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帰る旅-空想の森へ
地域アートの試みの中で
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年6月
- 書店発売日
- 2018年6月9日
- 登録日
- 2018年5月21日
- 最終更新日
- 2018年6月5日
紹介
日田・湯布院そして宮崎──「地域とアート」の連携を模索しつづけたその50年は,時代性と普遍性を併せ持ちつつそのまま一つの美術史である。行動する美術家・高見乾司が,“帰る旅”の地・湯布院と美術への想いを綴る。
「森からやって来て,さらなる森の奥深くへ──」(画家・菊畑茂久馬)
目次
序 章 花野を行く 2017
第一章 幻の村 1948─
第二章 霧の町 1970─
第三章 空想の森へ 1980─
第四章 町づくりと美術館─由布院空想の森美術館の十五年
第五章 森へ行く道
一 湯布院から宮崎へ / 二 森へ行く道
三 鵺の来る庭 / 四 「功」と「拙」の間に
五 行き逢い神 / 六 京橋伝説そして人形町散策
第六章 精霊たちの森
一 九州脊梁山地の村で / 二 尾八重アートプロジェクト
三 高千穂「秋元エコミュージアム」の挑戦
終章 帰る旅─空想の森へ
前書きなど
私は,終生のテーマとして「ムラはミュージアムである」という構想を追い続けるだろう。それは,幼い頃に故郷の山の村を後にし,湯布院という山間の小さな町で「地域づくり」という運動を体験して,「町はミュージアムである」という主張のもとに「アートフェスティバルゆふいん」などの運動を企画・実行し,湯布院を離れた後は九州脊梁山地の山々に抱かれた村を訪ねて「神楽」と「仮面」の研究を続け,さらに,「地域とアート」の接点を模索するという,アーティストとしての表現活動の継続である。
その個人的な興味と衝動と活動の集積により,地域再生への道が開けるという手応えは得ている。各地での地域美術展の隆盛,古民家アート・古民家レストランなどの実施例,次世代の若者たちのこのジャンルへの進出などが,方向性の正しいことを確信させ,私にさらなる一歩を踏み出させるのである。 ─「第六章 精霊たちの森」より
* *
私の帰るべき地は、三つに増えた。父祖の地・日田、癒しと再生の土地・宮崎、そして、激動の日々を過ごした湯布院「空想の森」へ。当時の湯布院と、現在の湯布院の町とでは、大きく事情が違っていることは、私も承知しているが、かつて「東洋の理想郷」が実現できると信じて活動した仲間たちが、頑強に根を張り、生き続けていることも確かだ。この一点を手がかりに、私は湯布院へ「帰る」のである。
今となっては、私の旅は「帰る旅」なのか「どこかへと向かう旅」なのかさえ分からなくなってきているが、旅の道筋に九州脊梁山地の山々に抱かれた「神楽」を伝える村があることが一つの指標になる。(略)
私の着地点がどこになるか、どのようになるかは、まだ分からない。 ─終章より
上記内容は本書刊行時のものです。