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江戸初期の香文化 堀口 悟(著) - 文学通信
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江戸初期の香文化 (エドショキノコウブンカ) 香がつなぐ文化ネットワーク (コウガツナグブンカネットワーク)

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発行:文学通信
A5判
340ページ
上製
価格 4,500円+税
ISBN
978-4-909658-23-4   COPY
ISBN 13
9784909658234   COPY
ISBN 10h
4-909658-23-8   COPY
ISBN 10
4909658238   COPY
出版者記号
909658   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年2月28日
書店発売日
登録日
2020年2月12日
最終更新日
2020年3月13日
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紹介

公家と武家。それぞれはどう影響し合い、新しい文化を創りあげていったのか。香文化から江戸初期の文化伝播の様相を捉え直した書。
武家側から貴族に流入した香文化に関する情報は、香木の献上がほとんどであったが、本書の著者たちは、水戸市立博物館に伝わる『香道明鑑』によって、東国の武家、徳川頼房から京都の後水尾天皇に香道の〝手引き書〟が贈られたことをつきとめる。香木や他の香材料ばかりでなく、高度な香文化そのものが武家から公家へと贈られていたのだ。
従来「香文化は、宮廷貴族から武家や町人に伝わった」とする、一方向だけの伝来が考えられていたが、実はそうではないのではないか――。家康と香から解説をはじめ、貴族と武家の香文化を詳説、水戸藩初代頼房由来の貴重な香書、『聞香伝書』『香道明鑑』『聞香目録』『十炷香之記』を本文・訳・語釈で紹介。江戸初期の香がつないだ文化ネットワークの様相を浮かび上がらせる。
京と地方の文献比較に加えて、皇族や公家の遊び文化の中に「香会」を位置づけ、婚礼調度を代表とする香道具という新視点も取り入れることによって未開拓といってもよい江戸初期の香文化事情を解明。謎解きのように読み進めるうちに、香文化への興味もわいてくる、エキサイティングな書。

【本書は、公家文化と武家文化とが融合する江戸時代初期に注目し、宮廷を中心とする皇族・貴族の香文化と江戸や水戸を中心とする関東武家の香文化とが、香木や香書を媒介としてどのように関係し、影響し合い、新しい香文化を創り上げてゆくのか、その様を捉えようと試みたものである。
 香文化を考える上で、京都中心の視点の重要性は疑うべくもないが、地方武士からの文化発信に注目するとき、従来には気づかれなかった、新しい世界が見えてくるのではあるまいか。江戸時代の文化を巨視的に見るとき、江戸を中心とする関東文化が、京都を中心とする関西文化に流入してゆくベクトルをも持ってくる時代であると捉えることができよう。香文化の世界においては、その早い例が、すでに江戸時代の初期に見られるようだ。…】……「はじめに」より

目次

はじめに

第一章 江戸初期の香文化事情

一 徳川家康と香
 1 家康の御朱印船貿易と香木収集
 2 家康の香木の使用法
 3 家康における香木の質へのこだわり
  (1)極品の伽羅を (2)貴族の香文化
二 後水尾院文化圏と香文化―男性貴族と香
三 後水尾院文化圏と香文化―女性貴族と香
 1 皇女品宮と一木炷文化
 2 東福門院と米川常白
四 東国武家の香文化
 1 頼房・光圀親子二代の香書献上
 2 武家・町人の香文化

第二章 水戸家の香書 概説

一 総説
二 『聞香伝書』(『水戸市博本 香之記序』)
 1 書誌
 2 諸本と著者
 (1) 諸本
 (2)序文の内容と諸本
 (3)『香之記序』の真の著者は誰か
 3 著者とその師
 (1)師の条件
 (2)江南野水翁とは誰か
 4 成立
三 『十炷香之記』(『水戸市博本 古十組香』)
 1 書誌
 2 諸本と水戸市博本の位置
 3 著者
 4 成立
四 『聞香目録』(『水戸市博本 八組香』)
 1 書誌
 2 諸本と水戸市博本の位置
 3 著者と成立
五 『香道明鑑』
 1 書誌
 2 諸本と水戸市博本の位置
 3 成立と著者
  (1)『香道明鑑』の跋文(「香道秘伝三箇之伝法」)から
  (2)飯尾善十郎と和田親雄の師
  (3)『香道明鑑』の命名
  (4)完成時期
  (5)『香道明鑑』と《頼房香書》
  (6)内容的な特色

第三章 水戸家の香書 本文・訳・語釈

 [凡例]一『水戸市博本 香之記序』
一 『水戸市博本 香之記序』
 [凡例]二『水戸市博本 古十組香』 三『水戸博本 八組香』 四『香道明鑑』
二 『水戸市博本 古十組香』
三 『水戸市博本 八組香』
四 『香道明鑑』

