興味深いものでした。高評価のレビューをいくつもいただき、ブリティッシュコロンビア州の最高の児童書賞であるシーラ・A・エゴフ児童文学賞を受賞し、読者からはとても重要な本だという声が寄せられたのです。ところが、これまでの私の作家としての経験とは対照的に、この本については、公開読書会が開かれたり、本のテーマについて学生たちと話をしたりする機会にはほとんど恵まれませんでした。それではっきりわかったのは、やはり中絶にまつわるスティグマ 社会的な烙印は根深く、しごく一般的に行われているこの医療行為が、今もまだ物議をかもすテーマであり、タブー視されているということです。人々の態度を変え、意識を高めるには、まだまだやるべきことが山積みなのです。
私がこの本を書き始めたのは、2017年にドナルド・トランプが米国大統領に就任した直後のことです。当時のアメリカでは、中絶の権利が危険にさらされ、安全で合法的な中絶を受けることがどんどん難しくなりつつあるように感じられました。残念ながら性と生殖の権利 リプロダクティブ・ライツに対する脅威は今もエスカレートしています。たい
へん衝撃的だったのは、一貫して男女平等を訴え、中絶の権利を擁護してきたルース・ベイーダー・ギンズバーグ最高裁判事が2020年に死去したことです。最高裁判事の席がひとつ空いたところに、トランプ政権3人目の最高裁判事として、中絶権に反対するエイミー・コニー・バレットが指名されました。その結果、アメリカ最高裁は保守派が圧倒的多数を占めるようになったのです。
その直後、最高裁は妊娠6週目以降の中絶を禁止するテキサス州法の差し止めを却下しました。妊娠6週とは、生理が止まってから2週間後で、ほとんどの人が妊娠に気づかないタイミングです。
しかもこの法律は、アメリカ国内で暮らすあらゆる民間人が、テキサス州内で誰かの中絶を手助けした人を訴えることができるという奇妙な内容も含んでいます。中絶に付き添った友人や、クリニックで女性を降ろしたタクシーの運転手までもが訴えられる可能性が
あるのです。この法律が最高裁で違憲とされなかったことで、他の州も勢いづき、テキサス州の後に続こうとしています。今のアメリカでは、中絶権の行方と、今後、中絶にアクセスできなくなるのではないかという不安がかつてないほど高まっています。
世界中で、中絶の権利とリプロダクティブ・ジャスティス 性と生殖の正義を求める闘いが続いています。一部の国々では、以前に増して厳しい制約を課すような法律が可決されています。それでも敵対的で危険な環境の中で、変革を求めて闘い続けているアクティビストたちもいます。たとえばポーランドでは、中絶の権利を守るグループが爆破予告や死の宣告を受けながら活動しています。一方で、数々の重要な勝利を収めてきた国々もあります。2021年には韓国で中絶が脱犯罪化されたし、アルゼンチンでは妊娠14週目までの中絶が合法化され、メキシコでは最高裁が「中絶は犯罪ではない」との判断を下したことで国中の中絶が合法化されました。
日本国内のアクティビストたちも、中絶を求める人々に対して障壁を築きアクセスを制限している法律に異議を唱え、中絶を受ける権利のために立ち上がっています。優先的な課題の一つは、既婚女性が中絶を受けるために配偶者の同意を得ることを定めている法律
の撤廃を求める活動です。世界保健機関(WHO)は、中絶に第三者の同意を義務づける法律の廃止を求めていますが、その種の法律は日本以外にもまだ10カ国─インドネシア、クウェート、モロッコ、トルコ、台湾、シリア、アラブ首長国連邦、赤道ギニア共和国、サウジアラビア、イエメン─に存在しています。
日本で中絶の権利を求めている人々にとって、もう一つ重要な争点は、日本ではまだ承認されていない中絶薬を獲得することです。中絶手術は非常に安全で一般的かつ迅速な処置だとはいえ、手術ではなく薬を使って自宅で妊娠を終わらせたいと思う人たちもいます。病院やクリニックに行くのが難しい人にとって、中絶薬はより手の届きやすい選択肢になります。妊娠を終わらせることを願っている人々には、薬による中絶を含み、あらゆる選択肢が与えられるべきです。
読者のみなさまがリプロダクティブ・ライツや中絶について抱いている疑問に、この本が答えられていることを願っています。本書で示した情報や体験談によって、今、中絶しようかと考えている人や、中絶のことで悩んでいる友人を支えようとしている人々の孤独感が和らぎ、より自信をもって自分で選択できるようになることを願っています。そして、リプロダクティブ・ライツと正義のための闘いに参加したいと考えているみなさまにとって、歴史上の人物や世界中のアクティビストたちの物語が、まさに私にとってそうだったように、勇気を与えてくれることを願っています。
2021年12月
ロビン・スティーブンソン
版元から一言
妊娠したかもしれない不安や恐怖に、眠れない夜を過ごす女性は少なくありません。待ち望んだ妊娠もあれば、苦悩や絶望に追い込まれる妊娠もあります。妊娠したことを誰にも告げられずに、今も一人で苦しんでいる人もいるでしょう。罪悪感や恐怖のために中絶
を選択できずに悶々と時を過ごしている人もいるでしょう。
妊娠を継続するか中絶するかの選択肢は、重く女性たちにのしかかります。大げさでなく、人類の歴史は妊娠、中絶、出産を巡る女性たちの不安や、葛藤の道だったともいえます。それなのに、この世界は、妊娠する側の視点に立った妊娠や中絶を巡る物語を、積極
的に語ってきたとはいえません。
この本には、人類の半分側が体験した大切な物語が詰まっています。妊娠する身体の歴史です。安全な中絶を勝ち得るために、どれだけの命が犠牲になり、どれだけの声が必要だったことでしょう。国によって、中絶に関する法律も、受けられる中絶の方法も違う
なかで、女性たちの連帯が歴史を変えてきました。それなのに残念ながら今も、安全ではない中絶によって毎年数万人もの女性が命を落としています。今も、安全な中絶を求める闘いは渦中にあります。日本も例外ではありません。
残念ながら今の日本は、性教育が十分に行われず、避妊の知識も、そして性と生殖に関する知識も教育を通して得ることができません。安価な緊急避妊ピルを薬局で処方箋なしに手に入れることもできず、多くの国が導入している安全な中絶薬もようやく治験がはじまったところです。若い女性たちが孤独出産のうえ逮捕される事件が後を絶たない背景に、性教育の脆弱さ、ジェンダー不平等などの深刻な問題がみえてきます。
中絶のことをもっと知りたい。世界の女性たちとつながりたい。中絶の話をしたい。そういう思いで、人権の視点に立った中絶の本を日本語で出版できることを嬉しく思います。
訳者の塚原久美さんは、日本で一般的に行われてきた「搔爬」という中絶方法が、世界では危険とされていることを20年前から問題提起されてきました。国際セーフアボーションデーに連携する運動など、安全な中絶の権利を求めて献身的に活動されてこられまし
た。塚原さんの情熱が、この出版に結びつきました。また、女性の選択肢があまりにも少ない現状を訴える「#なんでないのプロジェクト」を立ち上げた福田和子さんに、本書の解説を依頼しました。女性たちの闘いの歴史、そして今の世界、日本の今、がぎっしりと
詰まった一冊になりました。
私たちの身体の大切な話。語るための言葉が、私たちには必要です。本書は力強い女友達のような一冊になることでしょう。
MY BODY MY CHOICE。私の身体は私が決める。大きな声で、そう、私たちは言い切っていいのです。
2021年12月
北原みのり
上記内容は本書刊行時のものです。