第四章 江戸初期香文化のネットワーク

一 遊び文化と婚礼調度にみる香[村田真知子]

(1)貝覆いと香―堂上の女性日記から

 はじめに
 1 貝覆いの調度
 2 合せ貝の装飾
  (1)歌貝
  (2)絵貝
 3 貝覆いの座
 おわりに

(2)大名婚礼調度の香道具
 はじめに
 1 姫方の香道具
  (1)東福門院(徳川和子 一六〇七~一六七八年)
  (2)大姫(清泰院 一六二七~一六五六年)
  (3)千代姫(霊仙院 一六三七~一六九九年)
  (4)輝姫(靖巌院 一六三六~一七一七年)
  (5)泰姫(法光院 一六三八~一六五八年)
 2 千代姫の香箱、香札
  (1)香札、香箱の形状
  (2)十種香の二十の札箱
  (3)組香五組と教育的側面
 3 婚礼調度の定型化と薫物
 おわりに

二 江戸初期の香文化の実相[堀口悟]

(1)男性貴族の香文化―『泰重卿記』を中心に

 はじめに
 1 後水尾院と東福門院の香
 2 北小路功光氏『香道への招待』の説
 3 『泰重卿記』の記述から
  (1)本記録からの知見
  (2)史料分析
 4 『時慶卿記』と『孝亮宿禰日次記』
  (1)時慶卿記
  (2)孝亮宿禰日次記
 5 『言緒卿記』と『本源自性院記』
  (1)『言緒卿記』
  (2)『本源自性院記』
 6 地方武士の記録『梅津政景日記』より
  (1)記録概要
  (2)本記録からの知見
  (3)本日記の特色
おわりに
(付)男性貴族の香文化 香事表①

(2)女性宮廷貴族の香文化―品宮の香事

 はじめに
 1 後水尾院・東福門院の香事
  (1)香会の頻度
  (2)香会の特色
   ①香遊びと香道 ②集中型 ③実践 ④昼も夜も
 2 品宮・後水尾院の香文化への関わり
  (1)品宮の香元
  (2)後水尾院が贈った香道具
 3 源平香から名所香へ
  (1)源平香
  (2)名所香
  (3)従来の説
  (4)交替の時期
   ①いつ ②誰が
  (5)その後の状況
 4 後水尾院文化圏の品宮を中心とするグループと女院を中心とするグループ
  (1)女院の香会参加記事
  (2)女院と品宮との距離
 5 薫物製作と匂袋製作
 おわりに
(付)女性宮廷貴族の香文化 香事表②

三 水戸の香人、頼房と光圀[鈴木健夫]

(1)香道中興の祖頼房とその後継者

 1 徳川頼房と後水尾院―《頼房香書》の献上時期
 2 岡嶋亦幸と三宅亡羊―黒田藩(福岡藩)と水戸藩
 3 飯尾善十郎とその後継者―幕末まで続く水戸藩の香統

(2)水戸光圀の香書献上と香事

 1 後西天皇への『五月雨之記』献上
 2 水戸光圀の香事

おわりに
英文要旨
人名索引

著者プロフィール

堀口 悟  (ホリグ チサトル)  (

水戸生まれ水戸育ち。現在、茨城キリスト教大学文学部教授。
主な著作に、『香道秘伝書集註の世界』笠間書院、平成21年(2009)。「江戸時代初期の香文化―『泰重卿記』を中心として―」茨城キリスト教大学紀要50号、平成28年(2016)。「後水尾院期の香文化―『无上法院殿御日記』を視座として―」茨城キリスト教大学学術研究センター、研究シリーズVol.4,No.1、令和元年(2019)。

鈴木 健夫  (スズキ タケオ)  (

土浦市生まれ、水戸市在住。水府金石文研究所代表。
主な著作に、『碑文・墓碑銘集(一)~(六)』茨城県版・東日本版、水府金石文研究所、平成20年~平成27年(2008~2015)。『日下部鳴鶴書丹拓本集』、水府金石文研究所、令和元年(2019)。『筑波山麓の文人たち』、川又書店、平成25年(2012)。「『棠軒近藤先生之墓碣』解題並びに訳注」共著、『斯文』120号 平成24年(2011)。「『川合先生烽技之碑』解題並びに訳注」共著、『斯文』第133号、平成31年(2018)。

村田 真知子  (ムラタ マチコ)  (

茨城県水戸市出身。香道研究会会員。
東京女子大学文理学部心理学科卒業。東京国立博物館ほか勤務を経て、東京女子大学文学研究科日本文学専攻修士課程修了。修士論文「古典文学と香―平安朝のかをり―」。文学修士。博物館学芸員。
現在、合同会社KOYURUKI CEO、文化ユニット長。

上記内容は本書刊行時のものです。